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 最初にあの発言を聞いた時は、「冤罪」とは他に真犯人がいる場合をいうのであって、あの事件はそもそも真犯人も何も存在しない空中楼閣の捏造(でっち上げ)だったとの見識を示されたのかと思った。どうも、そうではなかったようだ。
 特定の事件を「冤罪」と呼ぶかどうかは「冤罪」の定義しだいだから、「他に真犯人が現れた場合に限る」とか「いったんは誤って有罪の確定判決を受けた場合に限る」などと極端に狭義に定義すれば、これに該当しないと言い張ることはいくらでも可能である。ただ、あの事件は、普通に使われる語義からすれば、紛れも無い「冤罪」だったというべきだろう。言葉遊びは慎み、猛省しなければならない。
 それとともに、この議論を聞いていて不安に思ったのは、逆に「冤罪」をあまりにも広義に定義し過ぎてしまう傾向がないだろうか、ということだ。
 もし「無罪」イコール「冤罪」と呼んでしまうと、かえって「無罪」のハードルを不当に釣り上げてしまうことにもなりかねない。あくまで、有罪認定をするのに合理的な疑いが残れば「無罪」と判断しなければならないのである。その場面で「冤罪」(無実の罪)かどうかを議論しだしたら、ミスリードになりかねない。
(チェックメイト)

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