日本に輸入された中国製ギョウザから、高濃度の有機リン酸系殺虫剤「メタミドホス」や「ジクロルボス」が検出された。
購入者の被害の甚大さはもとより、国内のギョウザの製造、販売業者やその周辺産業に関わっている人たちまで甚大な被害を受けている。
食の安全システムの不整備、日本の食糧自給率の低さの問題が改めて問われている。
日本では殆ど使われていない「メタミドホス」という薬物名が、わたし達になじみのある言葉になってしまった。
メタミドホスやジクロルボス(中国では「敵敵畏」と呼ばれている。)は、中国において、報復などの動機で犯罪の凶器として使用されることが多発しているものであるという。
真相解明のための調査が日中双方で進められているが、難渋しているようだ。中国側では、何者かが故意に殺虫剤を混入した疑いが濃いと分析している。今後の真相究明が待たれるが、仮に中国側の分析のように故意犯によるものであるとすれば、愉快犯等の異常犯罪や政治的動機、商売上の動機にからんだ犯行か、あるいは不満や「怨念」等によることが想定される。
この「怨念」というものは曲者である。
中近東のある国で起こった殺人事件が2代か3代前に起こった私的紛争の報復を動機とするものであったことを聞いたことがある。
紛争に至るには種々の原因があるが、お互いの無理解や誤解が導因になっていることが多い。情報が自由に交換され、相互理解が深まっているところでは、紛争は起こりにくい。 しかし、不幸にして紛争が生じ、これを当事者間で自主的に解決できない以上は、第三者が間に入って公正な手続きによる公平な解決を図る途をとらなければ、裸のままに怨念が発現する結果となりがちで、暴力的な形となって殺人にまで至るような悲劇をも生みかねない。
訴訟手続は、紛争当事者の怨念をチャネル化し、正当なルールの下で理性的に争わせる役割を果たす。しかし、勝つか負けるかという決着では、かえって怨念を募らせる結果になってしまう場合が少なくない。
紛争の大部分は和解による解決が望ましいように思える。
紛争の根幹を把握し、双方が求めるものを相互に得ることができるよう知恵を絞って調整し、後顧の憂いのないような納得のいく紛争解決を図って、怨念の根を断つ途を追求することが法律家の役割であることを痛感している。
(あすなろ)
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