日本裁判官ネットワークブログ
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  私(元ネット所属裁判官)の弁護士事務所には,今日も水仙の大きな写真が飾られている。私は水仙が好きである。中でも日本水仙が好きで,我が家の庭をこの水仙だらけにしたいという衝動があるくらいである。水仙はその姿が清楚で美しく香りもよい。

 ギリシャ神話では,ナルシスという美少年が泉に映った自分の姿に見とれて転落して水死し,水仙の花になったとされており,ナルシストの語源になっているということである。

 あれは今から10数年前のことである。妻が勤務していた裁判所の所長が転勤されることになった。夫婦で親しくしていただいていたので,そのお礼の意味もあって,夫婦で所長の宿舎にご挨拶に伺うことになった。そこでとてもおいしい地元の生の日本ソバを差し入れとして持参した。そのソバはもっぱら関西方面に出荷されており,地元の店頭では販売されておらず,製造元へ直接買いに行く必要があった。我が家では地元の職員から得た情報で,そのソバをよく食べていたが,所長はおそらくお食べになったことはないだろうと思われた。所長は単身赴任をされていた。

 丁度転勤の荷物の片づけに奥さんもお出でになっており,ソバのことも含めてとても喜んで下さった。おいしい地元のお菓子をご馳走になりながら,しばしの楽しい歓談の後,おいとますることになったとき,奥さんが,「水仙が沢山咲いているので差し上げましょう。」とおっしゃった。所長宿舎は元々藩の家老の屋敷跡でとても庭が広い。奥さんは見事な日本水仙を一抱えも切って下さって,辺り一面に水仙の甘い香りが漂った。
 
 私はふと思いついて,「こんな俳句をご存知ですか。」と言って,「水仙の 香(か)に君がいる 暖かさ」という句を口にした。奥さんは,「まあ!」と言われて嬉しそうにニコニコされた。所長も笑いながら,しかし多少あわて気味に,「君い,もうそれはどこかで使ってきたんじゃあないのかね。」とおっしゃった。妻も側で笑っていた。ただそれだけの他愛ない話である。

 この句は,裁判官を主人公とする漫画「家栽の人」がテレビ化されて,片岡鶴太郎が主演したドラマの「水仙」というテーマのときに放映された俳句である。確か原作の漫画には載っていなかったから,ドラマの製作過程で取り入れられたものであろうが,作者は不詳である。それを私が書き留めていたものである。(ムサシ)


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