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マネジメント第6回

2011年10月16日 | Weblog
リーダーとマネージャー

 この国のリーダー不在を嘆く声はよく聞かれる。毎年総理大臣が交替する事態が始まって6年目で6人の総理ともなれば、民主主義が定着している証拠だなどと肯定的に捉える見方があるにしても、外交面のマイナスなどは大きく、国政の継続性の面からも異常な状態というべきであろう。もっとも取り替えることが良くないという理由だけで、力量のないことが明確な御仁をトップリーダーに据え続けることはさらに問題である。

 「リーダー」と「マネージャー」はよく並び称されるけれど、総理大臣をこの国のリーダーとは言うがこの国のマネージャーとは聞かない。企業のトップリーダーは通常社長(またはCEO)で、その仕事はトップマネジメントであるが、企業の中でマネージャー(Mgr.)といえば通常課長クラス。グループリーダー(GL)も同等の職位であり、すなわちいずれも中間管理職だ。

 リーダーは先頭に立ってメンバーを引っ張っていくイメージに対して、マネージャーはメンバーを側面から支援するイメージがある。組織の成果に責任を持つという意味では役割は変わらない。リーダーという大括りの中に狭義のリーダー(GL等)があり、Mgr.があるように思う。ただ、企業の制度によっても違いはあろうが、GLとMgr.ではMgr.が上位のイメージがある。いずれもリーダーシップとマネジメントが必須であることに変わりはない。

 そのことから、狭義のリーダー(GL等)とMgr.の違いを企業論的に考察すれば、企業の事業部制とカンパニー制の違いのようなものかもしれない。事業部は利益に責任を持つが資産の管理までの権限がないのに対して、カンパニーは資産についても責任を持つ。すなわち事業部はP/L(損益計算書)管理のみであるが、カンパニーはP/L、B/S(貸借対照表)共に管理する。GL等は事業部制的であり、Mgr.はカンパニー制的であると考えられる。GL等は所定の目標達成のために与えられた資源を最大限活用して短期的な成果を求められるのに対して、Mgr.は与えられる資源の内容から検討し長期的視点で成果を求めてゆくイメージがある。

 ドラッカーの『マネジメント』*11)には、マネージャー*12)の資質について触れている。それはそのままリーダーの資質でもあろう。『・・・優れたマネジャーは何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。このような資質を欠く者は、いかに愛想が良く、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。・・・マネジャーに必要な学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。』

 リーダー不在はこの国に限らず世界的傾向のように言われている。特に先進国と呼ばれる国は、その少子化傾向とも合致する。経済的に豊かになり、寿命が延びると子孫を残そうとする本能が萎える。そして情報化によって、個人の力量における差別化が昔ほどに際立たせにくくなった。個々の生存のために子孫への依存を低下させたごとく、自立した個々人は強いリーダーを必要としなくなった。時代がリーダーの成長を促さなくなった。ドラッカーの言う真摯さを豊富に持った人が指導者層に少なくなった。





*11) 【エッセンシャル版】-基本と原則-上田惇生編訳、ダイヤモンド社2001年12月初版
*12)この場合の「マネージャー」は経営者から管理者までを含む。
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