企業とは何か
企業とは何か。「企業は営利組織ではない」。「利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的でなく条件である」。とドラッカーは述べている。さらに、「・・・しかし、企業は、高い利益をあげて、初めて社会貢献を果たすことができる」。とも言う。そして、『企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客を創造することですることである』という、有名な言葉に行き着く。
顧客が付かなければ、売上は上がらず従って利益どころか損失が出る。起業を考える人は、自分がやりたい事業を支持してくれる顧客*5)を見積もって、資金を誰かに委ねるよりも高い収益性またはより多くの満足を見込めるからこそ事業を興すのだけれど、顧客が付くということは、その事業が社会に受け入れられ、従って社会貢献となることを意味する。
企業は「経営理念」を社是や社訓として成文化して表明しているが、経営理念とは、「この組織は何のために存在するのか」という基本的な考え方を述べたもので、当該企業の行動指針であり、目的や規範、理想、価値観などを意味する*7)。経営理念には、いかに社会に貢献するかが盛り込まれるけれど、そこに通常「利益を上げる」という言葉は入らない。ここにも企業が営利組織でないことが示されている。
目的を達成するためには具体的な方策がなければならない。顧客を創造するという目的を果たすための方策(機能)として、ドラッカーは「マーケティング」と「イノベーション」をあげる。
「企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら財やサービスに対する支払いの意志を持ち、経済資源を富に、モノを財貨に変えるのは顧客であるからである。そして顧客が価値を認め購入するものは財やサービスそのものではなく、財やサービスが提供する『効用』である」。顧客の求める効用を知ることが顧客の創造につながる。「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである」。そして継続的なイノベーションによって、顧客の新しい満足を生み出し続ける必要がある。
小泉・竹中改革と称する市場原理主義によって、地方の中心市街地の商店街の崩壊が加速されたというような論評が未だにある。先の参議院予算委員会でも民主党議員が質問の中で、大店法に関わる規制緩和*6)などをその原因のひとつに挙げて、このような規制緩和を改善することこそ民主党政権の意義であるように言っていた。
確かに大手流通業の進出は地元商店街には脅威であり、その存亡の危機であることは確かであり、そのやり方によっては規制も必要である。しかし、大手スーパーやショッピングセンターの出現は、小泉改革以降の問題ではないし、その品揃えの充実、大量仕入れによる店頭価格の低下やワンストップショッピングなど利便性の向上は多くの庶民の望むところであり、時代の要請でもある。これを政治の力で阻止せよということは、イノベーションを阻害する権力の横暴にあたる懸念がある。弱者の味方を振りかざした単なるエゴに過ぎない。
企業規模に関わらず、顧客のためにできることはある筈で、その要請に応えられない企業は脱落するしかない。
*5)但し、ベンチャービジネスが成功するのは、考えもしなかった市場で、考えもしなかった客が考えもしなかった目的のために、その製品やサービスを買ってくれることによる。とまで言われる。
*6)大店法が改正されて大店立地法になったのは、1998年(平成10年)で小泉改革には関係しない。2006年のまちづくり三法の改正による中心市街地を活性化するため郊外型大型店を規制して、市街地に誘導する部分を指すものと思われる。
*7)TAC中小企業診断士受験講座テキスト「企業経営理論」2006年版
本稿は、ドラッカー著、マネジメント【エッセンシャル版】-基本と原則-上田惇生編訳、ダイヤモンド社2001年12月初版の他、TAC中小企業診断士受験講座テキスト「企業経営理論」2006年版から一部引用して編集しています。
企業とは何か。「企業は営利組織ではない」。「利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的でなく条件である」。とドラッカーは述べている。さらに、「・・・しかし、企業は、高い利益をあげて、初めて社会貢献を果たすことができる」。とも言う。そして、『企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客を創造することですることである』という、有名な言葉に行き着く。
顧客が付かなければ、売上は上がらず従って利益どころか損失が出る。起業を考える人は、自分がやりたい事業を支持してくれる顧客*5)を見積もって、資金を誰かに委ねるよりも高い収益性またはより多くの満足を見込めるからこそ事業を興すのだけれど、顧客が付くということは、その事業が社会に受け入れられ、従って社会貢献となることを意味する。
企業は「経営理念」を社是や社訓として成文化して表明しているが、経営理念とは、「この組織は何のために存在するのか」という基本的な考え方を述べたもので、当該企業の行動指針であり、目的や規範、理想、価値観などを意味する*7)。経営理念には、いかに社会に貢献するかが盛り込まれるけれど、そこに通常「利益を上げる」という言葉は入らない。ここにも企業が営利組織でないことが示されている。
目的を達成するためには具体的な方策がなければならない。顧客を創造するという目的を果たすための方策(機能)として、ドラッカーは「マーケティング」と「イノベーション」をあげる。
「企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら財やサービスに対する支払いの意志を持ち、経済資源を富に、モノを財貨に変えるのは顧客であるからである。そして顧客が価値を認め購入するものは財やサービスそのものではなく、財やサービスが提供する『効用』である」。顧客の求める効用を知ることが顧客の創造につながる。「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである」。そして継続的なイノベーションによって、顧客の新しい満足を生み出し続ける必要がある。
小泉・竹中改革と称する市場原理主義によって、地方の中心市街地の商店街の崩壊が加速されたというような論評が未だにある。先の参議院予算委員会でも民主党議員が質問の中で、大店法に関わる規制緩和*6)などをその原因のひとつに挙げて、このような規制緩和を改善することこそ民主党政権の意義であるように言っていた。
確かに大手流通業の進出は地元商店街には脅威であり、その存亡の危機であることは確かであり、そのやり方によっては規制も必要である。しかし、大手スーパーやショッピングセンターの出現は、小泉改革以降の問題ではないし、その品揃えの充実、大量仕入れによる店頭価格の低下やワンストップショッピングなど利便性の向上は多くの庶民の望むところであり、時代の要請でもある。これを政治の力で阻止せよということは、イノベーションを阻害する権力の横暴にあたる懸念がある。弱者の味方を振りかざした単なるエゴに過ぎない。
企業規模に関わらず、顧客のためにできることはある筈で、その要請に応えられない企業は脱落するしかない。
*5)但し、ベンチャービジネスが成功するのは、考えもしなかった市場で、考えもしなかった客が考えもしなかった目的のために、その製品やサービスを買ってくれることによる。とまで言われる。
*6)大店法が改正されて大店立地法になったのは、1998年(平成10年)で小泉改革には関係しない。2006年のまちづくり三法の改正による中心市街地を活性化するため郊外型大型店を規制して、市街地に誘導する部分を指すものと思われる。
*7)TAC中小企業診断士受験講座テキスト「企業経営理論」2006年版
本稿は、ドラッカー著、マネジメント【エッセンシャル版】-基本と原則-上田惇生編訳、ダイヤモンド社2001年12月初版の他、TAC中小企業診断士受験講座テキスト「企業経営理論」2006年版から一部引用して編集しています。