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現場力について考える第1回

2015年03月01日 | ブログ
現場力と経営

 わが国の企業は現場力に優れるが、経営力が問題であり、世界の企業に比べて所謂「現場一流、経営三流」であると言われてきた。最近はその現場力にも陰りが見られるようなことも聞く。

 もっとも「現場一流、経営三流」は、わが国の「経済一流、政治三流」を捩ったようなところがあって、実は経済と政治が切り離せないように、現場と経営も不可分であり、片方が一流で、他方が三流ということは無いと云うような意見も最近目にした。実はその通りと思う。

 政治に内政と外交があるように、企業経営にも、経営者の人づくりを頂点とする内部管理能力と、時代を読みながら他社との競争を勝ち抜いてゆく、戦略的能力が求められる。

 わが国の80年代くらいまでは、国内人口は増え、モノづくりに象徴されるわが国の伝統的な職人技や改善活動など、すなわち「現場力」で欧米を凌駕できたことで、経営者に現代ほどに戦略的能力は求められなかった。しかし、1990年代から世界の経済環境は大きく様変わりした。すなわち、85年のプラザ合意からの急激な円高、情報技術の急速な発展普及、モジュラー型生産による新興国企業の台頭。日本的品質管理を真剣に学んだ欧米の反攻にバブルの後遺症。その変化に多くの経営者、政治家もうまく対応できなかった。それが失われた10年、20年と言われる所以であろう。

 わが国の政治が三流と言われるのは敗戦国ゆえの外交の弱さによるもので、少なくとも戦後の経済面での政府の方針は概ね評価されてよく、その面では政治も一流であったから奇跡の高度成長を成せた。経営者も「品質経営」の実践によって内部人材を育て、現場を育てたことは大いに評価されるべきで、その面では一流であった。わが国の政治に外交面で弱さがあるように、わが国の経営者に時代の激変に対応する戦略的能力が不足したことで、三流というイメージが付いたものであろう。

 ただ、時代は変化しても「現場力」の重要さは変わることはない。外国人経営者の招致によっての成功事例として、日産のカルロス・ゴーン氏はあらゆる関連本に登場するが、日産に優れた現場力が残っていたからこそゴーン改革が可能であったとは、誰もが認める所である。

 安易な合理化による人員整理やモノづくりからの逃避で、現場力をズタズタにして後に、優れた経営者を求めても復活は容易ではなかろう。現場力と経営はまさに車の両輪である。内部管理だけをとっても技術と財務、人事と販売など、経営に求められるスキルは多岐に亘る。しかし、一人で全てに精通する必要はない。本田宗一郎氏に藤沢武夫氏、井深大氏に盛田昭夫氏、トヨタ自動車に大野耐一氏があったように、優れたリーダーにはまた優れた協働者が付くものである。わが国の一流の経営者から一流の現場力が生まれた。
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