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続、品質管理再考第3回

2015年11月07日 | ブログ
不祥事の裏側

 昨年タカタ製のエアバックの不具合が指摘され、ホンダ車など大量のリコールに繋がる甚大な品質トラブルが起こった。現在タカタへの発注を見合わせる企業が増加しており、経営が危機的な状況に陥る懸念があるそうだ。海外でもドイツの名門フォルクスワーゲン(VW)車の排ガス検査偽装ソフトは、VWだけでなく、ドイツの信用をも失墜させた。

 さらに、東洋ゴム工業の免震ゴムデータ偽装や最近の旭化成建材のくい打ち施工データの流用・改ざんと似たような事件が相次いでいる。

 2005年に発覚し大問題となった一級建築士の耐震構造計算偽造(姉歯事件)の際にも、事件の土壌となった業界や行政の体質が問題視されていたと思うけれど、結局何も変わらないまま似たようなことが繰り返されていることになる。

 品質を脅かす要因には、コストと納期と技術力の問題がある。購入側は当然により安価を求め、規格の遵守と納期を守ることを要求する。それは自然なことで、約束事項の遵守は供給側の責任である。

 東洋ゴム工業とVW社の偽装は同類で、技術的に現状では規格を満足させることが出来なかったのであろう。そのことを分かっておりながら製品を市場に出せばどうなるか。どこかで不具合が発覚し、当該企業は存亡の危機に立たされる。経営陣が市場を甘く見ていたのか。現場担当者が経営陣を欺き、自分達の無力を隠ぺいするために突っ走ったのか。第三者には判らない。

 検査の現場で仕事をしたことがある人間なら見て来たことだと思うけれど、抜き取り検査等では不合格にすべきところ、再検査を繰り返し良い検査結果を採用して出荷してしまうことはなかったか。逆に厳しい社内規格を遵守して、不合格品の山を築き、新規事業を赤字経営で行き止まらせたことを。いずれも見方によっては言い分があろうが、狭義の品質管理の面からは後者は正しく、前者は問題である。

 しかし、品質マネジメント(広義の品質管理)の観点からは、いずれも問題である。前者は採算性を重視し、本来の品質第一の基本を忘れている。後者は、正義は我にありとする、経済性を考慮しない合否判定部署なり、担当者の独善がある。どこで社内基準が決まったのか。本来の製品であれば、納入規格を5σに取り、出荷規格を4σ、製造基準を3σで管理しておれば、市場に不適合品を提供する確率は非常に小さくなる。しかし、開発製品は未だ十分な工程能力を有しておらず、まず客先との納入規格の見直し交渉が必要であり、徹底した工程管理・改善による工程能力の向上への取り組みこそが必要である。

 企業活動には、企業活動に限らないけれど、さまざまな問題に取り囲まれている。これが大きな組織になればなるほど、担当部署ごとに対処することで、自部署の不都合な真実が他部署に漏れにくくなり、問題を拡大させるようだ。TQMとは総合的品質管理のことだとは大抵の人は知っているけれど、その意味合いを本当に理解しているかといえば心もとない。そこに各種不祥事の見えにくい裏側が覗く。総合的品質管理はセクショナリズムを排するところから始まる。



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