菅と菅(スガとカン)
新聞広告の週刊誌の見出しは、時にみごとに世相を切り取る。「菅(スガ)さん、あなたにはほとほとウンザリです」(週刊現代)。10年前にも同じような状況があった。東日本大震災への対応の稚拙さや消費税増税を持ち出すなどで国民からだけでなく、民主党内からも退陣を求める声が満ちていたが、当時の菅(カン)首相もなかなか辞めようとはしなかった。
コロナ対応と五輪強行で支持率は30%を切った菅政権。それでも秋の総裁選への出馬を問われた菅首相は、「出馬は当然です」のように答えたそうだ。何といっても大派閥の細田派(実質安倍派らしい)や麻生派(いずれも馬と鹿の合体人物の集まり)の支持をガッチリ取り付けている。
未だに国民からの支持の高い石破氏などが総理になれば、長期政権だった安倍-麻生-菅の悪事を曝け出す恐れがある。なぜかやる気を見せている岸田氏の人気は、国民の中に上がらない。一方こちらも未だにだけれど小泉進次郎氏の人気が根強いのも不思議で、自民党支持者には安倍氏の再登板を期待する声さえあるようだ。自民党支持者すなわち富裕層は見せかけのアベノミクスでいいから、さらに株価を上げて欲しいという自分が儲ければ良しのさもしい人々であろうと思ってしまう。
その点、いろいろ言われた民主党政権であったが、ダメなものは駄目で、菅(カン)政権を辞任に追いやったのは自民党に優れる点だ。今の腐りきった自民党には自浄作用はないようだ。民主党に政権を奪われた際の深い反省?は雲散霧消して跡形もない。
東京都では、知事が県を跨ぐ移動はなるべくしないように都民に要請する一方で、海外からの五輪関係者は受け入れるという矛盾を平気で行う。政府は迎賓館でIOCバッハ会長の歓迎会まで行った。IOCにそこまで阿る訳って何なのか。先の週刊誌の見出しによれば、バッハさんはホテルオークラのスイートルームに自前の調理人まで同行して宿泊しているという。日本国民を中国国民と言い間違え、中国人には随分と受けたようだが、早く北京五輪をやりたい気分なのだろう。習近平主席からのさらなるもてなしに心弾ませていることが見え見えである。
日本人の血税が投入され続けたオリンピックが、本当に平和な時に行われるなら誰も文句も言うまいが、今はコロナとの戦争状態である。わが国だけではない。世界でも再感染が拡大しているという。こんな時に能天気な頭脳で考えた「安心・安全」で国民の命を危険に晒す日本政府、東京都そしてIOC/JOCとは一体誰のための組織なのか。
太平洋戦争の教訓も、東日本大震災の教訓さえも僅かな期間で忘れ去り、能力のない為政者が権力の座に執着する。まさに「菅と菅現象」である。