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品質問題に思う 第6回

2018年02月16日 | ブログ
品質を支える伝統と民度

 日本に限らないと思うけれど、世界各地で、日本の片隅で伝統工芸等の職人が僅かながら生き残って、昔ながらの技を伝える。また金属加工をはじめとして、中小企業の職人技でしか対応できない部品、製品があり、いまなお存在感を放っているものも多い。

 それらの職人技は、高度な熟練と効率化のために手抜きをしないことで支えられており、確信犯的な品質問題を起こすことはない。職人のプライドが許さないのだ。

 戦後の高度経済成長期に確立した「メイドイン・ジャパン」ブランドはまさにこれら伝統の職人技に根ざすものだ。加えて、国民の民度の高さにある。

 武家の伝統、商人の心得。それらの良い習慣は、明治政府の施した教育制度と相まって四民平等で庶民に普及した。この国には、本来儲けよりも「品格」、「プライド」を重んじる風潮があった。恥の文化があった。

 現代において、いかに経済大国と言われ、IT大国と胸を張っても、その民度において大幅に劣る国は、多くの分野で成功を収めることはできない。子供の頃から家庭で礼儀作法や衛生習慣を躾けられていない民族は、企業の品質教育は何倍ものエネルギーを要する。

 一方わが国では、70年代、80年代の成功体験に胡坐を搔いて、「うさぎの昼寝」よろしく教育界は「ゆとり教育」、企業は人件費の変動費化と人材の育成に手抜きを図る。経済一辺倒で発言力を高めた政治家や官僚、実業家の中に物事の本質を理解しない不届き者が増えて、折角の良い習慣が怪しいことになっているのだ。

 昨年のわが国は、貿易収支の黒字幅が戻って来たことに加え、海外投資のリターン(所得収支)も多くなり経常収支は非常に好調である。しかし、国民生活への恩恵はどうもあまり行き届いていない。国民一人当たりの所得はバブル崩壊後ほとんど伸びていない。サラリーマンの厚生年金や健康保険に介護保険が加わり、可処分所得は却って減少しているのではないか。健康保険や介護保険など国民のためのようで、今叫ばれている教育の無償化と同様、事業者のための制度の側面がある。だから一般の物価は上がらないのに保険料は増える。本当に老人が増えているから仕方がないのかどうか。

 企業の利益額は多いのに給料は上がらず、内部留保だけが増える現実。一部には働き過ぎの過労死もある現実。ブラック企業、特殊詐欺など世間で大きな問題になりながら、国は本気で取り締りを行っているように見えない。一強の安定政権の負の部分が、森加計の忖度問題程度にすり替えられ、大企業の品質問題も真に責任が追及されない。

 江戸時代からのわが国の良き伝統が、つまらないリーダー層の安逸で失われないことを願うこの頃である。



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