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品質問題に思う 第2回

2018年02月04日 | ブログ
ルールはルール

 世の中ルールで成り立っている。だいぶん前のことになるが、国立国会図書館の古い膨大な蔵書をマイクロフィルムに写し取る作業を行ったそうである。そこで分かったことだが、明治初期の出版物では法律書が一番多かったという。国家を創るために、明治政府はまず法整備を急いだことが伺われる。当然と言えば当然で、現代にあっても小さな組織であっても、有志で集まって組織を創るとなれば、当該組織構成員が守るべき規則を申し合わせておく。不備があれば改正できること、新たな規則を加えることができるようにしておくことも常識である。

 ルールは守ってこそ意味があるものだけれど、交通規則のスピード制限ではないが、夜間や天候条件も考慮し、安全サイドで規制するため、どうしても実用的には厳しい数値となる。天気の良い昼間、一般道の40km/Hrの制限道をスピード順守して走行すれば、長蛇の渋滞が生じる恐れがある。取り締まりにしても+10~15km/Hr程度のスピードオーバーは見過ごされるであろう。

 今回発覚した、日産やスバルが無資格完成検査を30年も前から続けてきた件にしても、完成検査など外国の自動車メーカーでは、行うにしても資格者は必要ない。さらに国内メーカーの国内生産車であっても海外に輸出する車では無資格者検査が許容されているという。そもそも新車の完成検査の作業は、車の操作を知っている者であれば、新入社員でも可能で、誰が行ってもその安全性に影響はしないものだという。

 なぜ国内車の完成検査が有資格者に求められるかと言えば、車検制度との兼ね合いという。車検は国交省の認定を受けた整備工場や自動車販売店で、国交省に代行する形で行っている。完成検査を無資格者が行っているとなれば、その車検制度を揺るがすことになるということらしい。

 しかし、それが所轄官庁のメンツとか、制度による既得権を維持したい販売店や整備工場の思惑であり、現実の安全性に関与の薄いものであっても「ルールはルール」である。たとえそれが社内で定めた念のための規則であっても、守ることを怠ってそれが当然となる風土が蔓延すれば、重大なルール違反に繋がってゆく恐れがある。

 それにしてもISO 9000が日本に上陸してほぼ30年、日産やスバルは毎年内部監査、外部監査を繰り返していたと思われ、これまで、その不正が指摘を受け是正されなかったことが不思議であり、ISO 9000とは何なのかという不信にもつながる。

 働き方改革などが叫ばれる昨今、ルール遵守で過重労働になるとしたら、わが国の生産性が低いと言うなら、国家ぐるみで無理なく守れるルールの見直しも必要だし、安全・品質維持に真に必要なルール作りが必要である。株式時価総額などの企業評価にしか関心がなく、顧客や従業員の幸せを軽視気味の現代の大企業経営者はじめ企業幹部に、そこまでの問題意識がないことが問題ではなかろうか。



本稿は日経ビジネス「甦れ日本の品質」2018.0108を一部参考にしています。
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