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マーケティング第2回

2014年01月04日 | Weblog
新興国に売る

 日米欧の先進国の中で、切磋琢磨された乗用車、家電、電子機器、カメラなどにはじまり、化粧品、サニタリー製品、コンビニ、宅配便に至るまで、飽和された自国の需要に飽き足らず、新興国への売り込みが盛んである。ライバルは米欧だけの時代ではない。中国、韓国、台湾など家電、電子機器などモジュラー化された製品群は、安価な労働力を持ち為替レートでも有利な彼らの得意分野だ。しかし、電気製品にもまだまだモジュラー化されない分野もあり、品質の高さで人々の生活に貢献する製品もある。

 先日、テレビでたまたま見掛けたのだけれど、ミャンマーだったか、電気の通じていない集落に「ランタン」を供給する試みを行っている日本企業を紹介していた。昼間太陽光に6時間晒しておくと90時間発光する。定価1台5000円。その集落の雑貨店ではすでに中国製が売られている。性能は不明だが1台1000円の安さ。ただ、店の人の話では「中国製は一ヶ月で壊れる」という。この日本製なら5年間は持つ。良さそうだと店に置かせて貰えることになった。

 当該日本企業はそのランタンを15個、地元の学校に寄付した。自宅に照明器具のない子供たちが夜間学校に来て、集団で勉強する。電気が通じれば「ランタン」はほとんど不要になる。しかし、子供の時から当該企業の製品に親しむことで、将来の当社製品の購買につなげる戦略でもある。

 それにしても、我が国では我々団塊の世代が育った5,60年も前から、電気の通じない地域は限定的であったと思われ、夜の自宅の勉強に不自由はなかったけれど、未だ世界ではそうはゆかない。そんな国の子供たちが、夜の学校に集まって懸命に勉強をする姿が、「ランタン」販売の話よりも印象的である。

 いつでもどこでも勉強できる環境にある者が、努力を惜しむ。「ゆとり教育」などという時代もあった。失われた10年とか20年とかデフレだとかを問題視している間に、子供たちの基礎学力が低下した。最近は学力も少し持ち直しているようだけれど、国家の経済力など、結局のところ国民の学識レベルに依存するもので、国家間の競争力の源泉は教育レベルであり、企業間競争にしても同様であることを忘れてはならない。

 話を戻して、新興国向け海外事業展開が、大手家電企業を先頭に行われている。輸出と言えば欧米向けの時代には、国内向けの製品性能仕様で良かったけれど、新興国向けでは、現地のお客さま起点の商品企画力強化が求められる。徹底した現地の生活習慣を研究し、ニーズを理解し把握する。

 たとえばインド市場向けエアコンでは、8割が寝室で利用し、就寝中はつけっぱなし、天井扇と併用するところから、静音性や省エネ性を重視するが、気流制御やリモコンは不要である。窓用の一体型より高価であるスプリット型*3)へのあこがれが強い。こうして「低価格のスプリット型エアコン」を当該市場に投入したという話がある。

 インドの冷蔵庫市場は、2008年456万台が2012年723万台に増加したが、その66%は未だワンドアである。エアコンに限らず、初めて家電製品を購入する層へ廉価で良質な製品を供給することが求められる。世界人口70億と言われるけれど、そのほとんどは未だ低所得者層*4)なのだ。購買能力なしと無視するのか、それとも巨大な潜在力を持った市場と見るか、それぞれの企業のマーケティング戦略が問われる。





*3)室外機が分離されているタイプ
*4)年間所得3000米ドル以下の層は41億人(2010年) by野村総研2011年資料
本稿は、(一社)品質管理学会第139回シンポジウム(2012年3月)での「パナソニックにおける品質グローバル化と現地化」パナソニック(株)品質技術本部 新土治男氏のご講演資料を参考にさせていただきました。
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