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新しい年に想う第8回

2013年01月22日 | Weblog
管理技術

 ボーイング787のトラブルが相次ぎ、当面運航停止、出荷停止となってしまった。ボーイング787型機は、日本の炭素繊維の技術を活かし、機体の軽量化でその燃費を20%節減することで話題となった。しかし、その燃費低減は単に機体の軽量化だけでなく、機内機器の制御をすべて電気で行なうようにしたことも貢献しているらしい。今回のトラブルの多くはその電気系統のもので、特に異臭、発煙を生じさせた焼け焦げバッテリーは、最新航空機搭載機器にあるまじき醜態を晒した。

 バッテリーには、これまでにない負荷が掛るようになったと思われ、机上の計算にはなかった運行中のある状態における負荷が設計数値を大幅に超えるものとなったのではないか。機体の70%近くを海外メーカーを含めた約70社に開発させる国際共同事業でもあったことも、最終擦り合わせまで含めた品質設計を難しくさせた懸念がある。バッテリーは英国社製とのことだが、日本企業の担当比率は機体全体の35%に達し最大であったということからして他人事ではない。

 最近の家電製品のように、部品を組み立てれば誰にも作れるというものづくりが進行し、その意識がまさか擦り合わせ型ものづくりである航空機の生産に影響を与えたとも思えないし、航空機といえど、元々多くの部品や装備機器は、単一メーカーということはあり得ず、共同開発そのものが不具合を生じさせるということはないと思う。ただ、すべての機器の制御を電気によるものに変えたということは、設計の根本変更にあたり、どこまで変更管理の徹底が図られたものか。今後の調査・分析が待たれる。

 このようなトラブルが起こると、改めてものづくりの固有技術を活かす管理技術の重要性に想いを馳せる。日本には世界に誇る多くの科学技術、生産技術がある。それが優れた品質の製品を生み出し、メイドインジャパンブランドを育てて来た。これら固有技術に対して、ソフト面からの管理技術がある。この管理技術においては、あまり俎上にのぼらないが、これこそ日本は世界的優位性を持っていると思う。

 1980年代頃から品質管理の世界で多くの先達がヨーロッパに日本のTQC(総合的品質管理)を伝え、その後東南アジアなど開発途上国にも現在も伝えられている。ただ、問題は品質管理の視点からの管理技術が、日本でバブル崩壊後には、ともすれば疎んじられているような風潮があること。

 日本の品質管理の象徴ともいえるTQC(1996年から我が国でもTQMと呼称)は、体質改善を通じた長い目で見た企業の成長が謳い文句であるために、1990年代のITの加速的発展に伴う、経営の「スピード」が強調されたことで、「長い目で見た成果」はその重要性への認識が衰えたものであろう。市場の変化が早ければ、経営の意思決定も早くなければならないことは当然ではあるが、基本あっての意思決定である。品質管理は経営の基本であり、そのスタンスを軽んじれば、その報いは必ずどこかに顕在化する。

 ボーイング787のような多くの世界企業による共同事業となればなおさらである。時代と共に企業内の人も入れ替わってゆく。企業内教育は継続してゆかねばならない。次世代に引き続き日本の技術が誇れるように、日本の品質管理技術であるTQMを、疎んじることなく維持発展させてゆかねばならない。





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