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統計(学)のすすめ10

2010年06月28日 | Weblog
統計の嘘

 「世の中に3つの種類の嘘がある。それは、日常のちょっとした嘘と、重大な虚偽と、そして、統計である」これは、19世紀の英国の政治家ディスレーリの言葉と伝えられているが、統計を使って虚偽を真実に見せる宣伝文句などがこれに当たる。また、故意に嘘を言うつもりではなくても、統計を誤って用いて、誤った結論を出すということもあろう。むしろこちらの方が多いかもしれない。

 人は活字になっている情報は信じやすいし、データで示されると弱い。しかし、以前にも触れたけれど、データはその情報源や採取方法を確認しておく必要がある。また、統計調査を行う際には、そのやり方を心得ておく必要がある。アンケートなどでは、質問文の用語の使い方にもいくつかの留意点がある。言葉の定義を明確にすることや、意味の違う言葉を混同しない注意も必要である。質問の中では、回答を誘導したり影響を与えるような言葉を極力避けなければならない。例えば「・・・に賛成ですか」ではなく、必ず「・・・に賛成ですか、反対ですか」と聞くことが大切である*10)。

 参議院選挙が24日に公示されたが、すでに序盤情勢の世論調査結果が、26日の誌面に踊った。読売新聞は「6月24、25日の2日間、全国の有権者を対象に電話で実施。有権者がいる世帯51,381件に電話して、30,440人から回答を得た」とある。一方日本経済新聞は、「調査は日経リサーチが24、25日の2日間、乱数番号(RDD)方式で電話で実施した。全国の有権者51,381人を対象に、30,440人から有効回答を得た」とある。その調査方法の表現に微妙な違いがあるものの、調査日や調査件数と有効回答数が全く同じであるところから、情報源は同じのようだ。調査方法の記述の違いは、記者のこの記事に対する感度の違いであろう。いずれにしても20歳未満だけ(有権者の居ない)で構成される固定電話を持つ家庭は非常に少なく、乱数番号方式で電話した家庭はすべて有権者が居たということなのであろう。

 しかし、この電話調査が有権者約5万人を対象にしたことは重要で、「統計では母数が一千万であろうが何億であろうが5万という数字は、その全体を現わすための標本数として適切である」と習った記憶がある。内閣支持率調査のような白か黒かの調査と異なり、調査項目が多いだけに、費用と時間をかけても、より確度が高く読者に対して説得力のある情報を求めたものであろう。

 但し、情報源はこの電話調査だけではなく、読売、日経共に全国総支局の取材結果が加味されていると断りがあり、情報分析結果の要約である見出しが、読売は「与党過半数は微妙」、日経は「民主「改選54」上回る勢い」と分かれた。与党過半数は民主が56議席を確保すれば達成する。表現は異なるが似ているようで、読売は与党の過半数に懐疑的なニュアンスであり、日経は過半数に達する勢いを強調している趣がある。いずれも自民党は議席を増やすとしながら、他の野党も含めその伸び具合から与党である民主党の議席数を日経は多めに、読売は少なめに見ていることが伺える。

 この世論調査の結果を「統計の嘘」のモデルなどというつもりは毛頭ないが、同じ世論調査結果を受けても、解析する側の元々持っている情報や期待もあって、判断は微妙に分かれる例ではある。



*10) この節まで(財)実務教育研究所「現代統計実務講座」1994年版参照
コメント
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