中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

統計(学)のすすめ5

2010年06月13日 | Weblog
バラつくということ

 バラつくと聞けば、身近なところで我々国民の所得格差もバラつきの一種である。職業に貴賎はないけれど、それぞれの仕事から生み出される付加価値には当然に差が生じる。その部分において格差は止む負えないところもあり、その格差さえ否定すれば、悪平等となり、人々の向上への努力を阻害し、社会全体の無気力化につながる恐れがある。共産圏諸国の生産性が落ち込み、ベルリンの壁の崩壊につながった歴史がそれを教えている。企業などが生み出した付加価値をどのように分配するかという労働分配率などの指標もあり、これがあまりに低い状態は資本家による搾取という言葉が当てられる。「風と共に去りぬ」の舞台となったアメリカ南部の奴隷制度や「蟹工船」などが極端例といえる。一方労働分配率を高くし過ぎることは、企業の再投資を弱める懸念がある。

 小泉改革で格差が拡がったとの既得権益を守りたい人々の喧伝が行き渡り、政権交代の一因ともなったけれど、国民の所得格差をみる統計指標であるジニ係数*8)でみれば、格差が急速に拡がったのは小泉改革前で、小泉時代はむしろそれが抑制されている。格差の拡大は、小泉改革の所為ではなく、急速なグローバル化がもたらしたもので、日本の労働者が、賃金がはるかに安い開発途上国の労働者との競争に晒されたためといわれている。このことを含め、小泉・竹中時代の功績を統計データで論証している本がある。辛坊治郎、辛坊正記共著「日本経済の真実」株式会社幻冬舎2010年4月刊。テレビのコメンテーターの発言や選挙演説など、もっとデータに基づくものでなければ無責任となろう。

 規格大量生産における製品品質は、そのバラつきをいかに小さくするかが問われる。同じ原料、同じ機械、同じ人が作ったとしても微妙なバラつきは常に存在する。その要因は無数にあり、その要因の一つ一つを確実につぶしてゆくことは、そのコストとバラつきの許容範囲で決まる。そのバラつきの指標として、もっとも重宝なのが標準偏差であり、ものごとの自然なバラつき現象が、その平均値を中心に正規分布で近似できることと併せて、統計解析にとって非常に重要である。標準偏差を算出する公式くらいは、企業人としては当然に知っておかなければならないのである。


*8)国家は、所得格差を税制や社会保障制度によって平準化(再配分)しており、所得格差だけのジニ係数ではなく、再配分後のジニ係数も確認しておく必要がある。またジニ係数は所得の定義や世帯人員数などにも依存するため、注意が必要であるといわれている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする