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この国の風景19

2009年12月25日 | Weblog
食育

 今年の6月に東葛飾テクノプラザで開催された「農商工等連携応援キャラバンin柏」のことは、本稿「農商工連携3-地元企業の技術力」で触れたけれど、この時の基調講演をされたのが、フランス料理の大家シェフM氏であった。

講演に先立って、世界を舞台にしたM氏の料理人としての輝かしい実績の数々を紹介するビデオが流されたけれど、私などこれまで全く知らない世界で、まさに瞠目させられると同時に、同じ日本人としてM氏を誇りに感じた。世界の食通の超有名人たちを唸らせた氏の味に寄せたこだわりは、日本人が持つ「うま味」への感覚であった。

 そしてM氏はご講演で子供たちへ、若者への食育の重要性を説かれる。欧米にはない、「うま味」への感覚が日本人の豊かな感受性を育んだ。しかるに現在日本にはファーストフードが浸透している。食生活の劣化は感性の劣化(第六感の退化)さえ招くとのご指摘である。講演で話をされるだけでなく、実際に社会的活動として子供たちへの食育活動をされていることがまた素晴らしい。

 国の興亡は、勿論国民の一人一人の能力と意欲にかかっているけれど、その一人一人の国民の体力と知力の根幹を成すものはまさに「食」である。日本が多様性のある豊かな食材に恵まれたことは、これまでの繁栄の基となった重要な要因の一つであろう。しかし現代日本では、共働きで子供たちへの家庭料理が手薄になったり、若い女性はダイエットだ作るのが面倒だと食生活を軽視し、折角の食材を活かしていないのではないか。その結果が、低体重児(2500kg未満)出生率がこの30年で倍増し1割近くにまでなった*11)とか、切れやすい子供*12)が増えたりにつながっているように思う。

 食の安全、地産池消、スローフード、おふくろの味、これらはすべてつながっている。豊かな食生活とは豪華な食生活を意味しない。「優」柔不断と「曖」昧のユウアイ*13)ではなく、貧しくとも食を通した愛情深い家庭の味こそが、この国の風景を心和むものに変えてくれるものではないか。
 
  *11) 文藝春秋2009年10月号「炉ばたに学ぶ」辰巳芳子氏「みそ汁のこと」から再び(閑話つれづれパートⅡその14で引用)引用。低体重児は体力、智力ともに低下しがちの上、成人後は生活習慣病になりやすい。とある。
  *12)本稿(この国の風景12-甘え)
  *13)12月21日放送のTVタックル(テレビ朝日)から平沢勝栄衆議院議員の言葉を借用
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