otocotoJAN 28, 2024
大人気コミック「ゴールデンカムイ」が、ついに今年1月19日に実写映画として公開された。本作は明治末期、日露戦争終結直後の北海道を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡る一攫千金ミステリー&サバイバル・アクション。
主人公の元陸軍兵・杉元佐一を演じるのは山﨑賢人、アイヌの少女・アシㇼパ役に山田杏奈。彼らとは別で埋蔵金を狙う、大日本帝国陸軍第七師団の中尉・鶴見篤四郎に玉木宏、元新撰組の土方歳三に舘ひろしも出演する。その他、眞栄田郷敦、矢本悠馬、工藤阿須加、栁俊太郎など、今注目の若手から実力派俳優まで集結した。
歴史ロマン、アイヌ民族文化など様々な要素が織り込まれ熱烈な支持を得た原作。それを丁寧になぞり一癖も二癖もあるキャラクターたちが映画にも登場する。そんな個性豊かなキャスト陣のなかにありながら、凛とした揺るぎないアシㇼパ像を魅せた山田杏奈の好演が光っている。
そんな山田杏奈さんに完成披露試写会直前にインタビュー。本作の制作秘話とともに、誕生日を迎えたばかりの彼女の魅力に迫りたい。
『ゴールデンカムイ』は大きな存在
ーーまず、お誕生日 (1月8日) おめでとうございます。やっと新年が明けた気分ですか?
ありがとうございます。23歳になりました(笑)。私、仕事始めがゆっくりだったので、それまではずっとお正月気分でした(笑)。”この映画の公開から新年始まる”という感覚だったので嬉しいですね。
私の中では『ゴールデンカムイ』という、すごく大きい存在の作品が公開されるので、年始早々すごくソワソワして、いい1年になりそうだなと思っています。
ーー山田さんにとって『ゴールデンカムイ』は、どういう意味で大きい存在なんですか?
まず上映館数も多くて規模的にも大きい作品ですよね。それに演じるアシㇼパも原作ではすごく人気のキャラクターなので、しっかりやりきらなければという責任感も大きい作品ですね。
ーー本作の見所を教えていただけますか?
よく使われる言葉ですけど、これだけ「家族みんなで楽しめますよ」って言える作品もなかなかないんじゃないかなって思っています。ロケーションはもちろんですし、ヒグマのCGなんかもすごくこだわっているので、安心して観ていただきたいです。
あとは登場人物のキャラクターですよね。それぞれ名だたる先輩方が演じられていて、本当にかっこいい(笑)。純粋に面白かったって映画館を出てもらえる作品になっていると思います。
生きる強さを感じる瞳
ーー山田さんが演じられたアシㇼパさんも格好よかったです。最初にアシㇼパ役に決まった経緯を教えていただけますか?
実写化のニュースが出ていて、もう配役は決まっているんだと思ってたので、お話をいただいた時はとても嬉しかったですね。恐らく、原作と年齢が違うとか、身長が違うとか、言われるだろうと覚悟していました。だけど、”それって私が考えることでもないな”って思って(笑)。決めてくださった制作陣の期待を裏切らないように、しっかり取り組もうと思いました。
ーープロデューサー陣によると、山田さんは、目力の強さがアシㇼパに通じているという印象だそうですよ。
ありがとうございます。15歳ぐらいの時、まだそんなに仕事の経験がなく、CMのオーディションで初めて受かったときに「目力がすごいですね」って言ってもらって、初めて自分に言葉が当てはめられたことが、すごく嬉しかったんです。
目力の強さは、持って生まれた部分でもあると思うんですが、”自分にしかできないことがあるんだ”って思えてから、”芝居が楽しいな”って思い始めたので、目力が強いと言ってもらえるのは嬉しいです。
ーー山田さんが考えるアシㇼパは、どんなイメージの人物ですか?
とても生きる力がある。少女とは思えないぐらい過酷で壮絶な人生を過ごしていた子なので、本当にしっかりしている。そして”自分がこうあるべきだ”とか、”こうしていかなきゃいけないんだ”っていう周りからの圧みたいなものが、彼女自身には届いているけど、折れずにしっかりと自分の人生に向き合って生きていく様がすごくかっこいいですね。
ーー壮絶といえば、山田さんも今まで映画やドラマで演じられた役柄も、なかなかハードなキャラクターが多いですよね。山とか村にいるといったイメージがありました。
そうなんです、山が多いです。あと生贄にもよくなっています。結構、そういう役が続いてますよね。でも、結構どの作品でも”生きていく強さがある顔をしている”みたいなことを監督に言ってもらうことがあるんです。この子なら山で生きていけそう、生命力がある(笑)みたいな感じで起用していただくことも多いです。
初体験での学び
ーー雪山の撮影は初主演映画の『ミスミソウ』以来ですか? 今回の北海道の雪山はいかがでしたか?
そうですね。私の中で『ミスミソウ』が、かなり寒かった記憶だったんです。『ミスミソウ』が終わった後に「これをやったらどんな撮影も乗り切れる」って思っていました。
今回は毛皮もあって、かなりしっかりした衣装だったので、私はそこまで寒い思いはしなかったです。
ーーやっぱりあの毛皮、あったかいんですね。
毛皮はとても暖かいです。でも衣装の下には、カイロをベタベタ貼りまくってました(笑)。それで私はなんとか大丈夫でしたけど、他の人の寒さ対策はすごかったですよ。電気で暖かくなる靴下みたいなものを履いている男性キャストもいらっしゃいました。
ーー過酷な状況ですよね。
雪山の撮影って、靴に雪が染みてきたりするので、大変だなって思う反面、原作の舞台となっている北海道で実際に撮影できるなんて、すごく贅沢なことだと思いました。
ーーアイヌゆかりの場所で、本格的なロケをされてますね。
二風谷でも撮影していますし、コタン (集落) をちゃんと建てています。期間的にもかなり時間をかけて撮影していました。
ーー北海道の地でアイヌの衣装に袖を通した感想を教えてください。
あの衣装は実際にアイヌの方が丁寧に作ってくださったものなんです。本当に繊細なので、「この刺繍だけ引っ掛けないように気をつけて」って言われました(笑)。
着ると”やっぱりアシㇼパの服だな”って感じました。アイヌ語でテクンペっていう手甲を付けてるんですけど、アクションシーンをこなしていく度に、真っ黒になっていくんです。でも洗うものでもないので、撮影を重ねていくにつれて、どんどん服が汚れていくことも、生きている感じがして良かったです。
ーー役に服も馴染んでくる感じですね。アクションを演じられるのは本作が初なんですか?
そうですね。ここまで本格的にやるのは初めてです。アクションも走るとか立つとか、本当に初歩の初歩から練習しました。
ーーアクションの「走る」「立つ」と、普通に「走る」「立つ」ってどう違うんですか?
例えば振り返るだけでも違うんですよ。気持ち的には焦っていても普通に振り返ると、間が抜けた感じの見え方になるんです。だから、そういう場合でもアクションとしての動作が、本当に大事なんだなって感じました。完成した映像を観たら”これでアクションとしての動作を練習してなかったら、全然違う感じになっていただろうな”って思いました。
ーーなるほど。アクション練習も大変そうですね。
出演が決まって、撮影前の半年くらい準備期間をいただいたんです。アクション練習を週に2、3回入れたら、普段運動全然しないので、筋肉痛のまま次のアクション練習みたいな(笑)。
ちょうど舞台をやっていた時期だったので、舞台があってアクション練習で弓打って、馬乗ってみたいな感じだったので、そのときは、”どうしよう”と気持ち的に大変だったときもありました(笑)。
ーーそれを乗り越えたら、これからどんどんアクションシーンはできますね。
まだまだですよ(笑)。これからも練習を続けていかなきゃなと思っています。
アイヌの心、和人の心
ーーアシㇼパといえばアイヌ語のセリフも、苦労されたんじゃないですか?
アイヌ語も難しかったですね。ひとつひとつ単語を細かく分解して覚えていると覚えられなくて‥‥。あんなに何回も頭に入れたのに、急に、 最初の言葉なんでしたっけ?ってなっちゃうこともあって、そこはちょっと苦労しました。
ーー覚えているアイヌ語はありますか?
やっぱり、
「カント オㇿワ ヤク サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ」
「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」という意味の言葉です。
あとは
「クトゥラ シサㇺ オハウ オㇿ シ オマレ ワ エ」
「一緒にいた男は汁物にウンコを入れて食べる」ですかね(笑)。
結構覚えてますね。
ーーそのセリフのように、本編中コミカルな要素も入ってきます。そういったシーンはどのように演じられたんですか?
今まで、すごくシリアスなシーンをやっていたのに、急に変顔をするシーンも入ってきたりするので、切り替えが難しかったですね。
漫画だとそれがすごく魅力になっているじゃないですか?なので、映画もそのバランスで面白くなるんだろうなと思いつつも、演じている方としては、”気持ちのつながりってどうしたらいいんだろう”って思ってしまうところもちょっとありました。そこはもう”コレはコレ、アレはアレ”、と割り切りましたけど(笑)。
ーーそうなんですね。”オハウ”や”オソマ”といえば、本編中にアイヌの料理もたくさん出てきますよね。実際にあの料理は食べられたんですか?
はい。原作に描かれているもので、手に入るものは同じものを使って、獲っちゃダメな食材は他の食材で代用しています。北海道特有のニリンソウといった植物は、本物を使って作っていて本当に美味しかったです。
ーーどれが一番美味しかったですか?
一番美味しかったのは桜鍋ですね(笑)。私、初めて食べたんですよ!
ーーそこは馬肉なんですね‥‥。
お味噌が入っているお鍋って美味しいんだなと思いました。やっぱり味噌がいいですよね! 撮影しているときは”オソマだ”って嫌な顔をしているんですけど、実際にお味噌の匂いがすごくするので、”ああ味噌のいい匂いだな”って思っちゃう日本人の心を押し殺して芝居をしてました(笑)。
取材・⽂ / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理
ヘアメイク: 菅長ふみ
スタイリスト: 中井彩乃
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