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北海道新聞 2025年4月27日 4:00
「思想的消費」への痛烈批判
『アイヌがまなざす』。卓抜な書名である。読み終え扉を閉じた後ずっと興奮がやまなかった。全身を震撼(しんかん)させられ、今この世界をどう生きるべきかが問われていると思った。
石原真衣、村上靖彦2人の研究者が5人のアイヌの人たちから聞き取りをし、その語りの内容を検討するというスタイルを採用している。語りにおけることばの揺れ、言い淀(よど)み、話題の転換なども手がかりにして、話者が現代に生きる先住民族アイヌとして背負ってきたものを浮かびあがらせる。
言い古されたアイヌ像におさまらない、身体をもって今を生きるアイヌそれぞれの姿勢が語りからひき出されている。
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