IDEAS FOR GOOD 5月 19, 2025 by 古川 紋
私たちが“伝統”と呼ぶものは、しばしば過去に閉じ込められたものとして語られる。けれど、ここに生きる人々にとって、それは“今”を形づくる知恵であり、未来への羅針盤だ。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州北部に位置するナス渓谷に暮らすニスガ族。長い歴史と深い文化を持つカナダ太平洋岸先住民族の一つである彼らの文化や暮らしは、自然との共生や動物、土地との密接な関わりを基盤に築かれている。特に、新年を祝う儀式「Hobiyee(ホビイェー)」は、太陽と月の巡り、そして人々の精神性を映し出す鏡のような存在だ。

Hobiyee(ホビイェー)のクライマックス。太鼓の音が会場全体に響き渡り、踊り手たちの動きと観客の歓声がひとつになる。エネルギーに満ちあふれた瞬間。
この祝祭の中心には、「自然と共に生きるとはどういうことか」という問いが息づいている。個人ではなく、共同体。過去ではなく、今と未来。ニスガ族が大切にしてきた生き方は、資本主義や環境危機に揺れる現代社会において、私たちの暮らし方や価値観を見直すきっかけを与えてくれるのではないか。
今回は、ニスガ族のチーフであるT’am Yee Smax(タム・イー・スマックス)氏に話を聞き、Hobiyeeの起源や意味をたどりながら、インタビューを通じて語られた自然観、教育観、資本主義への問いなど、ニスガ族の叡智に耳を傾けていく。
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https://ideasforgood.jp/2025/05/19/hobiyee-indigenous-wisdom/