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北海道新聞2023年9月29日 22:09(9月29日 22:19更新)
持ち手が特徴的な国の重要文化財「蕨手刀」(八戸市博物館所蔵)
【白老】国立アイヌ民族博物館で16日から開かれている企画展「考古学と歴史学からみるアイヌ史展―19世紀までの軌跡―」では初公開となる資料や国の重要文化財など約320点を展示している。展示を通して、今につながる伝統性が形成された19世紀までのアイヌ文化に焦点を当てている。
■刀、朱印状…最新知見で
展示は考古学や歴史学の最新知見を反映させた内容となっている。アイヌ民族関係団体を招いて感想を聞くなど、同館が目指すアイヌ民族が主体となったアイヌ史の構築や常設の基本展示の改善につなげたい考えだ。
同館の藪中剛司研究学芸部長は「19世紀までの歴史について基本展示では詳しく説明し切れていない部分が多くある。本州や大陸との交易の影響も受けながら、アイヌ文化が形成されていった歴史を見てほしい」と話す。
交易のなかで文化が変遷していったことを示す資料の一つが国の重要文化財(重文)の「蕨手刀(わらびてとう)」(八戸市博物館所蔵)だ。
同館の大江克己研究員によると、律令(りつりょう)国家の権威を示す威信物として、7世紀に刀が北海道に流入し始めた。当初は持ち手の部分が四角い方頭大刀(ほうとうたち)が多かったが、8世紀ごろから持ち手が丸い蕨手刀に移り変わっていったという。大江研究員は「刀の変遷を追うことでアイヌ文化につながる宝刀の系譜が見えてくる」と話す。
17世紀以降、松前藩がアイヌとの交易を独占してからは自由な交易が制限されていった。江戸幕府が松前藩主に独占を認めた朱印状を初公開している。
そのほかにも・・・・・
特別展は11月19日まで。10月7日午後1時半からは展示担当者が解説するトークイベントも開かれる。(斎藤雅史)