シネマカフェ2024.1.10 Wed 13:30
オーストラリア先住民族出身の監督たちによる全5作品を日本初上映する「オーストラリア先住民映画祭2024」が、2月3日(土)に渋谷・ユーロスペースにて開催決定。会場、オンライン配信のハイブリッド形式にて開催される。
オーストラリア先住民族出身の監督たちによる全5作品を日本初上映する「オーストラリア先住民映画祭2024」が、2月3日(土)に渋谷・ユーロスペースにて開催決定。会場、オンライン配信のハイブリッド形式にて開催される。
口承に基づく文化を、新たな手段として映画で表現
オーストラリアの先住民族(アボリジナルの人々とトレス海峡島嶼民)は6万年以上前からオーストラリアに住み、世界でも最古に属する文化の伝統を守ってきた。18世紀に始まったヨーロッパ人の入植は彼らの生活に大きな衝撃を与えたものの、それでもその文化は生きながらえ、現在も彼らはその精神性、土地との繋がりを様々な芸術を通じて表現している。
そして1960~1970年代にかけてテレビが家庭に普及する中、先住民の権利回復運動の高まりと相まって、この口承に基づく文化から、新たな表現手段としての映画が先住民自身により作られるようになった。
1990年代には、オーストラリアの映画機関の振興策により、新しい先住民の映画製作者たちが相次いで登場し、彼らはこの新たな表現手段を自らのものとして、作家性を追求するようになっていく。現在、ウォリック・ソーントン、レイチェル・パーキンズ、リア・パーセルなど先住民の監督は世界で活躍をしている。
先住民の監督による作品を上映する今回の「オーストラリア先住民映画祭」では、映画という光の芸術により、紡ぎ続けられている彼ら自身の文化の物語に触れる。
ドキュメンタリー映画から短編作品まで珠玉の5作品
今回、初開催となる「オーストラリア先住民映画祭 2024」では、先住民の監督たちによる多彩なラインアップを会場とオンライン配信のハイブリッド形式にてお届け。
“砂漠の王者”の称号獲得に人生をかけるライダーたちを追ったドキュメンタリー映画『フィンク 悠久の大地を駆ける』、オーストラリアの女優リア・パーセルが1893年のオーストラリア奥地を舞台に人種差別と女性蔑視を取り上げたスリリングな『家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説』。
短編作品では、ヴェネチア国際映画祭やベルリン国際映画祭でも評価の高いウォリック・ソーントン監督が先住民コミュニティ向けラジオ局のある一夜を描いた『グリーン・ブッシュ』。
古いしきたりによって許嫁となった見ず知らずのふたりをみずみずしいタッチで描いたラブコメディ『マイベッド、ユアベッド』。
ヌラヌラ(こん棒)を振り回すおばあちゃんたちに立ち向かう白人の若手警官を描いた『ヌラヌラ』は、西部劇の雰囲気を感じさせる軽妙なコメディとなっている。
また、ジャスティン・ヘイハースト駐日オーストラリア大使、本映画祭アドバイザーでプロデューサー、シドニー工科大学准教授のポーリーン・クレイグ、日本を代表するオーストラリア映画研究者の佐和田敬司(早稲田大学教授)、映画評論家の村山匡一郎、オーストラリア先住民族の伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者・画家のGOMAより、開催に寄せるコメントも到着。
『家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説』の監督・主演リア・パーセル、プロデューサーのベイン・スチュワートの来日も決定し、トークイベントを開催する。
「オーストラリア先住民映画祭 2024」開催に寄せるコメント
■ジャスティン・ヘイハースト(駐日オーストラリア大使)
「オーストラリア先住民映画祭2024」を、皆さまにご紹介できることを嬉しく思います。
アボリジナル・ピープルとトレス海峡島嶼民は、古くからストーリーテリングを活用し、現存する世界最古に属する文化を共有してきました。オーストラリアの先住民の人々は、こうした伝統を土台に映画を通じて自らの物語を語り始め、今ではこの分野で卓越した才能を発揮しています。先住民の人々による映画制作が盛んになる中、わが国のこうした人々の多くの物語が、世界に発信されているのは素晴らしいことです。
多くの皆さまが、オーストラリアの先住民の創造性を祝う、この映画祭で様々な種類の作品を楽しまれるよう願っています。
■ポーリーン・クレイグ(プロデューサー、シドニー工科大学准教授)
過去30年に、オーストラリアの先住民の語り手がカメラの後ろに立って、重要な役割を果たす動きが顕著になりました。そして、世界に波のように押し寄せた先住民映画の一翼を担ったのです。こうしたオーストラリアの先住民映画作家は、自らのストーリーを自らの目線で伝えています。今回のイベントでは、歴史上のストーリーと現代のストーリーを描いた作品がそれぞれ上映されます。その両方をお楽しみいただければ、幸いに存じます。こうしたストーリーがあったからこそ、今日のオーストラリアらしさが確立されたのです。
■佐和田敬司(早稲田大学教授)
先住民の文化はオーストラリア芸術のあらゆる分野を牽引している。文学、演劇、ダンス、音楽、美術、そして映画も例外ではない。20世紀の中頃までは先住民が映画をつくることも、演じることも出来ないという根強い偏見があった。それが突き崩され、今や多彩な俳優たち、実力のある監督、脚本家などによって、優れた先住民映画が次々と生み出されている。かつては語られるだけであった彼・彼女らが、みずから語りだし、さらには彼らの文化に無尽蔵にある物語によって、オーストラリアの歴史を語り直そうとしている。先住民映画の現在を、この上映会でぜひ体感してほしい。
■村山匡一郎(映画評論家)
オーストラリア映画は今日、世界中でその存在感を高めているが、そんなオーストラリア映画の現状を知る上で、先住民出身の監督・俳優・スタッフを抜きにしては語れない。それほど多くの豊かな才能がオーストラリア映画を彩っているからだ。そんな先住民の伝統文化を受け継ぐ映画人たちが創り出す数々の映画を通して、わが国ではあまり知られていないオーストラリア映画の多様性と魅力に触れる絶好の機会である。
■GOMA(オーストラリア先住民族の伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者、画家)
オーストラリア先住民と聞いて何をイメージしますか ?ウルル(エアーズロック)、壁画、ディジュリドゥ?
この映画祭で上映される作品は全て先住民監督による作品です。’00年代になりスポーツや芸術の領域で先住民スターが誕生し始めました。これから来たるであろう先住民 × テクノロジーの革命前にこの転換期の作品達をぜひ観てほしい。あなたが抱いているオーストラリア先住民へのイメージは劇的にアップデートされることでしょう。
「オーストラリア先住民映画祭2024」は2月3日(土)、ユーロスペースにて開催。
https://www.cinemacafe.net/article/2024/01/10/89439.html