ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

              【お知らせ】

【定休日は毎週水曜日です。】【9月も毎週日曜日は休業します。】

電気石2

2012-07-27 11:45:46 | 日記・エッセイ・コラム

今日は電気石2です。

Dscf0812

Dscf0805

ブラジル ミナスジェライス州 産 鉄電気石・水晶(Black Tourmaline/Quartz)

上の写真は鉄電気石と水晶の巨大共生結晶です。鉄電気石には巨大結晶になるものがあります。この標本は水晶もそこそこのサイズで、その二つが同じ時間をかけて巨大に結晶成長したものだろうと思われます。鉄電気石はどうも双晶になっているようです。下の写真の水晶にはスターバーストといわれる痕跡が見られます。これは雲母の結晶が付着していて、それが風化でなくなった痕跡だろうと思われます。この標本はサイズといい、その共生バランスといい、表面表情といい、複数の意味で立派な標本だと思います。

鉄電気石の巨晶は意外な所で見た事があります。そこはどこかと言うと、愛知県の岡崎市美術博物館です。同館の入り口を入っていくとひとつの椅子が目に入ってきます。それはマリーナ・アブラモヴィッチというアーティストの「人間と精神のための椅子」という作品です。その作品の背もたれの部分には巨大な鉄電気石が埋め込まれております。それは鉱物結晶の原石をそのまま現代アートの作品に取り込んだ珍しい例です。

一昨日の芸術家の女性が自分の作品に天然石を使いたいと言われた話を思い出しました。

自然が造った芸術作品ともいわれる鉱物結晶と、人間の芸術家の創意とのコラボレーション、何かゾックと感じるものがあります。

思えば、天然石を自分の作品に使う事は、それほど珍しい事ではありません。イサム・ノグチの彫刻作品は天然石で造られているものが多いです。そういえば、ルネッサンスのミケランジェロはイタリアのカッラーラ産の白い大理石で彫刻作品を造っていました。彫刻家であれば天然石という素材を使って作品を造る事は当たり前の事です。

水石の世界では石は自然のままが良いとされていますが、そもそも石の台座は人間が造るものです。もともと水石の世界では自然と人間の造ったものとのコラボレーションの美学なのです。それは庭園の世界でも同じです。それらはセカンド・ネイチャーといっていいような美学から成り立っています。ミロのヴィーナスを明礬結晶と思われる結晶でコーティングした作品を思い出してしまいました。

石は自然のままが良いのですが、我々人間がそれを愛でる際には、知らずに人間の意図が介在しているようです。拡大解釈すれば、宝石の世界でよくあるエンハンストやトリートメントのような加工もそれらと同じようなものかも知れません。メノウの焼を入れる事やタンザナイトの熱処理、中には放射線照射で処理する事もあります。

どうも人間はより良い美を追求するように出来ているようです。

先ほどの椅子の作品に絡んでもう少し書きます。

椅子も芸術的関心の対象であると思います。

Dscf0783

Dscf0788

Dscf0785_2
ヴィトラ・デザイン・ミュージアム製フランクロイド・ライト作 旧帝国ホテル用の椅子の模型

上の写真は金沢のコニーズ・アイというデザインショップで購入した椅子のミニチュアです。世の中には椅子のコレクターもいらっしゃるそうですが、そんなにスペースのかかる贅沢な趣味はないと思います。私は模型で十分満足です。このヴィトラ製の模型は非常に細部まで忠実に再現してあります。

ミニチュア世界の作品であれば普通のサイズの鉱物結晶でも芸術作品に取り入れる事が簡単だと思います。

芸術家の皆さん、是非、鉱物結晶をご自身の作品制作に取り入れてみて下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする