ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

              【お知らせ】

【定休日は毎週水曜日です。】【7月も毎週日曜日は休業します。】

そろばん玉石

2018-06-29 13:39:57 | 日記・エッセイ・コラム
一昨日のニュースでしたが、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウ近くの目標の位置にたどり着いたそうです。リュウグウは炭素質コンドライトからなる小惑星らしいので、太陽系創生当時の原始の星間物質における、元素組成の情報を含んでいると考えられているそうで、サンプルリターンが楽しみです。初代「はやぶさ」計画は実質的には失敗だったにもかかわらず、無事、地球に帰還した事が過大に美化され過ぎた印象を受けていましたので、今回は実質的な成果を期待したいところです。

さて、その小惑星リュウグウの形状が気になっております。報道された写真を見る限り、それはまるで巨大なそろばん玉です。どうしてそのような形状なのでしょうか?

で、今日のブログは「そろばん玉石」です。このブログのタイトルとしては初登場となります。



まず、最初の写真は京都府京丹後市久美浜のそろばん玉石です。そろばん玉石は流紋岩質岩から産する玉髄質の石英で、そろばん玉のようにみえるところからその名があります。







次も同じ産地のそろばん玉です。面白いのはその裏側に小さな晶洞があり、先の尖った結晶した水晶の群晶があります。

次も同じ久美浜のそろばん玉石です。





これは三つのそろばん玉石が接合しております。これの面白いところは、そろばん玉石が成長していったような成長痕が残っております。

これらの標本を見ていると、その成因を物語っているようで、色々、想像できるところが面白いと思います。

次は比較的珍しい、赤色のそろばん玉石(小松産)です。小松産には他には青色のものも見つかっております。



最後に熊本県人吉市桑木津留産のそろばん玉石です。



多くのそろばん玉石は主に日本海側の新第三紀噴出の流紋岩の地層から産出しますが、九州にも同じようなものがあり、またそれはその産地らしい独自の形状をしています。

標本は産地と成因を物語っているのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

対角線2

2018-06-22 12:32:54 | 日記・エッセイ・コラム
先週のブログ「対角線」を書いた直後に、空晶石(キャストライト chiastolite)の存在を思い出しました。その名もギリシャ語で「対角線的な配列」を意味する chiastos (対角的配置の意)に由来する空晶石は、紅柱石(アンダリュサイト andalusite)の変種で、その断面に黒鉛(グラファイト)などの炭質含有物が十字の線状に現れるものです。

その空晶石、店内に幾つか残っていると思って探したところ、ほとんど残っていない事が発覚しました。「石の華」もオープンして、まもなく丸7年になります。店内の石も売れてしまったら無くなります。仕入れ強化の必要性を感じてしまいました。

(このブログでは過去に「宝飾4」2013.03.04で中国 河南省産の空晶石の写真が一度だけ出ておりました。)

現在、辛うじて残っていたものの写真を撮りました。





最初は国産で、京都府相楽郡和束町木屋産の空晶石です。これは分離した紅柱石の断面です。花崗岩体近傍の泥質ホルンフェルスの中に埋もれたような状態で産出するようです。

次は丸玉状態で残っていたものです。



球面上の表裏2か所で十字の対角線が入っていて面白いと思います。このような幾何学的面白さは、原石のままでは、すぐにはわからないと思いますが、丸玉になっているせいか売れ残っておりました。

対角線の話題としては正五角形や菱形12面体の黄金比や白銀比の話題がありますが、今回は止めます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

対角線

2018-06-15 12:15:51 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「対角線」です。ひとつ前のブログ「砂時計」で砂時計構造の写真を撮りたかったカナダ産の透石膏の写真は、このブログの「石膏2」(2013.02.02)に自然光で撮ったものが出ておりました。その写真を見ていると、菱形の面に対角線のような線が写っておりました。鉱物の結晶と対角線、これは興味深い現象だと思います。



上の写真は奈良県天川村のやや大きめのレインボーガーネットの菱形12面体結晶を勾玉製作の名人であるOさんに磨いてもらったものです。その菱形の面に対角線のような構造線が見えると思います。これは立方晶系の鉱物ならではの特徴だとは思いますが、自然のままでは見えなかった構造がその表面を磨くことによってはっきりわかるようになり、面白いと思いました。

この現象はカボション等に磨かれたトリ・アスター(俗にベンツマーク)やテトラ・アスター(Xマーク)とは全く別の構造線であり、それらとは違った面白さがある、と思います。

他にも対角線のある鉱物があると思いますが、やはり、鉱物の面白さのひとつは、鉱物の持っている幾何学的な構造だと思います。

ところで、対角線と言うと、鉱物以外に気になった事が三つあります。

まず、最初は数学者ゲオルグ・カントールの対角線論法でしょうか。カントールの対角線論法によって、無限には濃度の違いがある事が証明されました。哲学的にはわかったようでわからなかった無限という概念が数学的にその性質がはっきりわかるようになり、集合論を発展させました。

それから、「石が書く」(古書の値段、高過ぎ!)で有名なロジェ・カイヨワの対角線の科学でしょうか。人間界と自然界の両方の現象の背後に潜む法則・原理を取り出しうる、という考え方に共感します。

最後は非常にマイナーですが、高校の大先輩にあたるオクヤナオミ(画家)の著書「対角線上の異邦人」(水音社 2003年)でしょうか。私は2005年に小松市立本陣記念美術館で開催されていた「現代美術の行方 オクヤナオミ寄贈作品からみつめる」という特別企画展を見に行きました。その展示会でオクヤナオミの幾何学的な抽象画を見ました。そして、その展示会に刺激され、「対角線上の異邦人」という本も読みました。その本は美術を数学で、数学を美術で表現することを目指し、視覚表現作品を生み出してきた著者による断章形式のエッセイ集でした。そのアフォリズム的な文章には多義性が読み取れ、作品以上の興味が湧きました。

対角線。これは私にとって、数学的、思想的、美術的なものであると同時に、鉱物的にも気になる存在です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

砂時計

2018-06-07 11:27:10 | 日記・エッセイ・コラム
唐突ですが、私は小さい頃から砂時計が好きでした。砂時計の何が好きかと言うと、砂で時を測るというその機能よりも砂時計のカタチそのものと砂が落ちていく様子が好きなのです。ですから、砂時計には正確に時を刻むという実用性は求めておりません。自宅には砂時計やその類似のオブジェというコレクションが幾つかありますが、それらのどれもが時計としての機能は持たない無用のものばかりです。

さて、先週の土曜日(金沢の百万石まつりで百万石行列のあった日)に日帰り出張(鉱物の仕入れ)で東京に行って参りました。ミネラルマーケットと東京国際ミネラルフェア(新宿ショー)というお決まりのコースです。

その新宿ショーの会場で、興味深いチラシを見つけ、その足で、三省堂書店池袋本店内にあるナチュラルヒストリエに向かいました。そこでは山田英春さんと時計荘さんの合同展「石が描く、石と描く」が行われており、山田英春さんの「不思議で美しい石の図鑑」に載っていた瑪瑙や碧玉の現物を見学しました。そのナチュラルヒストリエという『Bookman's Gallery』は初めて行ったのですが、そこは私好みの商品ばかりで、非常に魅力的な空間でした。生憎、仕入れ直後というタイミングで、所持金が少なく、無茶な衝動買いは出来ませんでしたが、それらの中で比較的安価なもののみ数点購入しました。

その中のひとつが砂時計ならぬ泡時計オブジェだったのです。



これは青い液体が上から下へ落ちていき、同時に泡が下から上に向かってポコポコと上がっていきます。泡の変化やわずかに聞こえる泡の音が魅力的なのです。安価だったので衝動買いしました。

砂時計と言うと、鉱物的には、すぐ思い付くのは、やはり、カナダ産の透石膏の結晶でしょうか?その透明な菱形面に長波のブラックライトを当てると見事な砂時計構造が見れます。その写真を撮ろうと思いましたが、残念ながら売却済みで店内には残っておりませんでした。



それから、モロッコ産の両錐アメシストでしょうか?これはアメシストのファントムが両方の錐面から対称的に入っており、砂時計のような不思議で魅力的な構造がみれるものです。こちらはひとつ残っておりましたので写真に撮りました。

もしかすると、他の鉱物にも同じような砂時計構造があるものがあるかもしれません。鉱物好き+砂時計好きにとっては気になる存在だと思います。

最後に砂時計の話題のブログを書こうと思っていたところ、冥王星にメタンの砂丘を発見!というニュースが飛び込んできました。砂丘があるという事は砂を動かせるだけの大気と砂があることを意味し、その砂は砂粒サイズのメタンの氷らしいのです。どうも地球と同じような浸食や風化現象があり、地球の水や岩石の循環と同じような輪廻転生が起きているらしいのです。それは驚くべき現象だと思います。

さらに思いました。砂時計とは地球上の石英や長石などの砂粒状の岩石の欠片と地球の重力とで時間を測るという極めて地球的な装置だったのだ、という事を再認識しました。

そういえば、島根県に1年計砂時計という巨大な砂時計のある施設があるそうです。いつか見てみたいものです。



コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする