![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/0e/6b113c6ed4ef5bdd382426a5b732f270.jpg)
さて、上の写真は何でしょうか?
その答えはスギライト(南アフリカ産)です。これはマクロ撮影したもので、少しボケて写ってしまっていますが、微細な針状結晶が放射状に集まり、花のように見えます。これもまた「石の華」と呼んで良さそうな気がします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/1e/35bc83cfc76a07e68cd13fd62e1d8df1.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/c3/2af36fbc029debf8b5599118f813524d.jpg)
次の写真は普通の肉眼的なサイズの写真(上からと側面から)です。紫色繊維状結晶の層が皮膜のような形で母岩(ハウスマン鉱やリヒター閃石など)に付着しています。肉眼的なサイズの結晶鉱物好きにとってはそれほど面白い鉱物ではありません。ただ、その表面を良く見てみると、最初の写真のような「石の華」がある事に気づくと思います
実は、このブログでは今日のスギライトは初登場となります。スギライトはチャロアイト、ラリマーとともに世界三大ヒーリングストーンの一つとされ、パワーストーン愛好家に人気がありますが、肉眼的に結晶していない鉱物にそれほど関心のない私はこれまで無視してきたとも言えます。
ただただ、スギライト(杉石)は日本人の岩石学者(杉健一)によって命名された新鉱物(1974年に認定)でもあって、鉱物趣味的にも興味のない鉱物ではなかったのです。それから、mindat.orgというサイトでは、まるでレッドベリルのように見える美しい柱状結晶のSugiliteの写真が載っており、これは無視できない、と思いました。
スギライトの肉眼的に見える結晶は珍しいと言えます。それでもmindat.orgにある写真のような結晶を見ると、どうしても愛すべき鉱物だと思ってしまうのです。
現在、店にはスギライトの原石は三つあります。そのひとつが先ほどの写真のものです。
もうひとつのものの写真を出します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/58/cb5236885e153595aa0d9735936a4e2a.jpg)
これも結晶質のスギライトです。色合い的に何となく、チャロアイトのようにも見えてしまうと思います。
それから三つ目の写真が次の3枚です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/fd/b34244fc6574031b263906e6e13b7161.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/c9/47051c6bf762a7c6fbd6589bc9b6bfbd.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/67/0c6e6de14b42a1e97127bfb6dd8d5ac8.jpg)
写真からはわかりにくいかもしれませんが、これも微細な結晶の集合体になっております。(この三つ目のものは常連のOさんの取り置きとなっております。)
私的にはスギライトにはひとつ忘れられない思い出があります。それは「石の華」を始めて、あるお客さんからスギライトの原石を仕入れて欲しいと頼まれて、あまり乗り気にはなれなかったものの、ちょうど新宿ショーのタイミングだったので、スギライトを扱っていたディーラーからひとつだけ選んで仕入れて来ました。そのお客さんはスギライト好きだったので、同じ時期に大阪のミネラルショップでもあるひとつのスギライトの原石を購入していたのですが、その石と私が新宿で仕入れて来たものとをある角度で合わせてみると、何と!ぴったり合わさったのでした。その瞬間、鳥肌が立ちました。大阪と東京、しかも別々の店の石が合わさる?!もしかすると、それらは元々は同じディーラーのものだったのかもせれませんが、驚くべき偶然だと思いました。(その二つは整形したものではなく、不定形に割られたものでした。)
世の中には不思議な事があるものです。
これからはスギライトもチェックしてゆきたいと思っております。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/c2/a0c213e980e64aaab6fd97fb5dce9e61.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/92/77f84723887cf4ed633742775953ae95.jpg)
これは瀬波川紋石と言って、岩石的には球果流紋岩という種類の岩石です。瀬波川は手取川水系の川ですが、同じ水系の尾添川で採れる白山紋石とは違った雰囲気があり、私的には、この花のような模様が気に入ってます。これもある意味、「石の華」と言っても良い石だと思いますので、「石の華」的には愛着が湧きます。
球果流紋岩の模様には様々なタイプがあります。それらには俗称としてそれぞれの名前が付いておりますが、それらは愛石家の人たちが主に産地や石に対しての印象で名付けたもので、正式に体系だった分類の上での名前ではありません。
球果流紋岩の様々なバリエーションも面白く、その総覧みたいなものが欲しいところですが、どうも、そのようなものは存在しないようです。
それにしても、この球果流紋岩だけでも多くのバリエーションがあり、その違いはどのようなメカニズムで生じているのか?不思議に思います。チョッとだけ調べてみましたが、そのような疑問に答えられる文献や研究は見当たりませんでした。
石の世界はわからない事が多いのですが、未知に満ちているからこそ面白いとも言えます。
今日は、瀬波川紋石を見ながら、色々、想像して、楽しんでいます。
出版界では写真集は人気があります。「写真集は日本文化の特徴だ!?」と言われることもあるくらいで、日本人は写真集好きだと言えます。このブログでもブログ内検索をしてみると、「写真集」という言葉が出てくる記事が意外にも数多くありました。どうも私も写真集好きだったようです。
さて、先日、越中・海中翡翠原石愛好会の代表幹事の得道さんと近江さんのお二人が「石の華」に来店されました。その目的は「珠玉の海中翡翠」という写真集の委託販売の相談でした。「石の華」ではこれまで本の販売はやってこなかったのですが、お二人と翡翠や写真集のお話をしているうちに「石の華」でも置いてみよう、という気持ちになりました。
今日の写真はその写真集です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/0a/49037f5e0050e06fc37bc5d1be2c3cdf.jpg)
この写真集には越中・海中翡翠原石愛好会の会員の皆さんが海に潜って採集した翡翠(一部、コランダムを含む)の原石がたくさん載っております。それらの魅力を最大限に表現する為に大判写真で贅沢にページを使っており、会員の皆さんの意気込みも感じとる事が出来ると思います。大きな翡翠は海岸では探す事が難しくなってしまいましたが、海中では今でも採れるらしく、そのサイズ感やフジツボが張り付いているものなどの存在感は抜群だと思います。
この「写真集 珠玉の海中翡翠 悠久の時のロマン」(定価:税込み3,000円)は普通の書店には置いてありません。「石の華」の店頭で購入可能です。
それから、せっかくの「写真集」の話題なので、私のお気に入りの写真集を2点紹介します。
最初は「関東と周辺の鉱物」(鉱物同志会 創立30周年記念写真集)です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/86/2813c3bf0e90172bf5b56506bd592eec.jpg)
これは今年の3月に発行されたものですが、載っている鉱物そのものと写真も非常に充実しており、大変な力作だと思います。
次は「九州・山口の鉱物」(福岡石の会 創立80周年記念写真集)です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/e6/48c0b3522a428e0c2a8534ea9ff3242d.jpg)
こちらは3年前の3月に発行されたものですが、こちらも載っている鉱物そのものが充実しておりました。(写真にサイズ表記が無かったのが少し残念でした。)
どちらの写真集も創立記念に相応しい大作ですが、両方とも既に絶版だと思います。(「石の華」の店内に置いてありますので見る事はできます。)
今日は石の写真集の話題でした。
唐突かもしれませんが、私の十代の頃、家では柴犬を飼っておりました。雌犬で名前は紅小町号(呼び名はベニ)、ペットというよりも家族の一員のような存在でした。
さて、先日、飯田橋のミネラルマーケット会場でコマチアイトという岩石を見かけました。コマチアイトの存在は「三つの石で地球がわかる」(BLUE BACKS)を読んで知ったばかりだったので、その直後という良いタイミングで、しかも、昔の愛犬の名前にも相通じるところが気に入って、即決で購入しました。
今日の写真はそのコマチアイトです。これは南アフリカ共和国のコマチ川転石ですが、面白い事に、そのラベルにはGPSの位置情報の数字も書いてありました。
写真はそのスライスした断面です。恐らく、岩石の薄片を作る際に出た残りの部分だと思われます。
その植物的な模様が面白いと思います。この模様は橄欖石が急冷して細長い結晶が伸びて出来る「スピニフェックス組織」といわれるそうです。
その破断面や転石だった表面にも同じような模様が見えます。このコマチアイトの最大の魅力はこの模様だと思います。
コマチアイトの和名は小町石ではありません。それは南アフリカ共和国のコマチ川に由来しています。
このコマチアイト、見た目にも面白い岩石なのですが、実は、それよりも、地球史の冥王代を物語る、興味深い存在なのです。
地球誕生は46億年前、隕石や微惑星が衝突・合体して集積していき、原始地球に成長したと考えられています。その原始地球にも隕石や隕鉄が衝突し続け、その巨大な衝突のエネルギーは熱エネルギーに変換されて、原始地球の表面はどろどろに溶けはじめ、液体のマグマ「マグマオーシャン」に覆われます。やがてマグマオーシャンが少しずつ冷えていくと原始海洋と最初の岩石ができていきます。私は海洋地殻といえば玄武岩と思っていましたが、ここでコマチアイトが登場してくるようです。
どうも、このコマチアイト、マグマオーシャンが冷えて固まった最初の岩石であると考えられているそうです。(コマチアイトの融点は約1600℃で玄武岩の融点は約1200℃)ただ、最初の石ができるプロセスにはマグネシウムの含量などを考慮すると複数あると考えられる事から詳しい事はいまだによくわかっていないそうです。
それから、南アフリカ共和国のコマチ川のコマチアイトは変成岩になっており、どうも冥王代にあったものではなく、2次的なものである可能性があるそうです。
そういえば、約40億年前の世界最古の石として知られているアカスタ片麻岩は花崗岩が変成したものでした。花崗岩には火成岩だけではなく、変成作用でできるものもあるそうです。そして、今日のコマチアイトも古いものでありながらも変成岩です。
岩石は大きく分けて火成岩、堆積岩、変成岩に分けられますが、そのどれもが最初はマグマオーシャンからできてきており、いったんできた岩石も、再度の溶融があったり、圧力を受けたりして、変成作用を受け続ける事になります。そういう意味では、現在の地球の岩石は全て変成岩という事になりそうです。それは、大いなる地球の物質循環の一環なのだろうと思います。
今日のコマチアイトは小町とは関係なく、さらに地球最初の石でもなさそうなのですが、非常に興味深い石である事には変わりありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/da/51986f2f1a1e8a7545fe611f6e71d07b.jpg)
これは、先日、出張販売をしてくださる石の問屋さんから仕入れた紫水晶の群晶です。それは数多くのクラスターの中にひとつだけ混ざっておりましたので、興味深く思い仕入れました。それほど高価なものではなかったので、軽い気持ちで選びましたが、後から、それをじっくり観察してみると、普通の紫水晶の群晶とは違って、奇妙なことに、そのほとんど全ての結晶が寝ているのです。変なものだと思いました。
普通の紫水晶は柱面が短く、それらは立っている事が多いと思います。紫水晶の結晶はほとんどがそのようなタイプだと思います。透明の水晶なら、細い両錐のものが、稀に、クラスターの中で寝て付いているものを見かける事があると思います。紫水晶の場合はなぜか細長いタイプのものが少数派で、そういう理由からなのか、結晶が寝ているものは珍しいと言えます。しかも、今回のものは、ほとんどの結晶が寝ています。そして、柱面が上を向いているせいか?妙にテカって見えるのです。奇妙な紫水晶だと思いました。
今回の仕入れではそれ一個しかなかったのですが、そのような奇妙なものが存在する、という事は、他にもあるはずだ、と思い、Webの画像検索で探してみました。ところが、そのような変なものは中々見つかりませんでした。そして、何度かキーワードを変えてみたりして画像検索を繰り返していると、ようやく1件だけ写真が見つかりました。それはどうもパワーストーン系の店のブログの写真でした。その事自体があまり面白くないと思いつつも、そのような変なものが他にもあったという事自体には、なぜか少し安心してしまいました。それは、そういうものもあり得る、という事です。
そうなると、それがどうして寝ているのか?という疑問が湧いてきます。何かの原因で、成長過程でそうなったのです。
その謎を解く一つのカギはその表面に残されております。最初の写真の左上の方に何か白い鉱物が付着しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/14/58e63901a50697e01541c56b9fca7659.jpg)
上の写真はその部分の拡大写真です。その白い鉱物はどうも方解石のように見えます。紫水晶と方解石の共生はよくあるパターンです。
その様を見ていると、一つの仮説が導き出されると思います。
それは紫水晶が結晶成長する時に、先にあったであろう方解石が紫水晶の成長を阻害したのであろう、と思われます。普通に成長するスペースを失ってしまった紫水晶は、やむを得ず寝てしまった、という過程があり、その後、何らかの理由で方解石は溶けてしまって、このような様が残ってしまった。白い方解石のカスのようなものはその残骸であろう、と言うようなストーリーです。
もし、このような仮説が正しいとしたら、これも一種の成長干渉(グロース・インターフェレンス)水晶と言えるものなのかもしれません。
今日も紫水晶で方解石という「見えないものを見る」想像でした。