ここに「産地不明」だった石がひとつあります。今日の写真はこれです。
この石は私が水晶のインクルージョンに興味があった頃にどこかのミネラルショーでゲットした水晶です。それほど印象が強く残っていなかったので、この石の事はほとんど忘れていました。
先日、「石の華」のオープン以来何度目かのご来店となるひとりのお客様がいらっしゃいました。いつものように店の中の石を物色し始めました。そして、水晶の棚の中に置いてあったひとつの石を取り出して、その石に入っている鉱物は何なのか?を聞いて来ました。私はその石の事を詳しく覚えていなかったので、「良くわかりませんが、その黒い針状結晶を見る限り、ショールトルマリンか角閃石の仲間かもしれません。」と言うような返事をしました。そして産地を尋ねられましたので、私は正直「産地不明」だと答えました。すると、そのお客さんは「何だか?雰囲気がパキスタンっぽい、と思います。」と言われ、持っていたスマホで何か検索し始めました。そして、「これに似ていませんか?」と言って画面を見せてくれました。私は「確かに似ていますね。」というような会話をしました。
その石はパキスタンのザギマウンテン産の水晶でした。現在はWeb上に世界中の様々な産地の石の写真情報が載っており、画像検索もできる事から、今回のような「産地不明」鉱物も比較的容易く特定する事ができます。さらに、ウェブ検索するとパワーストーン系のサイトが多かったものの、水晶にエジリンなどを包有する事も書いてありました。
どうもそれはザギマウンテン・クォーツと呼ばれているもので、恐らく、そのインクルージョンはエジリンだと思われます。それではっきりすっきりしました。
そのお客さんのお蔭で、その水晶の産地とインクルージョンの両方の正体を知る事ができました。
そして、フト思いました。今回はお客さんの指摘とインターネットの画像とWeb検索でその正体を知る事ができましたが、それと同じような判断は今後進化したAI(人工知能)の技術でも可能となるのではないか?
膨大なインターネットの情報とAI技術の進化は集団的英知なる知性を発達させるものと思われます。
今回はお客さんの経験的な勘がきっかけとなって石の正体を判別する事ができたのですが、コンピュータによって経験を蓄積し学習進化するAIは、今後、非常に役に立つ存在となるはずです。それは人間の勘ピュータよりももっともっと強力なものになってゆく予感がします。