ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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産地不明2

2016-01-29 10:06:33 | 日記・エッセイ・コラム
ここに「産地不明」だった石がひとつあります。今日の写真はこれです。



この石は私が水晶のインクルージョンに興味があった頃にどこかのミネラルショーでゲットした水晶です。それほど印象が強く残っていなかったので、この石の事はほとんど忘れていました。

先日、「石の華」のオープン以来何度目かのご来店となるひとりのお客様がいらっしゃいました。いつものように店の中の石を物色し始めました。そして、水晶の棚の中に置いてあったひとつの石を取り出して、その石に入っている鉱物は何なのか?を聞いて来ました。私はその石の事を詳しく覚えていなかったので、「良くわかりませんが、その黒い針状結晶を見る限り、ショールトルマリンか角閃石の仲間かもしれません。」と言うような返事をしました。そして産地を尋ねられましたので、私は正直「産地不明」だと答えました。すると、そのお客さんは「何だか?雰囲気がパキスタンっぽい、と思います。」と言われ、持っていたスマホで何か検索し始めました。そして、「これに似ていませんか?」と言って画面を見せてくれました。私は「確かに似ていますね。」というような会話をしました。

その石はパキスタンのザギマウンテン産の水晶でした。現在はWeb上に世界中の様々な産地の石の写真情報が載っており、画像検索もできる事から、今回のような「産地不明」鉱物も比較的容易く特定する事ができます。さらに、ウェブ検索するとパワーストーン系のサイトが多かったものの、水晶にエジリンなどを包有する事も書いてありました。

どうもそれはザギマウンテン・クォーツと呼ばれているもので、恐らく、そのインクルージョンはエジリンだと思われます。それではっきりすっきりしました。

そのお客さんのお蔭で、その水晶の産地とインクルージョンの両方の正体を知る事ができました。

そして、フト思いました。今回はお客さんの指摘とインターネットの画像とWeb検索でその正体を知る事ができましたが、それと同じような判断は今後進化したAI(人工知能)の技術でも可能となるのではないか?

膨大なインターネットの情報とAI技術の進化は集団的英知なる知性を発達させるものと思われます。

今回はお客さんの経験的な勘がきっかけとなって石の正体を判別する事ができたのですが、コンピュータによって経験を蓄積し学習進化するAIは、今後、非常に役に立つ存在となるはずです。それは人間の勘ピュータよりももっともっと強力なものになってゆく予感がします。
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産地不明

2016-01-28 13:00:46 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「産地不明」です。久しぶりのブログ更新となります。このところ「書かない癖」がついてしまいました。

さて、「石の華」にも「産地不明」の鉱物標本がいくつかあります。鉱物標本の世界の価値観では「産地不明」は評価を落としますので、そのようなものには比較的安価な値段設定をしております。(「産地不明」のものは価値はゼロという意見もあるようですが、私は必ずしもそうだとは思いません。「産地不明」とはそのようになってしまった何らかの原因があるはずで、石そのものの価値とは関係ありません。価値がゼロというのは標本的な価値観しか認めないという偏狭な考えで、本来、石そのものは人間の価値観からは独立しております。)

「産地不明」となっている石は最初から「産地不明」だった訳ではありません。石は自然界から来たものなので、必ず産地があるはずです。「産地不明」になってしまったのは、その石がどのような経緯で流通してきたのか、という事に関わっていると思います。例えば、水石関係やパワーストーン系の人の価値観ではどうも「産地不明」にはそれほどこだわらないという意識があるような気がします。そのような価値観を通じて流通してきた石は「産地不明」となってしまいます。それから、古い標本などで、標本ラベルが紛失してしまって「産地不明」となってしまったものもあります。さらに、外国産鉱物ではその産出国の価値観によって産地情報を重要視していなかった場合などもあると思います。それらの何らかの理由で「産地不明」となっている石は意外と多いものです。

ただし、「産地不明」の石は今後も永遠に「産地不明」のままとは限りません。「産地不明」となっているのは産地が不明となっているだけであって、後に産地がわかる事があります。

「石の華」の常連さんであるOさんは、これまでにいくつかの「産地不明」の石の産地を突き止めました。その方法は二つの標本を比較検討する事によって、それらの結晶の色や形などや母岩部分の特徴から同一産地である可能性が高いと推定しました。それは「石の華」の石達を知り尽くしているからでもあって、これまでに店主の私も気づいていなかったケースが多々ありました。それらは、パソコンやスマホでのWeb情報で再確認でき、信頼性の高い産地情報となりました。このようなケースは非常にうれしい事です。

本来、石には産地があった訳ですから、「産地不明」とはその関係する側の都合で「産地不明」となっているだけであって、その石の産地がわかる事は我々にとっても石にとっても良かった事だと思います。

そういえば、グーグル開発ソフト「ディープマインド」の人工知能が囲碁のプロ棋士を破ったというニュースがありました。それにはやみくもに計算するのをやめ、膨大なデータを学習して判断能力を高めるAIの「ディープラーニング」と呼ばれる技術を組み合わせているらしく、「勝ちにつながる形」を覚えさせたりしているそうです。その技術は病気の画像診断など状況判断が必要な場面で応用できるそうです。という事は比較的近い未来には鉱物標本で「産地不明」の鉱物でも産地を特定する事にも応用可能だと思います。

そういう意味では「産地不明」とは今現在の状態であって、将来的にはAIの力を借りて、その本来あった産地を特定する事ができる時代が来てもおかしくない、という事です。

今後のAIの進化に期待したいと思います。

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積雪

2016-01-18 11:51:54 | 日記・エッセイ・コラム
現在の金沢駅周辺の積雪は0cmです。今朝のTVでは東京や太平洋側の積雪のニュースをやっておりました。早くも南岸低気圧ですか。何か変です。本来雪国のはずの金沢に雪がないのです。そしてこの冬は金沢では今までのところ本格的な積雪がありません。これも地球温暖化とスーパーエルニーニョの影響なのでしょうか?天気予報では明日から大雪になると言っておりましたが、どうしてもそんな気がしません。

そう言えば、この冬は本格的なブリ起こし(雷の事)がありません。「のと寒ぶりまつり」も中止になったそうです。日本海の海水温も上昇しているようで、死滅回遊魚と言われる暖海性の魚も越冬しているという話もあります。また、昨年11月に富山湾でリュウグウノツカイという深海魚が捕獲されたというニュースも記憶に新しいことです。

地球の表面では海水温と気候は密接に関係しており、この冬の異常もそのような現象の現れなのだと思います。

思うに、太古からの地球史を考えると、気象変動は当たり前の事で地震や火山噴火等の現象(プレート移動に因る)も熱の対流現象として捉えられると思います。もっというと地球史とは熱の冷却現象の歴史だという事も出来ると思います。

そのように地球史の事を思うと、この冬の暖冬現象は異常でも何でもない小さなブレに過ぎないのかもしれません。
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宙に浮く

2016-01-13 11:44:38 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「宙に浮く」です。「宙に浮く」と言っても、「中途半端になる」という意味ではなく、本来の意味そのもの「空中に浮く」という事です。

先日、常連客のKさんが面白いディスプレイケースを持って来てくれました。それは宝石ルースなどを透明な特殊フィルムで包み込んで飾るディスプレイケースで、まるで宙に浮いているような面白みがあります。Kさんは店にあったキュービックジルコニアのルースをそれに入れて、店にある商品棚のKさん専用のスペースに飾りました。それが今日の写真です。写真ではどうしてもフィルムに光の反射が当たり込んで透明感がわかりにくいのですが、肉眼的には宙に浮いているように見えます。



それは普通のルースケースに入れてあるよりも、はるかに存在感が出ていると思います。それを回転するソーラー台に乗せると、地球の重力を無視して、あたかも宙に浮いて回っているように見えます。非常に面白いと思います。

それを見ていて、その昔見た超電導のマイスナー効果で、宙に浮いてグルグル回っていた磁石の映像を思い出しました。そのような磁気浮上の映像は映画「アバター」の中でもアンオブタニウムの鉱石標本が宙に浮いているシーンで見ました。(アンオブタニウムとはあり得ない架空物質の事で、地底探検映画「ザ・コア」でも違う物質として登場していました。)

「宙に浮く」事は、日常的にはあり得ない事で、地球の重力の影響を受けている為に、そのような不思議な現象は普通では起こりえません。無重力の宇宙空間では当たり前の現象なのかもしれませんが、地球の重力に縛られている我々の日常ではあり得ません。だからこそ、不思議で面白いのだと思います。

Kさんの展示コーナーにあるキュービックジルコニアは小さいものなので、今度は「石の華」の店の飾り用として大型のものを展示しようと思っております。
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地底

2016-01-12 13:45:59 | 日記・エッセイ・コラム
今日は今年2回目のブログ更新となります。このブログは基本的に「石の華」の店内でお客様のいない店番中に書いていますので、新年から中々ゆっくりと書けない日が続いておりました。うれしい事です。今日は久しぶりの更新となります。

今日は「地底」です。昨年末に興味深い本に出会いました。それは「地底-地球深部探検の歴史」(築地書館 デイビッド・ホワイトハウス著 江口あとか訳)です。私は新年からお客様のいない時間に店内でその本を読んでおりました。その一冊の本を読み終えるまでに何度も中断しながら読んできましたが、先ほどようやく読み終えました。読後の率直な感想は、読み応えがあり、満足感がありました。話題が豊富にあって、面白かったと思います。

その表紙はアタナシウス・キルヒャーの著書「地下世界」にある地球の中心の地図となっており、興味を惹かれましたし、ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」から150年目に書かれたというタイミングも読書欲を刺激されたと思います。

その内容は想像上のカプセルに乗って地表から出発し、地球の中心まで旅をする、といったものなのですが、地球内部の構造がただ直線的に語られるわけではなく、科学的発見に関わった人々がどのように発見したかと言う物語として展開しています。現在の地球科学的な知見は過去の数多くの人々の数多くのできごとよって成り立っているという事が良くわかりました。それは大河ドラマを見ているようでもあって、「地底」をテーマとした歴史ドラマができるような気がしました。実際にNHKかBBCあたりで制作してもらいたいものです。(著者は天文学者だったらしいので、「コズミック フロント」のような番組が最適かもしれません。)

「地底」では興味深かった地球のコアへの旅のあとは他の惑星や系外惑星へ、さらに地球の未来へと広がっておりました。それらの科学的事実に基いた想像は果てしなく広がっていきます。

最後の章では「科学というものは間違いからできているものなんだよ。だが、それはおかしてもいい間違いなんだ。そうした間違いによってだんだん真理に導かれるのだから」というリンデンブロック教授の言葉が紹介されています。地球史観は数々の新発見によって少しずつ事実に近づいてきた事を再認識する事ができました。

今回の地底旅行は、書きかけの物語で、永遠に書き換えられる果てしない物語である、という事を再認識しました。


地底 地球深部探求の歴史
デイビッド ホワイトハウス,David Whitehouse
築地書館




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