ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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葡萄石

2015-01-27 13:49:32 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「葡萄石」です。このブログでは「葡萄石」は何度か登場していますが、タイトルは初登場となります。

実は昨日、日帰りで関東方面に行って参りました。目的はある重要な鉱物コレクション(現在、非公開)を見る為で、我々夫婦共通のある知人を介して特別に見学させてもらいました。そこの写真は撮ってきたのですが、非公開の場所でもありますので、今日は非公開で写真なしです。

そこは日本を代表する重要な鉱物コレクションを展示してある場所です。そこには国宝級といっても過言ではない標本の数々がきちんと展示されておりました。然るべきものが然るべきところにちゃんとありました。安心しました。日本の鉱物のレベルは決して外国には劣っておりません。それらは現在は非公開となっておりますが、いつの日か?公開される事を祈っております。

さて、「葡萄石」です。昨日はものすごいものを一度にたくさん見ましたので、思わずテンションが上がってしまったのですが、それらの中でも特に印象深く思ったものを冷静になってひとつだけ話題にしたいと思います。

それは江戸時代の木内石亭の「葡萄石」です。先日、「正夢」(2015.01.04)の時に少し触れたのですが、それは木内石亭の正夢に出てきたという「葡萄石」です。その葡萄石の事はこのブログの「石の夢」(2012.05.10)でも話題にしておりました。それは鉱物の「葡萄石」なのかは、やや怪しいものなのですが、見た目は葡萄の粒が房状に集合している石でした。はっきりしませんが、作り物のようにも見えます。私は過去に何かの記事でその「雲根志」に出てくる「葡萄石」の写真を見た事がありましたので、昨日見たものが木内石亭のお気に入りだった「葡萄石」だとすぐわかりました。まさか!その現物を見れるとは思ってもいなかったので、感慨深いものがありました。そういう歴史的に重要なものもあるところにはあったのです。

その鉱物コレクションは標本そのものの価値と歴史的な価値を兼ね備えた日本のお宝だと思います。しっかりと残っていて良かったと思います。そこには国産鉱物を代表する標本の数々と石川県人としてもうれしい石川県産の古典的標本がたくさんありました。

伝説的な「葡萄石」とハイレベルな国産鉱物の数々、特に石川県産鉱物標本の数々との対面、充実した時間を過ごせました。大収穫だったと思います。紹介して下さったTさん、本当にありがとうございました。
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2015-01-25 14:55:20 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「帯」です。「帯」と言っても、このブログは石のブログなので、もちろん着物の「帯」の事ではありません。

念の為、このブログ内検索で「帯」という言葉で検索してみると、多くの記事が出て来ましたが、「帯」というタイトルは初めてだと思います。(gooブログのブログ内検索では検索件数やタイトルリストを表示できません。)

どうして「帯」という言葉がたくさん出てくるのかと言うと、地学的に造山帯とか地溝帯といった言葉に「帯」という文字が使われている事や、他にも気候帯や周波数帯や時間帯やといった言葉にも「帯」という文字が使われていたり、本の「帯」のような使い方をしていたり、どうも日常的に意識することなく「帯」という言葉を使っているようです。

「帯」とはある幅を持ったおび状のものの事だと思います。意識して「帯」を探してみると意外に身近なところに「帯」がある事に気づくと思います。

さて、一昨日、常連のKさんが面白いものを持ってきました。それは近所にある工芸品のギャラリーで購入してきたと言うキューブ状のガラスのアクセサリーでした。それは小さなキューブ状のガラスを積層・研磨の技法で8個キューブ状に貼り合わせたもので、その張り合わせの面に構造色的な虹色が反射して非常に美しいものでした。その魅力的なアクセサリーはオパールやレインボーガーネット好きのKさんが喜びそうなもので、私も一目ぼれしてしまいました。

そのアクセサリーを見ていると、あるオプティカル・カルサイトに似ているような気がしました。



上の写真がその方解石(カルサイト)です。透明感が高く、そのクリアな中にレインボーが見えます。その美しいレインボーは「帯」のように平行に入っています。その何とも言えない色合いがKさんのガラスアクセサリーの色合いに似ているのです。

方解石は劈開が完全で、その内なる劈開面にそってレインボーが見えるのです。それは透明ガラスの積層面に現れるレインボーに似ています。そのレインボーが「帯」のように見えるのです。

そのオプテイカル・カルサイトを見ていると、レインボーではないのですが、その「帯」のように神秘的なシラーが出る石を連想してしまいました。



上の写真がそのハイパーシーンのタンブルです。ハイパーシーンとはエンスタタイト(頑火輝石)とフェロシライト(鉄珪輝石)の中間的な存在の石の事です。その「帯」のような部分はシラーが美しく、見る角度によってそれは変化します。

そのハイパーシーンを見ていると、タイガーアイのタンブルを連想してしまいました。



上の写真がそのタイガーアイ(虎目石)です。これも先のハイパーシーンに似ていて「帯」のようにシラーがでます。そのシラーはシャトヤンシー(Chatoyancy)効果と言います。シャトヤンシー効果は猫目効果(キャッツアイ効果)とも呼ばれ、トラはネコ科に属する事に繋がっています。また、複数の「帯」は「縞」と呼びます。縞模様のシャトヤンシーのシャはフランス語の猫、Chat (シャと発音)に繋がっています。

今日は石の特殊効果からひとり連想ゲームをしてみました。
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鉱物の本2

2015-01-20 11:50:12 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「鉱物の本2」です。このブログでは「鉱物の本」の事は何度も書いて来ましたし、「鉱物の本」というタイトルも2012.07.30に一度使っておりました。それで、今日は「鉱物の本2」となります。

昨年は多くの鉱物の本が出版されたと思います。ただ、残念ながら鉱物本好きの私にとって十分に満足できた本はなかったような気がしております。それと昨年の秋以降、これといった「鉱物の本」の新刊が出ていないように思えます。残念な事です。もしかすると、静かなブームが訪れていたと思われた鉱物ブームも終焉を迎えているのでしょうか?それはどうだかわかりません。

そんな中、発刊を1年前から待ち望んでいた「鉱物の本」がようやく今週の木曜日に発売されます。その「鉱物の本」とは「週刊 地球46億年の旅 49」(朝日新聞出版)です。その号のテーマは「鉱物と出会った人類」となっており、長い地球史の中で、ようやく「鉱物」そのものが主題となるようです。その週刊誌は昨年発刊され毎週発行されておりましたが、いよいよ50号で終わります。私は最初の方の2.3号は買っておりましたが、途中で止めました。それでも49号の鉱物特集号は待ち望んでおりました。先週号の48号には49号の予告が載っておりましたので、それを見る限り期待できそうです。今から楽しみです。

それから、もうひとつ、今から楽しみにしている鉱物の本があります。それは「不思議で美しい石の図鑑」の山田英春さんの新刊本です。それは石の模様の美しさを大きく見せることに特化した書籍になるそうで、5月末までに、創元社から刊行予定だそうです。楽しみです。

私は、本にしろ映画にしろ、画面サイズが大切だと思っております。前にも一度書いた事があると思いますが、例えば、映画は小さな画面では見た事になりません。私がスマホを止めた理由のひとつはそれです。本の場合も同じです。例えば、「世界でいちばん美しい洞窟・・・」といったたぐいの本が出版されましたが、壮大な洞窟はその本のようなサイズでは全く魅力を感じないのです。洞窟の迫力を出すためにはある程度の写真の大きさが必要だと思います。小さな写真ではイマジネーションが広がらないのです。せっかくの洞窟写真の魅力を損ないます。そういう意味で石の模様の美しさを大きく見せる事には魅せられます。その山田英春さんの本は期待の一冊です。

今年は他にどんな「鉱物の本」が出てくるのでしょうか?当たり年になる事を期待したいと思います。


週刊 地球46億年の旅 2015年 2/1号 [分冊百科]
クリエーター情報なし
朝日新聞出版
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グロッタ2

2015-01-19 11:08:36 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「グロッタ2」です。一昨日の続きです。

一昨日のブログを書き終えた後に、店内にもうひとつグロッタ(人工洞窟)を思わせるものがあった事に気づきました。それが下の写真です。








天井の穴から何か幾何学的な虹色の金属結晶がのぞいております。その正体はビスマスの結晶です。これは石華工匠さんが製作したビスマス人工結晶の晶洞です。ビスマス結晶は分離されたものならよく見かける事があるとは思いますが、このように鍋の形態が残っているものを見る機会は少ないと思います。まるで鉱物の産状を見ているかのようです。これを見ているとこれも一種のグロッタではないかと思ってしまいました。グロッタのミニチュアと言うべきでしょうか?これを見ているとビスマスを溶かした鍋の内壁から人工結晶が成長していった様子がうかがえます。そして、見ようによってはグロッタのミニチュア版であるように思えてきます。

人工結晶の話題は過去に何度か書いたと思いますが、このビスマス人工結晶は初登場だと思います。

人工結晶と言うと、もうひとつ、人工胆礬(Chalcanthite カルカンサイト)の存在を忘れてはなりません。その硫酸銅の結晶のブルーの鮮やかさは非常に美しいので、それが天然のものではないとしても、安価なので、お値段以上に人気が高いと言えます。その写真を撮ろうと思いましたが、残念ながら、全て売れてしまって現在店には残っておりません。

その人工胆礬を集合住宅の1DKの部屋全体に結晶させた芸術作品があった事をご存知でしょうか?その驚異の部屋はロンドンのイスラム人街にあるようです。そこは青の洞窟(グロッタアズーラ Grotta Azzurra)とも言うべき雰囲気のある芸術家がつくった人工的な芸術作品なのです。そもそも芸術作品とは人がつくったものなので本質的に人工的なものです。ただ、その作品は作品と呼ぶにはあまりにもスケールが大きく、部屋全体が人工胆礬の結晶に覆われています。それは結晶好きで洞窟好きには無視できないとんでもない作品だと思います。その作品の理念や製作工程は一冊の「SEIZURE」(ROGER HIORNS 2008年)という洋書に載っております。その本を取り寄せて、さらっと読んでみると、それは作品そのものよりもその製作過程のパフォーマンスが作品であり、そのアイデアがコンセプチャルアートなのではないか?と思えて来ました。写真を見る限り、個々の人工胆礬の結晶は美しいのですが、その全体像は暗く不気味な感じがします。その空間に実際に入っていないので本当のところはわからないのですが、その印象は本来神聖な空間であるはずのグロッタと言うよりも、グロテスクな空間と言った印象が強いのです。そう言えば、グロテスクの語源はグロッタから来ていますので、元々そのような意図があったのかも知れません。

人工結晶を作品に取り入れる芸術家は日本にもいます。小林健二、吉岡徳人、等々、彼らの作品も人工結晶を自らの作品に取り入れておりました。物質の結晶化作用は芸術作品に成り得るのでしょうか?何となく微妙な感じがします。

「グロッタ」に関して、天然と人工、結晶化と芸術について想いを巡らせてみました。

追記:人工胆礬の画像がみつかりました。





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グロッタ

2015-01-17 12:33:00 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「グロッタ」です。「グロッタ」とは人工洞窟の事です。それはヨーロッパの庭園などに造られています。その起源は古代ギリシア・ローマ時代にさかのぼり、ルネサンス期に再度復活し、神々が宿る場所として神聖なものとされてたようです。「グロッタ」は洞窟好きにとっては気になる存在です。バイエルン王・ルートヴィヒⅡ世が造ったノイシュヴァンシュタイン城の中にあるヴィーナスの洞窟を模した「グロッタ」も有名です。庭園や城の中にある「グロッタ」、残念ながら私はそれらを見た事がないのですが、いつか実際に見てみたいと思っております。

さて、実際の「グロッタ」ではないのですが、「グロッタ」を思わせる小さい人工の晶洞(ジオード)があります。










上の写真はモロッコ産?製?の方鉛鉱の晶洞です。これを見た瞬間に、すぐに天然のものでは無い事がわかります。恐らく、水晶の晶洞に方鉛鉱を吹き付けた人工物だと思われます。モロッコでは偽化石だけではなく、このような天然のものに見せかけたものが多く流通しているらしく、注意が必要だと思われます。

ただ、この人工的な方鉛鉱晶洞を見ていると、それがフェイクだとわかりつつも、それが偽物というネガティブなものとして排除してしまうにはもったいない気がしてきます。それは人工的なものなのですが、ある意味「グロッタ」のようなもの、として捉えて良いような気がしてきます。天然の水晶の晶洞も魅力的なのですが、方鉛鉱の晶洞も見ようによっては魅力的に見えます。もしそのような天然のものが存在するならば、是非、見てみたいものだと思います。

「グロッタ」は天然の洞窟を人工的に模したものです。この人工的な方鉛鉱の晶洞の元になる天然の方鉛鉱の晶洞!考えただけでもワクワクしてしまいます。方鉛鉱だけではなく、黄鉄鉱の晶洞も見てみたくなってきました。

当然の事ながら、天然洞窟には天然ならではの魅力があると思います。「グロッタ」にも人工洞窟ならではの魅力があります。天然の水晶の晶洞には天然ならではの魅力があり、人工の方鉛鉱の晶洞にもそれなりの魅力があると思います。

今日は「グロッタ」から方鉛鉱の人工晶洞について想いを巡らせてみました。


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