今日は「全点周回路」です。「全点周回路」とは、正多角形の頂点間を一筆書きで結ぶことにより、全ての頂点を通過し、最後にまた始めに戻るという形で作られている図形の事です。
昨年の秋に大阪に行く用事があり、その際に、以前から行きたかった日本最大の書店であるMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店に立ち寄りました。金沢住いが長くなると、都会に行くと、どうしても大きな書店に行きたくなります。金沢規模の地方都市では大型書店がないので、本好きにとっては、そのような大型書店は、必ず行く場所なのです。その書店の専門書の棚で、「全点周回路」(著者:クリスカ 発行:同人集合 暗黒通信団 2018年8月12日初版 )を見つけました。この種の本は金沢の書店では買えませんので、衝動買いしてしまいました。
その本は正三角形から正十角形までの全点周回路を羅列しただけの本です。そのような一見無意味な本は、図形に興味の無い人にとってはつまらない本だと思いますが、鉱物と同じように幾何学的な図形に興味を持っている私のような人間にとっては知的好奇心を刺激する魅力的な本なのです。
その本は読むための本ではありません。私はその本のページをめくりながら、美しい秩序で、花柄になっているものを無意識的に探しました。最初に、1ページには正三角形から正七角形までの図形が羅列されており、その中から4つの図形を選びました。それらにオレンジ色のマーカーを付けました。
上の写真はそれです。
1ページから2ページにかけては正八角形の場合ですが、一つだけ見つかりました。
正九角形は2ページの後半から始まりますが、このへんからその図形の数は幾何級数的に増えるので、中々、美しい花模様は見つかりません。
10ページの後半部分で、ようやく二つ見つかりました。
正十角形になると、その数は9468になり、それらの大半は無秩序のように見えるものばかりで、花模様になるのは61ページに一つとこの本の最終ページとなる72頁に一つ見つかりました。
このような花模様の出現は極めて稀である事がわかります。
どうでしょうか?私は無意識的に花模様の図形を探した訳ですが、このような作業は、鉱物標本を選ぶ際の作業に似ているような気がしております。
自然界の岩石や鉱物は自然の法則に則って秩序ある姿になっております。ただ、標本にしたくなるようなものは極稀です。全点周回路の図形もある決まりに従って秩序ある形になっているはずですが、それらのほとんどの形状はあまり面白い形ではありません。それらの中のごく少数のものだけが美しいと思われる形になるのです。両者には類似性があるような気がしております。
鉱物の世界でも美しい結晶は稀ですし、自然界にある大半の岩石や鉱物は、それらの大半の図形のように面白くないものばかりなのです。ましてや、花模様の結晶は非常に稀有な存在なのです。
そのように考えると「石の華」の石の花(結晶が花のような石)とはそのようにして選ばれてきた貴重なものばかりなのです。
「全点周回路」を見ていると、つい、そんな風に思ってしまいました。