フェナカイトやペイナイトも希少性の高い宝石鉱物ですが、究極の宝石鉱物としてアレキサンドライトの存在を忘れてはなりません。
アレキサンドライトは変色性を示すクリソベリル(金緑石)の変種ですが、光源によってカラーチェンジするだけではなく、結晶形態的に交差三連双晶になるという非常に魅力的な鉱物です。
上の写真はロシアのMalischevo,Ural産のアレキサンドライトの原石です。
これの面白いところは、三連双晶したものが二つ貫入接合しているところです。
その接合角度も気になるところです。何か?意味のある合体・双晶?なのでしょうか?このような標本は他にはあまり見た事がありません。
白色のLEDライトで照らすと、緑色に透けて見えます。
長波紫外線ライトで照らすと、赤色に変色します。
さらに白熱光で照らすと、薄紫色に透けて見えます。
このように変色性があり、結晶形態も特殊である、という鉱物の色と形の面白さを兼ね備えた魅力があると思います。
このアレキサンドライトの産地はエメラルドの鉱山でもあって、まさに宝の山のような鉱山なのですが、ロシア産というところが気になります。
ひとつ前のブログ「フェナカイトの錐面」の続編は、すぐには書けません。それは予想以上の難問になっているからで、現在、然るべき方が取り組んでおられますので、それが何であるか解明されるまで、お待ち下さい。
さて、そのフェナカイトはミャンマー産でしたが、同じモゴック産の鉱物で、非常に興味深いものがペイナイトです。
上の写真がそれです。
これは縦が1cm足らずの小さな結晶です。地味な褐色の母岩部分がペイナイトで、ピンク色をした小さな粒状のものがルビーです。
ルビーは長波紫外線で赤く蛍光します。母岩のペイナイトも紫色に蛍光しているように見えます。
モゴックはルビーの最高級ピジョン・ブラッドを産することで有名ですが、他にもサファイアやスピネルなどの宝石鉱物の宝庫です。そして、それらの中でも別格的存在が、やはり、ペイナイトだと思います。それは、存在量が極めて少ないからです。
今回の原石は、予期せぬ偶然で、「石の華」に回ってきましたが、「石の華」でも過去に一度だけ(小さな宝石ルースでした。)しか扱った事がありません。
ところで、ミャンマーは内戦で、悲しい状態が続いております。宝石鉱物の流通はどうなっているのでしょうか?
ロシア、アフガニスタン、コロンビア、等々、素晴らしい鉱物の産地は治安が悪い傾向があります。鉱物の流通に影響しないか心配です。
先ほど、今日のブログ用にミャンマーのモゴック産のフェナカイトの写真を撮っていると、その錐面の結晶面に面白い構造を発見しました。
上の写真がそれです。
どうでしょうか?六つの錐面の端の真ん中に切れ目が入っており、それぞれがハート形になっているように見えます。見ようによっては水晶の日本式双晶のようにも見えます。
これは何でしょうか?
モゴック産のフェナカイトは柱面が1cmくらいの小さなものが多く、その錐面は数ミリくらいの小さなものですが、今回、そのマクロ撮影をしていてその形に気付いてしまいました。
実は、もう一つ、フェナカイトの結晶があり、そちらの方はそうなっていませんでした。
どうも個体差があるようです。
錐面に現れる双晶のような形態!何か面白そうな予感がします。
昨日、あるお客さんから聞きなれない言葉を聞きました。
店内にあるルースケースの中にあったサファイアを見て、「このルースにはカラーバンドが見えますね!」と言って、そのサファイアを購入されました。
私は、何の事やら、わからず、そのルースを良く見ると、確かにブルーの筋のようなものが見えました。カラーバンドとはその筋の事を指しており、どうもそれは、サファイアの結晶成長の際の成長痕の事のようでした。
サファイアには成長痕の累帯構造が現れるものがありますが、宝石用語では、それをカラーバンドと言うらしいのです。
そのお客さんは、そのカラーバンドがお好きらしく、水晶でも複数のファントムが入ったものがお好みだそうで、そこに鉱物結晶の美を感じるようでした。
その感覚は、私も共感するところがあります。ただ、店にあったサファイアのルースにもそのようなカラーバンドが入っていたとは知りませんでした。
私は、まだ出していなかったゴールドシーンサファイアのルースを奥から取り出して、それを見せました。それには金色の六角形の累帯構造が現れておりました。そのお客さんは、それを欲しがりましたので、安価な価格でお譲りしました。同じような価値観を共有していたからです。
宝石のカラーバンドではありませんが、ファントム水晶以外にもジルコンや柘榴石や蛍石などの鉱物の中にも結晶成長痕の累帯構造が現れているものがあります。
そうそう、久美浜のそろばん玉石の中には、非常にわかり易い状態で累帯構造が出ているものがあります。
上の写真がそれです。
まるで、玉ねぎの皮のような感じですが、玉ねぎが内側から外側へ成長するのに対して、そろばん玉石の結晶成長のメカニズムは外側の内壁から内側へと成長するのでしょうか?何となく不思議な感じがします。
それは、カラーバンドとは違うような気もします。・・・?
いずれにせよ、今回は宝石用語のカラーバンドという新しい言葉を覚えてしまいました。
先日、山田滋夫さんの「問わず語り・私の鉱物じてん」を読んでいると、石川県小松市の菩提墓地公園造成地産の玉髄の写真の真下に非常に興味深い写真が載っておりました。その写真とは、福島県宝坂産の傘小僧の写真です。
傘小僧とは、言いえて妙、球顆流紋岩の隙間にあるそろばん玉石の上半分だけ付いた球顆の事で、愛嬌のある命名だと思いました。
それに似たものは、「石の華」店内にもありました。
上の写真がそれです。
これは、新潟県東蒲原郡阿賀野町中ノ沢産の球顆流紋岩ですが、そろばん玉石が付いた傘小僧と呼べるものだと思いました。ただ、こちらのものは直径が約8cm程あり、サイズ的に、小僧という命名が相応しくないかもしれません。
それにしても、シリカ鉱物は面白いと思います。シリカ鉱物には鉱物の魅力(その色や形のバリエーションの多さ)が詰まっています。
そうそう、もうひとつ、非常に面白いそろばん玉石があります。
上の写真がそれです。どうでしょうか?これは、そろばん玉石と玉髄の合体したものですが、木製の台座が似合っています。
私には菅笠を被った武士のように見えます。まるでゲーム「ゴーストオブツシマ」に出てくる菅笠衆のように見えてきます。
鉱物趣味の中にも「見立て」があっても良い、というような気がしております。