今日は「三角形」です。このブログでは過去に「五角形」、「六角形」、「七角形」、「八角形」というタイトルで書いた事がありましたが、意外な事に「三角形」というタイトルは初めてとなります。
今日の写真はこれです。
これは天竜川だったか姫川だったか?忘れてしまいましたが、どちらかの河原で拾った石です。川で拾ったと言っても私の子供の頃の事ではなく、今から5、6年前位の「石の華」を始める前に拾った石だと思います。(これは売り物ではありません。)岩石名としては緑色片岩で、日本では三波川変成帯という中央構造線の外帯に接する変成岩帯で広く分布している石です。それは石川県庁舎の正面にある「石川県庁」という文字が彫り込んであるあの有名な石碑と同じ岩石です。また、伊勢の二見浦の夫婦岩と同じ岩石でもあり、石材としては伊勢神宮の内宮直前の石階段にも使われており、岩石的にはそれほど珍しい石ではありません。
私がこの石を拾ったのは岩石的に珍しいからではありません。その理由はその形状からです。それを河原で見つけた時はその石の存在感は圧倒的でした。他の石が不定形に丸みを帯びたものが多い中で、この石だけが美しい正三角形をしていたのです。それは一辺が約6cm、川石らしくやや丸みを帯びていますが、それを手に取ると妙に馴染んで、私は思わず拾ってしまいました。
このような「シンプルなかたち」の石を見つけたなら、建築家ル・コルビュジエなら間違いなく同じように拾ったであろう、と思います。恐らく、バックミンスター・フラーやブルーノ・ムナーリのような「三角形」に特別な感情を抱いていたであろう人達も同じように拾ってしまうであろう、と思います。
三角形、特に正三角形にはそのシンプルな形状に特別な美しさがあり、また特別な意味が隠されています。それはミクロの結晶世界からマクロな宇宙の世界に至るまで共通している根源的なカタチなのです。
上の写真はロシアのダルネゴルクス産の黄銅鉱の結晶です。その山の等高線のようにも見える正三角形の結晶丘の雰囲気がたまりません。鉱物好き、特に結晶鉱物好きはその規則正しい階段状の形状に反応してしまうようです。
鉱物のこのような正三角形は肉眼サイズだけではなく、イオンサイズの結晶構造にも正四面体や正八面体の一面のカタチとして現れます。また、長石グループや柘榴石グループの連続固溶体の分類概念図にも正三角形が使われるなど、鉱物の理解には欠かせないカタチだと思います。
それから、鉱物的なミクロよりもさらに小さいクォークの世界でもクォーク3種類1組で「グルーオン」と呼ばれる強い力によって正三角形を作ってクォーク同士が結びついているようです。どうも「三角形」は物質の基本図形となっているようです。
さらに宇宙的なマクロへ視点を移しますと、宇宙の果てを解き明かすためのキーワードは「三角形」だと言われます。先日放送していたNHK-Eテレの「サイエンスZERO」(徹底解説!?“宇宙の果て”に迫る!)では、宇宙に「三角形」を描く事で、宇宙の果てを知る事ができると、説明しておりました。その検証の結果は宇宙の果ては無くどこまでも無限に広がっている!という結果でした。ただ、そこでは数学的に無限であると考える、という事らしく、宇宙全体のカタチは不可知だとしておりました。
そう言えば、数学的な無限には濃度の違いがある事が知られており、それを見出したゲオルグ・カントールの連続体仮説は通常の数学の体系からは「証明も反証もできない」ことが証明されている、そうなので、無限はそう簡単なテーマではありません。無限はイメージする事も難しく、考えるのもやっかいなテーマだと思います。
「三角形」とは最も「シンプルなかたち」であり、物質的にも基本図形となっているようですが、宇宙の事を考えると無限というやっかいなテーマに繋がっていて、「知の限界」を知らしめる特別なカタチなのだろうと思います。