上の写真は一昨日いらっしゃったお客さんNさんがしていたカコクセナイトinアメジストのペンダントです。Nさんは初めてのご来店でしたが、実はお買い物は二度目で、最初は先日ご来店の友人Nさんの電話情報で水晶の日本式双晶を友人Nさんに頼んで買ったのでした。
Nさんのペンダントを見た瞬間、そのペンダントの写真を見た事を思い出しました。それもそのはず、Nさんのいらっしゃった直前までそのペンダントの作者であるUさんがいらっしゃっていて、そのペンダントの写真が写っているハガキを頂いていたのです。
そのハガキには六つのアクセサリーの写真が写っていますが、私は特にそのペンダントの説明をUさんから聞いており、記憶に残っていました。
Nさんにそのハガキを見せて、「これですか?」と尋ねると、Nさんも驚き「そうです!」とおっしゃいました。そしてUさんに「会いたかった。」ともおっしゃいました。
面白い、偶然とすれ違い、だと思いました。
Uさんは「seed-石物語。」というブログを書いている石の創作家でアーティストです。石の華には昨年開店してまもない頃いらっしゃっていただいていたと思います。
Nさんのそのカコクセナイトinアメジストには「石の声」という名前が付いています。
「石の声」とは面白く、意味深い名前だと思います。「石の如くに黙す」などといわれるように、石は声なきものの代表というべきものです。その声なきはずの石が声を発しているのです。
世の中には「石の声」を聴ける人がいるようです。Uさんもそのような能力を持ったひとりのようです。その能力にはスピリチュアルなイマジネーションが必要なようです。残念ながら、私にはまだそのような能力はないようです。
世の中には「石の声」を聴こうとしている、もうひとつ別の人たちがいます。その人たちは科学という手法を用いて「石の声」を聴こうとしています。こちらの「石の声」には面白い話題が沢山あります。
ひとつだけ挙げるとすると、炭素質コンドライトの「石の声」でしょうか。このブログでも一度出した事があったと思いますが、その隕石にはプレソーラーグレインという太陽系誕生前の粒子が混ざっている事が分かっています。そのプレソーラーグレインには人工鉱物の話題の時に出した炭化ケイ素やダイアモンドやグラファイトが混ざっていました。特に炭化ケイソに関しては起源が違う4種類のものが混ざっており、それぞれ別の超新星の名残だろうと考えられ、中には起源不明のものもあるそうです。何と!宇宙的なロマンでしょうか!
隕石の「石の声」にはロマンが詰まっていると思います。そういう意味で隕石は特別な石なのだと思います。
人工結晶に続き、今日は人造宝石です。
皆さんはイイモリ・ストンをご存知でしょうか?
京セラの「クレサンベール」、再結晶宝石であるイナモリストーンの事ではありません。
それは金沢出身の放射性鉱物研究の先達、飯盛里安博士が研究・製造された人造宝石の事です。
これらは飯盛里安博士が造ったビクトリア・ストンです。石英を主原料として長石、菱苦土石、方解石、蛍石、等を配合して化学成分を定め、これに発色剤として顔料を加え、さらに晶化剤、晶癖調整剤、等を加えて1400℃で溶かし、二日間ほどかけて徐冷して造るそうです。
このビクトリア・ストンはセラフィナイトやチャロアイトやラリマーにも似た不思議な雰囲気の人造宝石です。飯盛博士は他に翡翠に似たメタヒスイやキャッツ・アイ効果のある石等を飯盛研究所(Iimori Laboratory Ltd.)で造られ、それらの石はアイエル・ストン(IL-stone)と総称されました。
飯盛博士は1982年に97歳で亡くなられています。イイモリ・ストンはそれ以降製造される事はなく現在ではレアな石となり、知っている人も少ないと思います。
飯盛里安博士は「金沢ふるさと偉人館」でも展示紹介されていますが、そこでは人造宝石現物を見る事はできません。
私がそれらの人造宝石を初めて見たのは岐阜県の中津川市鉱物博物館です。2003年の事です。ちょうどその頃「飯盛里安博士97年の生涯」という企画展をやっていて、その企画展の記念講演会に何故か私にも招待のハガキが来たのです。中津川市鉱物博物館には複数回訪れていたからかも知れません。
その講演会を聞いた後、展示されていたイイモリ・ストンを見ました。その当時は人工的な鉱物にあまり関心がなかった為、軽く見流してしまいました。残念な事をしてしまったと思います。
その後、池袋ショーで写真のビクトリア・ストンを見つけ入手しました。上の写真がそれです。
人造宝石は人間が造った奇妙な石だと思います。その製法は焼き物の結晶釉に似ています。人造宝石を変なものと見るよりも、鉱物的な美を愛でる趣味的な観点からは、それらは「ただ美しいだけでいい」のかも知れません。
人工結晶、昨日からの続きです。
上の写真は炭化ケイ素の人工結晶です。この標本は、きれいな微細な六角形の板状結晶の集合体で、全体の形もきれいな六角形になっています。自然界には六角形になる結晶は数多いのですが、実はこの炭化ケイ素、天然では隕石中にわずかに存在が確認されるだけなのです。それは鉱物名「モアッサン石」と呼ばれ、アエンデ隕石に含まれているモアッサン石は超新星爆発の際に吹き飛ばされた粒子が由来とされています。
この標本を見ていて、私はそれとよく似た結晶を全く別のところで見た事があります。そこはどこかと言うと、滋賀県の「西堀榮三郎記念 探検の殿堂」という記念館です。もう10年位前の事ですが、その記念館ではマイナス25℃の南極の世界を体験できる施設があり、その施設の中で巨大な霜結晶が群生しているところを見ました。
炭化ケイ素の結晶は黒色ですが、霜結晶は白く透明でした。それらは色が違うものの、その結晶の形はフラクタルな六角版状で、見た目の印象はそっくりです。
このブログでは既に、雪や氷の結晶と水晶の結晶の類似性を指摘して来ましたが、今度は炭化ケイ素の結晶と霜の結晶です。共通するのは両方とも水と珪素が関係しています。
ビスマスの人工結晶
この写真はビスマスの人工結晶です。この金属的に虹色に光るフラクタルな結晶には魅せられます。人工結晶と分かっていても、その美しさから所有欲がそそられます。
前にも書きましたが、このビスマスの結晶によく似た写真が「雪の結晶図鑑」で見たマイナス25℃以下の低温化で見られる御幣状結晶の写真の数々でした。
水は不思議な存在です。我々、生命現象に欠かせざる物質であると同時に、物質の結晶現象にも深くかかわっている物質です。そうです、結晶は溶液の過飽和な状態から析出します。水はどんなものでも溶かす性質があり、その事が生命現象や結晶現象に関係しているのかも知れません。
そして、水は個体化する時に自らを結晶化させるのです。
冷蔵庫で造る氷は最も簡単にできる人工結晶なのです。
今日は人工結晶について書きます。
人工結晶というとすぐに思い浮かぶのは人工水晶でしょうか。人工水晶は電子部品として産業用に造られ、現代生活では日常的になくてはならないものとして使われております。
上の写真は鉱物標本市場で入手した人工水晶です。オートクレーブで造られた産業用の無色透明な人工水晶とは違った印象です。独特な三角形の多面体構造と透明感のある濃い緑色が魅力的です。もしかするとこれは宝飾用の人工水晶かも知れません。
人類の文明は石の文明と言っても過言ではなく、石器時代から始まり、青銅器、鉄器、等を経て現代でも様々なハイテク分野で石達は活躍しています。人類の進化は石と共にあったとも言えます。
人工結晶はそのような人類の進化の結果、生まれてきたとも言えます。それらは、まずは生活を向上させ、実用的な用途に使われてきました。それらはさらに人造宝石のような美のジャンルにまで拡張していきました。人工結晶の技術は今後もさらに進化を続けていくと思います。
鉱物結晶の美はその結晶の美しさでもあります。それは物質の美であり、天然でも人工でもその美しさは変わりません。
人工結晶を自らの芸術作品として作っている人がいらっしゃいます。鉱石ラジオで有名な小林健二さんです。小林健二さんは美術館や画廊でそれらの人工結晶を展示されています。鉱物好きとしては小林健二さんの活動は無視できない活動です。
私は何年か前の福井市立美術館での展覧会や東京の神保町の画廊での個展に行った事があります。小林健二さんの造られたそれらの結晶は天然の鉱物の結晶に劣らずその存在感を主張しておりました。
鉱物標本市場では人工結晶は敬遠される傾向がありますが、それらが美術館や画廊で展示されると芸術作品としての存在感が出てきます。不思議な事です。その昔、マルセル・デュシャンが「泉」と題してレディ・メイドの男子用小便器を出展したという美術史上の事件がありましたが、マルセル・デュシャンは何かを作って作品にした訳ではなく、作ったのは作品名だけでした。人工結晶の作品の場合は物質の結晶作用を利用して、しっかり人が造った芸術作品だと思います。
人工結晶は人が無から何かを造るのではなく、物質の結晶作用と偶然性を利用して、人の意志が造るものです。
人工結晶、明日に続きます。
今日は「鉱物を特集した雑誌」です。
雑誌「ミネラ」が廃刊して、少しさびしい気がしていますし、ディアゴスティーニの「地球の鉱物コレクション」もあと数回で終了します。また、新しい鉱物雑誌の登場を期待したいところですが、どうも世の中の流れは電子書籍の方向に向かっているようです。電子雑誌でもかまわないので、何か「鉱物」をテーマにした新媒体の登場を願いたいところです。
「鉱物」をテーマにした雑誌は数少なく、日本では「水晶」とか「鉱物情報」とか、かつて存在した「ペグマタイト」とか同好会誌的な雑誌しか存在しませんでした。ドイツでは「Lapis」がありアメリカでは「The Mineralogical Record」のような一般鉱物雑誌があり、鉱物文化の違いを感じます。
ただ、日本でも数少ないものの、「鉱物を特集した雑誌」がかつてありました。私の知る限りの雑誌を挙げてみたいと思います。
まず最初に思いつくのはやはり「夜想 33 鉱物」でしょうか。この雑誌は私の鉱物趣味への扉を開けさせた雑誌です。それから文学的には「幻想文学10石の夢・石の花」でしょうか。
それから「STUDIO VOICE 11」です。その号は「特集スティル・ライフ 鉱物の美学、結晶世界の風景」というタイトルで密度の濃い特集となっておりました。また「htwi 11」は「鉱物王国」という特集で芸術的な視点から鉱物を特集しておりました。
あと、変わったところでは「AZ 20」という雑誌の特集は「ストーン・パワー」です。パワーストーンではありませんが、スピリチュアルな視点からの特集です。この雑誌は新人物往来社という出版社が1991年に発行しています。現在の日本のパワーストーンブームの先駆けとなっているような内容です。ただ、面白い事に堀秀道さんの文章も載っており、クリスタル・ヒーリングには若干否定的な文章になっていながら、鉱物愛への熱い思いが込められています。
それ以外は「is」というポーラ化粧品の広報誌にも何号か近い特集がありました。
ざっと、こんなところです。
これらの雑誌は今お店に持ってきてあります。いつでも見れますので、是非どうぞ。
これら以外の雑誌をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非、教えて下さい。宜しくお願い申し上げます。