ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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長石3

2013-04-29 15:27:22 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「長石3」です。「長石1」を書いてから間が空きました。「長石」には面白いテーマがたくさんあるのですが、それらを理解したり、整理するのに時間がかかります。「長石」には多様性があり、そして奥深いテーマがいくつも潜んでいます。そのせいか、なかなか書き出せずにいました。

ところが、面白い事に、昨日、「長石」を研究されているお客さんがいらっしゃいました。その方のご来店は2度目です。最初の時はブルームーンストーンのルースをご購入頂きました。ブルーンムーンストーンは宝石名で、青いシラーが美しいアルカリ長石(カリ長石)の一種です。それはもちろん研究用ではなく、宝石ルースとしてのお買い物でした。研究者でも愛石的な嗜好があってもおかしくありません。ブルームーンストーンには万人に好まれる特徴があると思います。

Photo
ブルームーンストーンのペンダントトップ

これは非売品のブルームーンストーンです。魅惑的なブルーのシラーが非常に美しいと思います。この青色は石をみる角度で変化します。ムーンストーンは大好きな石です。私も石好きになった初期の頃からこの石の魅力に憑りつかれました。

アルカリ長石がゆっくり冷えてカリ長石分とソーダ長石分とが薄片状に層をなして分離し、層の厚さが可視光の波長の長さになった場合に、光の散乱と干渉とによって月の光のようなシラー効果が現れます。

シラー効果によるブルーは冴え冴えとしながらも、はかなさをも兼ね備えており、不思議な魅力があります。

昨日のお客さんと話をしていて「ラメラ構造」という言葉が出て来ました。ラメラとは層状という意味で、それは長石の特徴を示しています。そのラメラ構造は構造色を発します。構造色は以前にも書いた事があるかとは思いますが、水晶のクラックに因る薄膜干渉であるレインボーやレインボーガーネットの多層膜干渉等、それらの美しい虹色の事です。構造色には光の干渉以外にも散乱もあります。

ムーンストーンのブルーのシラーはラメラ構造に因る散乱に因る構造色で、それは青空のミー散乱と同じ原理です。因みに白いシラーが見れる散乱は雲が白く見えるのと同じ、レイリー散乱の原理で、光の乱反射で白っぽく見えます。

長石の固溶体、ラメラ構造、レイリー散乱やミー散乱という構造色、それらには奥深い仕組みが働いているようです。

そう、昨日のお客さんはラブラドライトのタンブルカットのビーズを幾つか購入されました。それはラブラドライトらしいブルーやパープルやゴールドの不思議な色を放っていました。タンブルカットはそれを見る角度でその色合いが変化するラブラドライトにふさわしい魅力的なカットです。

ラブラドライトのムーンストーンはレインボームーンストーンとも呼ばれ、ラブラドレッセンスと呼ばれるブルーの閃光や虹色を示します。ラブラドライトの和名は曹灰長石、曹長石と灰長石の間にある斜長石グループの鉱物です。それも固溶体を成し、2種類の長石のラメラ構造に因る構造色を示します。

ムーンストーンとラブラドライトの色合いの違いは層の厚さの違い、光の散乱と干渉の違いに因るようです。

ムーンストーンと呼ばれる石はブルームーンストーン(カリ長石、アルカリ長石グループ)とレインボームーンストーン(ホワイト・ラブラドライト、斜長石グループ)以外にもあるようです。ムーンストーンは宝石名で、鉱物名ではありません。巷にロイヤルブルームーンストーンと呼ばれる石もあるようですが、それはラブラドライトの事のようです。また、ペリステライトと呼ばれるムーンストーンはアルバイト(Albite)・曹長石の事のようです。混乱してしまいます。

何れにせよ、ムーンストーンの色合いは魅力的です。長石グループには魅力的な石が多いと思います。その魅力は発色の原理の理解を超えた所にあるようです。その魅力は研究者でも魅惑されるもので、人の持つ普遍的な美意識に係っているような気がします。

長石グループにはサンストーンやアンデシン等、他にも興味深い石がありますが、またの機会にします。

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博物館

2013-04-26 12:52:32 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「博物館」です。このブログでは「博物館」というキーワードは何度も登場しましたが、タイトルにするのは初めてです。

私は小さい頃から博物館が好きでした。昔の小松市立博物館へは良く行きましたし、そこは遊び場のひとつでもありました。近所の友達たちと博物館内で、かくれんぼをやって叱られた思い出も今では懐かしい思い出のひとつです。

鉱物趣味にハマってしまった以降のサラリーマン時代には全国の鉱物展示のある博物館へは良く行きました。東北と北海道と沖縄以外の鉱物展示のある博物館はほとんど行ってしまったと思います。

そんな私が現在、最も行ってみたいと思っている博物館は「インターメディアテク」です。「インターメディアテク」は今年の3月21日にオープンした東京駅前の丸の内JPタワー内にある新しい博物館です。そこはあの旧東京中央郵便局舎の2・3階部を改装した所にあるようです。そこには東京大学の学術文化財が常設されているようです。館長は東京大学総合研究博物館の館長であられる西野嘉章さんです。その人は前から気になっていた人物です。

その事を知ったきっかけはNHK総合の「探検バクモン 博士の愛したコレクション」を見た事からです。私は数年前に放送していた「爆笑問題のニッポンの教養」は何度か見ていましたが、新番組になってからは見ていませんでした。今回録画していた2回分を見て「インターメディアテク」の存在を知りました。

その番組を見ていて、そこへ行ってみたいと思いました。展示されているのは東京大学の歴史的な学術標本です。博物学の全盛期であった19世紀の貴重な標本を直に見れるのです。どうも少数ながらも鉱物の標本も展示されているようです。番組の中でも標本箱が出て来ましたし、恐らくクランツ木製鉱物模型であろうものも映っていました。興味津々です。

番組を見る限り、その展示方法も気になります。「インターメディアテク」の展示コンセプトはどうも学術標本を美の視点から捉えているようです。そこには標本の持っている意義や意味よりもその標本の形態的な観点から展示されているようです。そこは博物館というよりもむしろ不思議な美術館という感じがしました。また「ヴンダーカマー」、「驚異の部屋」のような雰囲気も感じました。それもそのはず、西野嘉章さんの専門は美術史とおっしゃっていましたし、研究室で見られたDADAの文字盤からもダダイズムやシュールレアリスム、さらにマルセル・デュシャンの思想に通じる20世紀美術の価値観も垣間見れました。そして今は21世紀です。その展示方法は21世紀に相応しい新しい可能性が期待できます。

鉱物趣味もどちらかというと欧米では19世紀的な趣味だったかも知れません。日本では明治期から大正、昭和期が全盛だった趣味かも知れません。そして今また静かなブームを迎えているとも言えます。

21世紀的な鉱物趣味とは何なのか?「インターメディアテク」はその辺の参考に成るかも知れません。

そこへは6月の新宿ショーとミネラルマーケット時には是非立ち寄りたいと思っています。

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うれしいお客さん4

2013-04-25 13:06:08 | 日記・エッセイ・コラム

今日は久しぶりに「うれしいお客さん」で、「うれしいお客さん4」となります。因みに「うれしい来客」というタイトルもあり、そのタイトルでは14まで延びてしまいましたので差別化の為に「うれしいお客さん」としております。

昨日は定休日でしたので、今日のブログの「うれしいお客さん」は一昨日のお客さんの事です。

一昨日は珍しく午前中から来客が重なりました。

最初は常連のOさんがいらっしゃいました。Oさんと石談義をしていると、今度は外国人のカップルがいらっしゃいました。ポルテ金沢には台湾からの旅行者が多いのですが、大半は団体旅行で来られた「冷やかし客」です。本当のお客さんとなる人はやはり欧米人が多いです。一昨日の外国人カップルも欧米人でした。私の英語力がない為、彼らは辞書とスマホを用いて、尋ねて来ました。彼らが探している石のキーワードは「カラーチェンジング」でした。

実は、その外国人カップルがいらっしゃたタイミングに、ちょうど関西から出張でいらっしゃったSさんがお見えになりました。さらにほぼ同じタイミングに午後からいらっしゃる予定だった名古屋からのHさんご夫婦も重なりました。さらにさらに高岡からのKさんの来客も重なりました。

平日の午前中に来客が重なるのは非常に珍しい事でした。皆さん、大切なお客さんです。その時は私が一人で店に出ていましたので、チョッと混乱してしまいました。

最初にいらっしゃたOさんは早めに帰られました。そして外国人カップルの探している石を探すのにSさんが助けに入ってくれました。その結果、探していた石はアレクサンドライトだった事が分かり、店に置いてあったアレクサンドライトのルースを出しました。それは非常に小さなルースです。私はそのルースを渡して、しばし名古屋からいらっしゃったHさん夫婦の接客をしました。

Hさんは定年を過ぎた後から鉱物コレクションの趣味にハマり、先週、尾小屋鉱山資料館に行かれたそうです。尾小屋鉱山資料館では鉱物標本の販売をしていないので、どうしても尾小屋鉱山産の鉱物が欲しいという事で、再度、いらっしゃったとの事でした。私は用意していた尾小屋鉱山産の紫水晶、黄銅鉱、重晶石、緑鉛鉱を見せました。Hさんはそれらの大半を購入されました。さらに、ご自身の鉱物コレクションのリストを見せて下さり、未所有の標本があれば購入したいという話になりました。

その話をしている中で、先ほどの外国人カップルはアレクサンドライトのルースと中国産の緑簾石と水晶の共生したものとヘマタイトのブレスレットを購入されました。ありがとうございました。

そんな中、高岡からいらっしゃったKさんは一旦どこかに行かれました。関西からいらっしゃったSさんも待ち合わせの方と一緒に出掛けて行かれました。

それからは名古屋からのHさんと未所有標本を照会しながら選んで頂きました。それらの一部を紹介すると宝石質の黄色が美しいモロッコ産の硫酸鉛鉱、ペルー産の安四面銅鉱、南アフリカ産のハウスマン鉱、ブラジル ミナスジェライス州産のコルンブ石、日本産ダイヤモンドで有名になった愛媛県新宮産の苦土かんらん石、等々Hさんの予算いっぱいまで選びました。非常に楽しい時間でした。

Hさんご夫婦は石を選んだ後、お食事に行かれ、標本リストと梱包作業に入りました。そのタイミングに高岡からいらっしゃったKさんが戻ってこられました。Kさんからは差し入れのパンがありました。Kさんは旦那さんの誕生祝としてのブレスレットと大型のカクタス水晶を購入されました。本当にありがとうございました。

その後、Hさんがお食事から戻られ、しばし石談義をして、Hさんは帰られました。

密度の濃い時間を過ごせました。皆さん、ありがとうございました。

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左右2

2013-04-22 12:08:53 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「左右2」です。

自然界の「左右」の事を調べたり考えたりしていますと、面白いのですが、その事を深く考えると頭が混乱してきます。どうも日常的には「左右」の事はあまり考えない方が良さそうです。その良い例が、鏡を見ながら自分の頭に生えた一本の白髪をハサミで切ろうとした時に経験するあの混乱です。鏡面対称は視覚と脳とが混乱してしまい、なかなかうまく動作できません。

鉱物の世界の「左右」でもその事を考えていると少し混乱してしまいました。

まず、水晶です。

水晶はケイ素原子と酸素原子が形作る正四面体構造が螺旋状に結晶成長したものです。螺旋の方向には左回りと右回りがあり、それぞれ左水晶、右水晶と呼ばれます。その違いはX面やS面がどちらの肩に現れるかで見分けます。ただ、X面やS面が現れる水晶は少数派です。

また、左水晶と右水晶とが結晶の縦軸(C軸)を共有して透入した双晶をブラジル式双晶、左または右水晶同士の双晶はドーフィーネ式双晶と呼ばれます。

また、水晶の双晶には日本式双晶もあります。これは分かり易い双晶です。

実は天然の水晶は大半が双晶で産出するのです。理想形の単結晶は非常に珍しいと言えます。

ブラジル式双晶もドーフィーネ式双晶もなかなか双晶には見えません。そらは一本の水晶にしか見えません。

そのような視点から水晶を見ると、それが左水晶なのか右水晶なのか、あるいは双晶なのか混乱してきます。

双晶は面欠陥のある結晶の代表例でもあります。天然にはそのような欠陥でもある双晶がどうもメジャーになっているようなのです。

ブラジル式双晶で面白いのはアメトリンでしょうか。ブラジル式双晶で成長したアメシストの部分と単結晶で成長したシトリンが同時に成長した事によって、一つの結晶に二つの色合いが見られる面白い現象になっています。

Dscf4071
模様が面白いアメトリン

アメトリンは人工的にも造られているようですが、それが天然なのか人工なのか、見た目で判断する事は難しいようです。

鉱物の世界の「左右」は、なかなか奥深く、まだまだ興味深い事が潜んでいそうです。

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左右1

2013-04-20 14:23:37 | 日記・エッセイ・コラム

昨日のNASAが発表した太陽系外惑星の発表のニュースには少し興奮しました。そのニュースはケプラー宇宙望遠鏡で発見したという地球と同サイズの惑星で、しかも液体の水を適度に維持できるハビタブルゾーン内にある、という内容でした。その惑星には生命が存在する可能性が高いと思われます。その惑星は地球から1200光年という距離なので、宇宙的には比較的近い所です。系外惑星の研究スピードは非常に早く、比較的近い未来には、地球生命以外の生命の発見というニュースも期待できそうな予感がします。

地球と同サイズの惑星、というと、あるSF映画の事を思い出します。その映画は「決死圏SOS宇宙船」(1969年 イギリス ロバート・パリッシュ監督)です。太陽を挟んで地球の反対側にもう一つの地球があり、そこでも地球と同じような進化を遂げていたという内容でした。主人公は宇宙飛行士で宇宙船が太陽に向かっていたが通り越して「逆の地球」に不時着し、そこで、その違いの謎が少しずつ解けていくというストーリーでした。その違いとは「逆の地球」は全てのものが左右逆になっているという違いでした。

今日は「左右1」です。

ひとつ前のブログ「長石2」で左右の事に少し触れました。

正長石のカルルスパッド双晶には左と右の2種類あります。鉱物の世界にも左右があるのです。水晶にも左水晶と右水晶があります。天然の水晶では左右の確率は半々です。(人工水晶の場合は規格的に右水晶に決められています。左右で性質が違う事があるからです。)

天然の正長石のカルルスパッド双晶の左右も恐らく半々だと思われますが、どうも、ちゃんと調べられてはいないようです。

自然界の左右は特別な理由がない限りは確率的に半々になるはずです。それが自然の摂理です。

面白いのは生命のDNAの巻き方でしょうか。地球上の生命の全てのDNAは右巻き螺旋です。それがなぜなのかは難しい問題です。生命の誕生は一回だけの現象で、最初のDNAが偶々、右巻き螺旋になって、その後、現在までコピーが繰り返されているとも考えられます。地球生命以外のサンプルが無いので、その考えの正誤は分かりません。

生命の起源も謎です。生命誕生のメカニズムも然ることながら、どうして今、新たな発生ができないのでしょうか?どのような環境が必要だったのでしょうか?地球以外の生命の発見はそのような疑問を解く鍵になると思います。

無機物から有機物への化学的進化、生命の起源、物質から生命への飛躍、そして生命が持つ意識、疑問の数々は地球を超えて宇宙を舞台に展開していきます。

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