ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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彫刻のような石1

2012-02-28 12:14:34 | 日記・エッセイ・コラム

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?サモトラケのニケ像

この写真は言わずと知れたルーブル美術館の至宝であるサモトラケのニケ像です。樹脂製のフィギュアなのですが、フランス国公立美術館連合が製作した彫刻レプリカで、本体からの忠実な再現で出来ています。

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?下仁田の菊花石

この写真は下仁田の菊花石なのですが、この石を見付けた時に、すぐに想起したのが上のサモトラケのニケ像です。菊花石の放射状の部分がニケ像の翼や衣の皺の部分とダブって見えてしまいました。

どうですか?似ていると思いませんか?

似ていない!

それでは、これはどうでしょうか?

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?安倍川の馬蹄石

これは安倍川の馬蹄石です。台座をとって石を横に水平にすると馬蹄形をしていただろうと推測されます。

この石を見た時は、一瞬であの有名な葛飾北斎の絵を想起しました。

そうです。「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」です。ダイナミックな波のような岩と富士山に見立てた山の部分が印象的です。

北斎のこの版画、実は絵のモデルがあったようです。

この絵のタイトルの最後に「浪裏」とありますが、それがヒントです。

北斎と同時代のひとで「波の伊八」という欄間職人が今の千葉にいて、彼の作品は行元寺の客間の欄間に今でも残っております。その欄間を裏から見ると、何と北斎の絵にそっくりなのです。そして北斎は行元寺に行ったという記録も残っているそうです。何故「裏」という文字が付いていたのか?という謎も解けます。

二次元の「絵」の原型が三次元の「欄間彫刻」にあったという事が面白いです。

さらに北斎のその絵の影響力は大きく、海外の芸術家たちにも影響を与えました。数ある中でひとつ挙げれば、カミーユ・クローデルの「波」という彫刻でしょうか。「波」で表現されている大きな波を見ると北斎の絵を彷彿とすると思います。

二次元の「絵」は再度三次元の「彫刻」になった事も面白いです。

(これらの絵や欄間彫刻や彫刻はWeb検索ですぐ見ることができます。)

そして、それはついに石になりました。

人間の想像力は次元や素材を超えて輪廻転生します。最後はやはり石でした。

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テレビ番組2

2012-02-27 10:55:05 | 日記・エッセイ・コラム

今日も先日に続き、TV番組の話題です。

このブログでは石に関係した番組を紹介していく事にします。

先日紹介した番組は3作品ともにイマイチでした。2Dで見た「アバター」は途中で寝てしまいましたし、「地球ドラマチック」の「ナイカ鉱山」はすでにどこかで見たことのある番組でした。「カンブリアン ウォーズ」は少年ドラマのようで満足できませんでした。

今日紹介するのはBS日テレの「ぶらぶら美術・博物館」2012年2月28日(火)20:00~20:54放送予定の「上野・国立科学博物館 知のワンダーランド”カハク”の魅力!」です。

解説役の山田五郎さんはアートの世界からオタク文化の世界まで幅広く語れる現代の知の巨人のおひとりです。さらに鉱物趣味の素養もお持ちのようで、数年前に見たMONDO TV「新マニア解体新書」の「鉱物マニア」の時は、ゲスト出演されていた関西のSさんと対等に話をされていた事を思い出します。

”カハク”は鉱物趣味のある人ならば、必ず一度は行った事のある博物館だと思います。私も新宿分館も含めて何度か行った事があります。上野の”カハク”は数年前にリニューアルされ、鉱物標本コーナーも充実しておりました。有名な桜井コレクションの一部も展示されていました。私が数年前に行った時は尾小屋鉱山の立派な重晶石の標本が飾られていました。尾小屋鉱山資料館にも花が咲いているような立派な重晶石が展示されておりますが、”カハク”のものはそのサイズも形もそれ以上のものでした。小松出身者としてはそれを見て誇らしい気持ちになりました。

私は「ぶらぶら美術・博物館」という番組は良く見ております。過去の放送では、銀座の画廊の回で山田五郎さんがその場でアート作品を購入されたシーンを見て、うらやましく思ったりもしました。

さて、明日の放送では山田五郎さんが鉱物標本室でどんな解説をするか、楽しみです。

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石を彫る

2012-02-26 11:07:50 | 日記・エッセイ・コラム

NHKの「世界遺産 時を刻む」の「大彫刻 石に魂をこめる」を視ました。

中国重慶市にある大足石刻で、「彫る」仕事に没頭している若い彫刻家の紹介をしていました。彼が取り組んでいるのは羅漢像です。硬度7という硬い「しりゅう玉」という石を火花をたてながら彫っていました。

羅漢像のおおまかな全体像ができたところで、その石の持つ黄金色の部分の確認作業が入ります。彼は当初の予定を変更して、その石の黄金色の部分を、羅漢さんの着物に留まった蝶の姿に彫るプランに変更すると言っていました。彼はその偶然性を楽しんでいるようでした。

石の持っている本来の模様をそのまま生かして、その偶然性を楽しみながら、自分の作品を作っていく事、好感が持てます。

その昔、彫刻家ヘンリー・ムーア氏が「自分の仕事はその石がなりたがっている姿にすることだ。」というような事を言っていたのを思い出しました。

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この写真は商品にしているソーダライトで造られたカエルです。親ガエルの背中に子ガエルが乗っかっているように見えます。それは単なるその石の持つ模様だったものだと思われますが、この作者はその偶然性を意図的に残したものだろうと思われます。平面ガエル、どこかアニメ作品を思い出してしまいます。

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これも商品にしている瑪瑙で造られた金魚です。金魚の目玉の部分と尾びれの部分が瑪瑙のオレンジ色を生かして造ってあります。このような偶然性を生かして石を造る事、微笑ましい仕事だと思います。楽しみながら仕事をしているのだ、と思います。

Photo

これは少し贅沢な商品です。マラカイトで造られたミロのヴィーナス像です。マラカイトの持つ独特の曲線を人体曲線のように彫られております。これも恐らく楽しみながら造られたような気がします。

NHKの番組の若者は「なぜ彫るのかと尋ねられても、好きだからとしか言えない。」とも言っていました。

仕事を楽しむ事、重要な事です。

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加賀てまり

2012-02-25 11:18:31 | 日記・エッセイ・コラム

先日、富山からのお客さんであるMさんから水晶で作ったバッキーボールはありませんか?と言われました。お店には多面体に加工された水晶は多種置いてありますが、残念ながら、その時お店にはありませんでした。

Mさんはその代わりに、ベクトル平衡体の形の結晶をした黄鉄鉱とそれとほぼ同じサイズのベクトル平衡体に加工された水晶を買っていかれました。ベクトル平衡体は正三角形と正四角形から成る立方八面体です。

Mさんが求めてきたバッキーボールとはあのバックミンスター・フラーの名前に由来する形です。サッカーボール型の準正多面体で切頂二十面体とも言います。その形は正五角形と正六角形とで構成される32面体です。それはC60、フラーレンの形と同じ形で、球体に近い多面体といえます。

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上の写真は加賀てまりです。みごとな幾何学模様を成しております。それはまるで一筆書きで球体を埋め尽くしてあるようにも見えます。あたかもイスラム様式のモザイクを見るようでもあり、じっと見ていると眩暈感に襲われそうです。

この二つのてまりの形は良く見ると同じ形をしており、バッキーボールと同じ形である事が分かります。正五角形と正六角形とで規則良く構成されているのが読み取れます。

私はこの形状の鉱物結晶を見たことがありません。自然界では何でも起こりうる、と考えるとあってもよさそうですが、柘榴石か蛍石あたりで見たいものです。

このブログを書きながら検索をしていると面白い記事を見つけました。

http://news.mynavi.jp/news/2012/02/24/009/

鉱物結晶とは言えないかもしれませんが、個体の炭素分子という事でタイミングが良すぎます。

自然界は不思議です。

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◯△▢その二

2012-02-24 11:56:19 | 日記・エッセイ・コラム

今日は昨日の続きです。

鈴木大拙館では水鏡の庭に浮かんでいるように見える思索空間があります。そこは観客それぞれ自らが考える思索空間という場になっております。

そこで私はやはり「◯△▢」の事を考えました。

それは単純であらゆる形の基本となるもの。古代ギリシアの哲学者たちがアルケーと呼んだ根源なるもの、それが「◯△▢」ではないか。

出典は何なのか明示されていませんが、展示資料で頂いた紙に鈴木大拙の言葉がありました。

「円は無限を表す。無限はすべての存在の根底にある。しかし無限そのものは形がない。感覚や知性を与えられている我々人間は触れることの出来るような形を求める。従って、三角形。三角形はすべての形の始めである。そこから先ず四角(正方)形が現れる。四角形は三角形を重ねたもの、二重にしたものである。この二重化の過程は限りなく進み、おびただしい多様な事物があることになる」

鈴木大拙は大乗仏教の根本思想「色不異空・空不異色」の表現として「◯△▢」を描き直したと解説してありました。

私は何か共通するものを感じました。

石川県は仏教王国です。実際、お寺が多くあります。和菓子の文化が浸透しているのも、そのような背景があるからです。(アイスクリームの消費が多いのはスーパーが半額セールを行うからです。)

私は仏教や東洋思想にはあまり接触してきませんでしたが、「◯△▢」には特別な思いがあります。それは単純でありながら多様な解釈が可能な極めて禅的な抽象概念です。それは同時に具象的な形を持っております。

鉱物結晶や多面体の世界でよく現れる「◯△▢」は抽象と具象という矛盾するものを同時に表す形なのだと思います。

鈴木大拙館は思索空間で終わります。

一昨日は、入る時は誰もいなかったのですが、出る時はどこかの団体客が入って来ました。どうも学芸員の方の解説があるようでした。どんな解説があるのか?解説を聞いてみたい気もしましたが、静かな環境で入館することができて良かったと思いました。

鈴木大拙館、収穫でした。

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