ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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民主主義

2016-09-30 16:03:19 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「民主主義」です。当初は書いても良いものかと迷っていましたが、とうとう書き出してしまいました。

「民主主義」(デモクラシー)は古代ギリシアに始まり歴史的に発展してきた意思決定の体制の事です。現代においても大半の国家が採用している社会の仕組みです。

ここ最近は、その「民主主義」に疑問符を問い掛けたい現象が多々起きております。それは例えば、イギリスの国民投票によるEU離脱やアメリカの大統領選挙など、が挙げられます。

そもそも古代ギリシアの「民主主義」は衆愚政治に陥りました。哲学者プラトンは師であるソクラテスが民主政治下で不当な裁判によって処刑されたことから、民主政治への疑念を抱くようになり、そして様々な思索を巡らせた結果、哲人政治の思想へたどり着いたと言われています。もっともプラトンの理念は現実的には失敗に終わったのですが、重要な意思決定の場合、平等主義からなる多数決的方法では必ずしも最善の結果が導かれないケースも有り得る事です。

このブログは石のブログです。

何が言いたいのかと言うと、先日の「日本の石」が日本鉱物科学会において翡翠に選定されてしまった事への疑問です。

そもそも日本の国石は水晶だったはずです。その正当性への見直しから今回の投票が行われたらしいのですが、では、なぜ翡翠なのでしょうか。私のイメージでは翡翠は中国です。中国人の翡翠好きは周知の事実ですし、中国と同じという事に抵抗を感じてしまいます。

確かに地質学的にプレートの沈み込み帯で産出し、糸魚川や他の産地もあり、さらに縄文時代から宝飾品として愛用されたという歴史もある、という事は理解できるものの、ただ一つの国石とするには「日本の石らしさ」から言って、本当に翡翠で良いの?と言った不快さが残ってしまいました。むしろ、日本式双晶という名もある水晶が存在する事やジャパン・ジパングの語源に由来する金も翡翠以上に国石に相応しい気がします。

日本鉱物科学会の総会では花こう岩、輝安鉱、自然金、水晶、翡翠の五種類が挙げられ一回目で翡翠と水晶の二種類に絞られ、決選投票で71対52で翡翠に決まったとの事でした。

わずか123人の投票者!それも会員数が千名にも満たない学会です。そのような限られた少数集団の中の多数決で決まるものなのでしょうか?もっと言うと、そもそも学会とは単なる同好の士の集団にすぎません。そこに権威を求めてはいけません。

天文学の世界では冥王星は国際天文学連合(会員数1万人を越える)の総会の投票で準惑星に降格されました。科学的な事実が投票で決められた事自体には驚きましたが、その決定には納得できたと思います。

それに対して、今回の翡翠には納得できません。翡翠好きの人は別として、今回の選定に疑問符を投げ掛ける鉱物マニアは多いと思われます。

一部にオリンピックのように4年に一度選び直すという方法もある、という意見もあるようですが、スッキリしない選定だったと思います。

「翡翠は謎多き石」だとは思いますが、「水晶はもっと謎多き石」だと思います。

今日は私見を正直に書いてみました。




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謎の円筒形鉱物

2016-09-23 14:31:11 | 日記・エッセイ・コラム
先日、常連のKさんが近所の雑貨屋さんで買ってきたという鉱物を見せに店に持ってきました。その写真がこれです。



その店には、ずいぶん前から置いてあったらしいのですが、棚の奥の方に置いてあった事と見た目に汚いという印象で、長く売れ残っていたようです。それを取り出して見てみると、手ごろな値段で面白そうに思って購入したらしく、それを鑑定して欲しいという事で「石の華」に持って来られました。

それは雑貨屋さんだったので産地情報は不明との事でした。

私はそれが水晶と黄銅鉱と苦灰石と方解石、等の集合体だとお伝えしました。赤い色は鉄サビです。そして過去にそれと良く似たものを見たことがあり、それは恐らく中国の湖北省産のものだろうというような話をしました。

私はそれが面白い標本だとは思いましたが、結晶サイズがルーペサイズという事もあり、それほど興味を持てませんでした。









ところがです。昨日、その標本をルーぺで見ていた常連のNさんが突然「シャープペンシルの芯のようなものが張り付いている!」と言い出しました。その言葉に反応して私もその標本をよく見てみました。すると、数本の円筒形状のものがある事がわかり、さらにもう一人の常連のOさんが20倍率のルーペで見て無数の円形をした断面を発見しました。

これは何なのでしょうか?

円筒形の鉱物と言えば円筒鉱だと思いますが、有名なボリビア産の円筒鉱とは何となく雰囲気が違います。その断面も金色をしており、さらに中心部に芯のような形状もあります。

すぐにWeb上で類似の鉱物を探してみましたが、すぐには見つかりませんでした。

果たして、これは何なのでしょうか?気になっております。

それで今日のブログのテーマにすることにしました。

どなたか教えてください。宜しくお願い申し上げます。

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コンクリーション

2016-09-16 14:37:08 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「コンクリーション」です。(このブログでは過去に4回「コンクリーション」という言葉が出てきた記事がありました。タイトルとしては初登場です。)

先日来、TVのニュースやワイドショーでは東京都の豊洲市場移転延期問題が大きな話題となっていますが、昨日のニュースで石原元知事が土壌汚染対策として地下にコンクリートの箱を埋める案に言及していた事が発覚しました。今後さらに大きな問題になっていくような予感がします。

さて、私の関心事はそんな問題ではありません。コンクリートではなくコンクリーションです。

奇しくも、ちょうど1年前の9月15日、英国「Nature」出版社の国際学術誌「Scientific Reports」(電子版)に興味深い論文が掲載されています。その概要は「従来の化石形成速度の概念を覆す!生物遺骸を保存する球状コンクリーションの形成メカニズムを解明」というタイトルで名古屋大学と岐阜大学のPress Releaseにあり、それは今でもWeb上で見る事ができます。

興味深いのは、ノジュールと呼ばれる球状塊(コンクリーション)の生成メカニズムを解明した事と同時にその形成速度が数週間から数か月以内という驚くべき速さであったという事実です。それは従来の数十万年、数百万年オーダーという時間がかかる化石形成速度が実は非常に速い炭酸カルシウムの農集・沈殿メカニズムによって完成する、という従来の認識を塗り替えた研究成果です。これは地質学的時間概念の常識を新たにしなければならない大きなパラダイムシフトだと思いました。

思うに、鉱物の結晶生成速度も認識を新たにしなければならないケースもあるのかもしれません。

さて、今日の写真です。

現在、まだ店に残っている(お取り置き中のものも含めて)コンクリーションと呼べるものを2点出します。

最初はロシアのボルガ川で採れる黄鉄鉱コンクリーションです。







美しい半球状の泥コンクリーションの断面に美しいレインボーパイライトの微細結晶が張り付いています。歪なコンクリーションのものが多い中で本品は形・色共に魅力的だと思います。

次は産地不明(恐らく国産)の玄能石のコンクリーションです。玉ねぎの皮のように多層の泥の膜で球状になっておりますが、恐らくその中には手裏剣状の玄能石が埋まっていると思われます。このコンクリーションを半分に切断してみたい思いがありますが、これはそのままの方が良いような気もします。







そう言えば、先日のNHK Eテレ「サイエンスZERO」で見た南鳥島沖海底5500メートルで密集している球状マンガンノジュールもコンクリーションの一種だと思われます。それは海水や海底に含まれるマンガンやコバルトやニッケルなどのレアメタルの成分が集まり海流が動くことで球状になったと考えられているそうです。海流が動く事で球状になるというメカニズムには球状のマリモの形成メカニズムを思い出します。さらに、そこには海底火山の絶妙な配置と海洋プレートの移動という長い時間が係っていたそうです。

同じコンクリーションでも様々でその時間的長さも様々なのだろうと思いました。

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化石の壁

2016-09-11 12:02:19 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「化石の壁」です。「化石の壁」と言っても白山市(旧白峰村)の「桑島化石壁」の事ではありません。金沢駅前の「化石の壁」の事です。

実は、私はその存在をこれまで知りませんでした。一昨日の事ですが、ひとつ前のブログタイトル「壁」をアップした後に、郵便物を入れる為に、店から最も近い郵便ポストに行きました。その際、いつもは通らないヴィサージュ(ANAクラウンプラザホテル金沢の隣)の中をショートカットするルートを通ってみました。すると驚くべき事に「化石の壁」を発見したのです。

以下の写真は昨日再度撮ってきたものです。















如何でしょうか?私はこんなにすごい「化石の壁」がこんなに近くにあった事を知らなかったのですが、昨日、常連客の方々にお話ししても誰もご存じありませんでした。

これは恐らくどこか外国産の石材だろうと思います。石灰岩の石材の中に無数の化石が見えております。それらを壁の模様にして張り付けたのだろうと思います。

常連のOさんによれば、モノチス(三畳紀後期の示準化石)らしきものが大量にあるそうです。





中にはエビに見えるものや鳥?に見えるものがあったりして非常に面白いと思いました。(実は私は化石は苦手なのです。)

昨日は写真を撮りに行く際に空の鱗雲が印象的だったのでその写真も撮りました。



秋の気配が感じられました。
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2016-09-09 11:48:51 | 日記・エッセイ・コラム
テレビのニュースでイギリス政府がフランスから流入する移民・難民防止に「壁」を建設するらしいという事を知りました。アメリカでも共和党の大統領候補ドナルド・トランプがメキシコからの不法移民の入国を阻止するための「壁」を築く、と息巻いております。どうも今の世界情勢はあちこちで「壁」を造りたがっているようです。

そんな中、つい先日、ベルリンに「壁」があった1985年よりドイツに住んでいた高校の部活の先輩が帰国しており、奇遇が重なり、「石の華」を訪ねて下さいました。その先輩はベルリンの壁崩壊の現場にもいたと思われますが、今回の再会時間は短かったので、その辺のお話は伺えませんでした。高校時代の先輩はレオナルド・ダ・ヴィンチの「白テンを抱く貴婦人の肖像」そっくりの美人さんでした。還暦を迎えるという今も目もとにその面影が残っていました。お互いに知らないはずの偶然の四十数年ぶりの再会をうれしく思いました。

今日は「壁」です。



今日の写真は現在の「石の華」の「壁」です。昨日、小松市立博物館の学芸員の方が来店し、10月1日から開催される「小松の石と文化」展のポスターを持って来られました。私はさっそく「石の華」のカウンターと通路の間にある「壁」に貼りました。ちょうど石川県立自然史資料館で開催中の北川コレクションのポスターと尾小屋鉱山資料館で開催中の「こまつの珠玉」のチラシを貼ってありましたので、それらと一緒に貼りました。今年の石川県は石のイベントの当たり年です。複数の展示会が重なり合っております。

「小松の石と文化」のポスターの写真は遊泉寺銅山産の紫水晶です。実物よりもかなり拡大されておりますが、ポスターサイズならではの存在感が出ていると思います。鉱物はポスターサイズやカレンダーサイズの写真に拡大すると化けます。それはマクロ撮影された微小結晶が化けて見える事と同じで、現物の数倍、否、桁違いにその魅力度が増します。このポスターもポスターならではの効果が十分に出ていると思います。

「こまつの珠玉」は11月29日まで、「小松の石と文化」は12月18日まで、北川コレクション展は来年の1月8日まで、会期中は「石の華」の「壁」に貼っておきます。
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