ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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オーシャン・ジャスパー

2015-11-20 14:21:43 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「オーシャン・ジャスパー」です。このブログでは初登場となります。



今日の写真はマダガスカル産のオーシャン・ジャスパーです。これは現在店に飾ってありますが、常連のKさんの購入済みの石です。(Kさんは石好きさんではありますが、普通のコレクターとは違って、必ずしも購入品を持ち帰らない場合があり、所有権を持ちながら、「石の華」にそのまま飾っておられます。)

オーシャン・ジャスパーは水晶、石英や瑪瑙、玉髄、等と同じくシリカ鉱物で、流紋岩や緑泥石などの小球を取り込んでおり、味のある不思議な模様が魅力的な石だと思います。それは丸玉や板状に磨かれて飾り石として人気が高い石です。

その目玉模様のような部分を他のオーシャン・ジャスパーの欠片で拡大写真を撮ってみました。



上の写真がそれです。まるで銀星石の結晶のように放射状に結晶しています。その中心部分には白い核になるような部分が見られ、そこから結晶成長していった様子がうかがわれます。それらの集合体が様々な模様を作り出し、様々な個性的な風合いを醸し出しているのだろうと思います。





黄色い丸玉のものにはミニ晶洞のような部分が刻まれており、その中には小さいながらも黄色い水晶のような結晶が無数に張り付いており、天然石ならではの魅力があると思います。

このオーシャン・ジャスパーに似た石は日本でも採れます。それは青森県の錦石の中の鹿の子石(かのこいし)と呼ばれている石です。また、北陸地方でも紋石と言う名の付いているものが何種類かありますが、それらも同系統の石だと思われます。

それらは産地は違えど、同じような地質活動を経て生成されたようで、良く似ています。ただ、同じものはひとつと無く、それぞれの微妙な違いがあり、それらの個性が魅力的なのです。
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成長干渉水晶

2015-11-12 16:30:13 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「成長干渉水晶」です。ひとつ前の「純粋階段」から続きます。

「純粋階段」のように見えた水晶はどうも「成長干渉水晶」(グロース・インターフェレンス)と呼ばれるものの一種だと思われます。「成長干渉水晶」とは、カルサイト等の他の鉱物と一緒に成長し、長い時間の中で他の鉱物は消え、干渉を受けた水晶の部分だけが残って、不思議な形となった水晶のことで、普通の水晶には見えないところが面白いと思います。

今日の最初の写真はこれです。



これは岐阜県の柿野鉱山産の成長干渉水晶です。どう見ても、一見、水晶のようには見えません。そこが面白いところなのですが、じっくり見て、それが成長干渉水晶だと理解しながら見ると、その特徴がわかってくると思います。これが魅力的に思えるのは、クラスターになっているところでしょうか。大きな水晶と同じく小さな水晶も同じように干渉されたようで、同じような相似形になっています。

水晶は多くの鉱物コレクターに人気があると思いますが、多種多様の水晶を集めている内に、このような成長干渉水晶までコレクションするようになると「病膏肓に入る」という状態になっていると言えます。

「石の華」には幾つか成長干渉水晶があります。









上の写真は面白い鉱物を多産する事で有名なロシアのダルネゴルスク産です。他の鉱物が溶け去ったものと残ったままになっているものです。このように見比べるとその成因を想像する事ができると思います。

鉱物コレクションの面白みのひとつは、それがどのような成因で出来て来たのかを想像する事だと思います。ただ単純に美しいと愛でるだけではなく、それがどのようにしてそうなったのか、という事をサイエンスする事です。

鉱物コレクションとは美学と科学を兼ね備えているものだと思います。

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純粋階段

2015-11-10 14:33:45 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「純粋階段」です。「純粋階段」とはトマソン(赤瀬川原平氏らの発見による芸術上の概念)の第1号物件「四谷の純粋階段」で知られる事になった無用の長物となってしまった不動産建築物の階段部分の事です。「四谷の純粋階段」自体はビルの再開発で既に無くなってしまったそうなのですが、その後、各地で次々に発見された「純粋階段」には非常に面白いものが多く、私的には「ナニコレ珍百景」的なものよりも、その存在そのものに超芸術的な面白みを感じてしまいます。

今日の写真はそのような「純粋階段」のように見えた水晶です。





これは、近年、面白い鉱物標本を多産している中国・内モンゴル産の緑水晶です。この水晶の面白みは先端の錐面部分が3段の階段状になっているところです。白くコーテイングしているものは恐らく風化して粘土となった長石だろうと思います。緑色の和菓子に白い砂糖が被っているようにも見えます。2枚目の写真のように撮ると超高層ビルを上空から撮ったようにも見えました。

これはどのようにして階段状になったのでしょうか?

元々あった水晶の錐面部分が地震か何かの地殻変動で折れて欠けてしまい、その後、白い粘土質のものに覆われたように思われますが、このように階段状に割れてしまった事も不思議な事だと思います。それとも、何か他の鉱物が結晶成長を阻害して出来たのでしょうか?そうだとすると成長干渉水晶という事になりそうです。

何れにしても、この水晶の魅力は何と言っても、その「純粋階段」のように見える形状だと思います。階段とは、高低差のある場所への移動を行う為の構造物なのですが、そのような目的の為ではなく、純粋に階段のように見えるところが「純粋階段」と共通するところでもあり、鉱物の結晶好きにはこのような階段状の形態が琴線に触れるのです。

それは「純粋階段」のように何の役にも立っていません。その無用さが逆にトマソン的な面白さを醸し出すのです。

私は建築にも興味がある方で、特に階段好きでもあります。階段にはその形状に鉱物結晶に相通じるものを感じてしまう方だと思います。

階段にはそれ独自の美があります。例えば、JR京都駅ビルの階段はそのスケール感が好きですし、東京国立博物館の表慶館の階段室は最も美しい建築物のひとつだと思っている位に大好きです。

このようなマニアックな水晶に、そのような階段好きでもある私が「純粋階段」のように見える水晶に反応してしまったのは極自然な事で、水晶コレクターならずとも、結晶好き、建築・階段好きの方ならば、共感して下さるような気がしております。
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四角形

2015-11-05 15:43:46 | 日記・エッセイ・コラム
今日は前回の「三角形」に引きずられて「四角形」とします。

「四角形」の話題は書きづらいところがあって、これまで避けてきたような感じがしております。これまでに「三角形」、「五角形」、「六角形」、「七角形」、「八角形」の話題は書きましたので、抜けている「四角形」の話題も避けて通れないような気がしております。

なぜ、四角形が書きづらいかと言うと、それは日常的には四角形はあまりにも普通で、他のカタチよりも圧倒的な多数派であると思われるからです。例えば、住んでいるマンションも店のビルも四角形ですし、毎日見ているTVやパソコンの画面も四角形です。身の回りには他にも多くの四角形のものがあり、日常は四角形で溢れていると言えるでしょう。



今日の最初の写真は昨日撮ってきた京都の建仁寺・方丈の格天井です。(「方」には四角形の意味があります。)四角形の集合形の典型だと思い、思わず写真を撮りました。

私はどちらかと言うと多数派を好みません。ベストセラーとかヒット商品には興味が無く、むしろそのようなものを避ける傾向があると思います。そのような理由から多数派だと思われる四角形も避けてきたように感じております。

ただ、人間の日常では多数派の四角形も自然界でもそうかと言うと、実はそうではなく、どうも四角形は少数派のようです。

赤瀬川原平氏の著作に「四角形の歴史 (こどもの哲学・大人の絵本)」というタイトルの本があって、「自然界に四角形のものは存在しない、これは人類が作り出したものだ。」というような事が書いてあるそうです。私もそのように思います。四角形は人間が作り出したもので、文化とか産業と言ったような人為的なものはキチンとした四角形が基盤になっていると思います。それは合理的で効率的なカタチであり、しかも作り易いカタチだからなのだろうと思います。

では、自然界ではどうでしょうか?

例えば、四角形が六面で構成される立方体のカタチをした黄鉄鉱のキューブ状の結晶は、一見するとあたかも人工的に作られたもののように感じてしまいます。逆に、それが自然のものである、ところが面白いのですが、あまりにも完全なキューブ状の結晶は、それが珍しいものだとしても、鉱物コレクションに加えようとすると若干躊躇してしまいます。それはその完全さが人工的なものかもしれないという疑念を生み出すからです。人間的な日常世界にいると、どうしてもそのような先入観に捕われてしまうのだろうと思います。

店の中で四角形を探してみると、少数派ながら、幾つか見つかりました。黄鉄鉱以外には、まず、岩塩の結晶があります。



今日の2番目の写真はそれです。これはカナダのSeleine鉱山の岩塩の結晶です。これが面白いのは内側の四角形を取り込むように青みがかった外側の四角形があって、四角形の2重構造のように見えるところだと思います。

今日はあえて写真は出しませんが、方鉛鉱の結晶の中にも立方体や立方八面体のカタチをしたものもあり、そこにも結晶面に四角形があります。

他にも切頂八面体や斜方立方八面体のカタチをした螢石の結晶の一面にも四角形の面があります。また、魚眼石や沸石類の中にも四角形のカタチを見出す事ができます。

変わった四角形のものとしては、極希に水晶のウィンドウに正方形を成すものがあります。過去に一度話題にした事がありました。(「ウィンドウ水晶」2012-07-03 )

このように見ていくと、鉱物の世界では四角形は決して多数派とは言えないものの、少数派ながらしっかり存在しております。鉱物の世界の四角形は三角形や六角形のような鉱物らしい存在感があるカタチと比べると、どうしても人為的に普通という印象が残ってしまい、相対的に存在感が薄くなってしまっているという気がしてしまいます。

鉱物の世界からまたミクロの化学の世界に視点を移すと、アヌレンという環状炭化水素が四角形をしております。マクロな視点では宇宙には「赤い正方形の星雲」(MWC922)という四角形を見出す事ができます。それから動物や植物の世界でも四角形の存在は知られているようです。自然界にも少ないながらも四角形は存在しております。そういう意味で「自然界に四角形のものは存在しない。」という言葉は間違いです。

同じように曲線的なデザインで知られたルイジ・コラーニ(1970年代に一世を風靡したインダストリアル・デザイナー)の「自然界に直線はない。」という有名な言葉も間違いです。なぜなら自然界には四角形やその他の多角形があり、それらは直線から成り立っているからです。

どうも「四角形」からは「どんなものにも例外がある。」という教訓を読み取れそうな気がしてきました。ただし、論理学的には「例外のない規則はない」という例外のパラドックスがあります。その命題は自己矛盾に陥っており、「三角形」の時の無限と同じように、またもや「知の限界」を知らしめる事になりそうです。

三角形も四角形も単純なカタチでありながら、実は、そこには禅のような深い意味が込められており、深読みしすぎると「知の限界」に陥ってしまうようです。
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