一昨日の夕方、NHK金沢放送局の「かがのとイブニング」を見ていると、4Kハイビジョンの話題をやっておりました。その中で、普通に撮影した白山の映像でははっきり見えないものが、画像補正をする事によって、くっきり見えるようになる話題をやっておりました。さらに、ブナオ山観察舎の映像でも画像補正によってツキノワグマの鮮明な姿を見る事ができました。4Kカメラの威力を知りました。
今日のブログの話題は「見えないものを見る」です。何となくいい感じのタイトルだと思います。
「見えないものを見る」という事は何気ない日常から最先端のサイエンスの世界まで、共通する望ましい態度だと思います。日常生活では、例えば、家の中のソファーの下などにたまったホコリやエアコンの中のカビを見ると掃除したい気持ちになると思います。掃除という作業は見えないところが重要なのかもしれません。最先端科学の世界では、例えば、つい最近、ダークマターの可視化に成功したというニュースがありましたし、可視光線では見えない天体を観測する電波天文学の成果も次々と出てきています。
「見えないものを見る」というテーマはどうも、あらゆる分野の可視化というテーマに繋がっているようです。(このブログでは過去に「可視化」というタイトルで一度書いておりました。)
この「見えないものを見る」=「可視化」というテーマではその技術・テクノロジー的な話題になりがちです。それもそのはず、冒頭の4Kカメラのようにそのようなハイテクの威力が必要なのです。人は望遠鏡や顕微鏡などのテクノロジーを進化させながら科学を発展させてきました。そのようなテクノロジーでは空間的なサイズ制限を拡張しました。また、高速シャッターカメラやタイムラプス撮影では時間的な面で可視化の幅を拡張させたと言えます。それから医学のレントゲンやCTやMRI等もその典型です。さらに、コンピュータシミュレーションという手段で素粒子の世界から大宇宙までの様々な現象を可視化する事も可能となる時代になったと言えます。「見えないものを見る」事で科学は進化しております。
このブログは石のブログです。もちろん、石の世界でもハイテクを利用する事によって「見えないものを見る」研究は行われていると思います。ただ、私は石の研究者ではありませんし、そのようなハイテクを使う機会もありません。(使えるのはルーペというローテクぐらいです・・・)
そんな私が「見えないものを見る」際に使えるのは自らの想像力です。
今日の写真はブラジル産の紫水晶です。
何かの鉱物結晶のヌケの周りにフラワー状に水晶が取り巻くように生えています。何と味のある形状でしょうか!
この魅力的なものを見ていると素朴にそのヌケ跡は何だったのだろうか?という疑問が湧いてくると思います。それは、水晶よりも脆く風化しやすい鉱物であっただろうと想像できます。そこで私は想像力を使い、その六角状の方解石の結晶を想像します。それは私なりの「見えないものを見る」行為なのです。
その想像の後は、そのような六角柱状の方解石のサンプル現物を探さなければなりません。そして、そのような標本は店の棚にありました。
上の写真もブラジル産の六角柱状の方解石の結晶が紫水晶のクラスターの上に生えています。これも味のある共生標本だと思います。
この二つの標本を見ていると、恐らく、六角柱状のヌケ跡は方解石だったのだろうと、想像できると思います。
何となく「見えないものを見る」事ができたような気がします。
最後に、もうひとつだけ非常に魅力的な「見えないものを見る」事ができる場所を紹介します。それは飛騨小阪の滝の中にある「滝のない滝壺」です。そこは滝壺だけが残っており、滝そのものは浸食により無くなってしまった場所です。数万年前にあったであろう落差の高い大きな滝を想像しながらそこに佇んでみたいものです。私は実際に行ったことが無いのですが、そこへは小坂の滝めぐりの「しょうけ滝コース」で見る事ができるようです。いつか見てみたいものだと思っております。