ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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見えないものを見る

2017-05-26 12:11:33 | 日記・エッセイ・コラム
一昨日の夕方、NHK金沢放送局の「かがのとイブニング」を見ていると、4Kハイビジョンの話題をやっておりました。その中で、普通に撮影した白山の映像でははっきり見えないものが、画像補正をする事によって、くっきり見えるようになる話題をやっておりました。さらに、ブナオ山観察舎の映像でも画像補正によってツキノワグマの鮮明な姿を見る事ができました。4Kカメラの威力を知りました。

今日のブログの話題は「見えないものを見る」です。何となくいい感じのタイトルだと思います。

「見えないものを見る」という事は何気ない日常から最先端のサイエンスの世界まで、共通する望ましい態度だと思います。日常生活では、例えば、家の中のソファーの下などにたまったホコリやエアコンの中のカビを見ると掃除したい気持ちになると思います。掃除という作業は見えないところが重要なのかもしれません。最先端科学の世界では、例えば、つい最近、ダークマターの可視化に成功したというニュースがありましたし、可視光線では見えない天体を観測する電波天文学の成果も次々と出てきています。

「見えないものを見る」というテーマはどうも、あらゆる分野の可視化というテーマに繋がっているようです。(このブログでは過去に「可視化」というタイトルで一度書いておりました。)

この「見えないものを見る」=「可視化」というテーマではその技術・テクノロジー的な話題になりがちです。それもそのはず、冒頭の4Kカメラのようにそのようなハイテクの威力が必要なのです。人は望遠鏡や顕微鏡などのテクノロジーを進化させながら科学を発展させてきました。そのようなテクノロジーでは空間的なサイズ制限を拡張しました。また、高速シャッターカメラやタイムラプス撮影では時間的な面で可視化の幅を拡張させたと言えます。それから医学のレントゲンやCTやMRI等もその典型です。さらに、コンピュータシミュレーションという手段で素粒子の世界から大宇宙までの様々な現象を可視化する事も可能となる時代になったと言えます。「見えないものを見る」事で科学は進化しております。

このブログは石のブログです。もちろん、石の世界でもハイテクを利用する事によって「見えないものを見る」研究は行われていると思います。ただ、私は石の研究者ではありませんし、そのようなハイテクを使う機会もありません。(使えるのはルーペというローテクぐらいです・・・)

そんな私が「見えないものを見る」際に使えるのは自らの想像力です。

今日の写真はブラジル産の紫水晶です。



何かの鉱物結晶のヌケの周りにフラワー状に水晶が取り巻くように生えています。何と味のある形状でしょうか!

この魅力的なものを見ていると素朴にそのヌケ跡は何だったのだろうか?という疑問が湧いてくると思います。それは、水晶よりも脆く風化しやすい鉱物であっただろうと想像できます。そこで私は想像力を使い、その六角状の方解石の結晶を想像します。それは私なりの「見えないものを見る」行為なのです。

その想像の後は、そのような六角柱状の方解石のサンプル現物を探さなければなりません。そして、そのような標本は店の棚にありました。



上の写真もブラジル産の六角柱状の方解石の結晶が紫水晶のクラスターの上に生えています。これも味のある共生標本だと思います。

この二つの標本を見ていると、恐らく、六角柱状のヌケ跡は方解石だったのだろうと、想像できると思います。

何となく「見えないものを見る」事ができたような気がします。

最後に、もうひとつだけ非常に魅力的な「見えないものを見る」事ができる場所を紹介します。それは飛騨小阪の滝の中にある「滝のない滝壺」です。そこは滝壺だけが残っており、滝そのものは浸食により無くなってしまった場所です。数万年前にあったであろう落差の高い大きな滝を想像しながらそこに佇んでみたいものです。私は実際に行ったことが無いのですが、そこへは小坂の滝めぐりの「しょうけ滝コース」で見る事ができるようです。いつか見てみたいものだと思っております。



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誤訳

2017-05-19 15:25:22 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「誤訳」です。このブログでは初めての話題になると思います。

今日も天気が良すぎるせいか?静かな平日を過ごしております。こんな日はゆっくりとブログを書けます。

私は今朝からある一冊の新刊本を読んでおります。その本を読んでいて、石の名前について、基本的なことながら、初めて知った事が載っておりました。

それは「橄欖石」の命名が誤訳だったという事実です。

「橄欖石(かんらん石)」の英名「olivine」はオリーブにちなんだものだと思っておりましたが、実はオリーブと橄欖はまったく別の植物だったのです。オリーブはモクセイ科で橄欖はカンラン科でした。幕末の日本に西洋からオリーブの実が入ってきたときに、その外見から中国の橄欖と思い込んでしまった人が、「オリーブ」の訳語として「橄欖」をあててしまったのだそうで、その誤訳が石の命名にも適用されてしまったわけだそうです。

その誤訳は誤訳のまま定着しています。そのような例は他にもあると思います。言葉の世界には間違いが間違いではなくなってしまうという不思議な現象がありますので、しょうがないのかもしれません。

そうそう、石の名前で言えば、「方解石」も変な名前ですね!本来なら「菱解石」といった言葉の方が相応しいと思うのですが、「時すでに遅し」でしょうか?(結晶学、鉱物学の世界では2,3年前に100年以上の時を経て「斜方晶系」は「直方晶系」に変更されました。)「方」の意味と「菱」の意味を鑑みて、直しても良いような気がします。

石の名前も今一度、再チェックが必要なのかもしれません。(ただ、「水晶」と「石英」の名前は今のままで良いようにも思えます。)

石の名前も言葉の世界の現象なので、何が正しいという事は無いのかもしれませんが、鉱物名(誤訳を含めて)、宝石名、パワーストーン名、俗称、等々の混迷をスッキリさせたい気がしております。

最後に今朝から読んでいる本は「三つの石で地球がわかる」(講談社ブルーバックス 藤岡換太郎)でした。
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円筒形

2017-05-18 13:41:21 | 日記・エッセイ・コラム
昨日は店の定休日で、天気も良かった事から、久しぶりにクルマで遠出しました。今回は富山方面、久しぶりの高速道路ドライブでした。

高速道路を立山インターで降り、まず向かった目的地は上市町釈泉寺の円筒分水槽です。そこは以前から気になっていた所でした。私は上市のイラスト観光マップを持っていたので、その場所はすぐわかると思っていました。ところが、そこは観光地でも何でもない施設で、カーナビの無い私のクルマでは少し迷ってしまいました。(近辺の住民に道を尋ねても曖昧な道案内でした。さらに近くにあるダムの関係者に尋ねてみても、その存在を知らないという回答でした。)連れのスマホの地図情報でなんとか辿り着けました。

せっかくの休日で、本来ならしっかりとした観光地に行くべきところが、私の偏屈な趣味に付き合ってついてきているのです。ありがたいと思います。

過去を思えば、私の独身時代は、母がこのような役割だったと思います。息子の趣味に付き合って、滝や洞窟や鉱山の坑道まで付き合ってくれました。ありがたい事だと思います。

今日の最初の写真はその円筒分水槽です。





この円筒形の造形物には何か魅かれるものがあり、さらに、そこを流れる勢いのある水の流れにはある種の感動をおぼえます。

実は、この種の円筒分水の施設は全国各地にあるようで、Webの画像検索で、各地の施設の写真を見る事ができます。私はこの種の土木施設も好きな方です。(昨日、たまたまですが、テレビのあるニュース番組の中で、今年、日本遺産に認定されたという兵庫県の明延鉱山の選鉱施設である神子畑選鉱場跡の紹介をやっており、その中に円筒分水に似た雰囲気の施設があって、非常に面白いと思いました。)

昨日は、本当は隣の稲村まで足を延ばして、気になっている菊花状水晶の露頭を探したいところでしたが、それは止めて、その後、つるぎ恋月の期間限定温泉付きランチに行きました。

温泉に入った後はランチバイキングでした。昨日は特別料金期間中だった事もあり、大勢の人で混み合っていました。ただ、我々二人は、周りの人たちの圧倒的な食欲に驚いてしまいました。どうも、何となく、来るべきところを間違えてしまったようで、早めに退散しました。

そうそう、これは石のブログです。

円筒形と言えば、やはり円筒鉱ですね。





上の写真はボリビア産の円筒鉱です。私はこの円筒鉱も好きな鉱物のひとつです。他の鉱物には無い円筒状の結晶が気に入っております。(実は、昨年、円筒鉱に次いで2番目となる「メレラニ鉱 (Merelaniite)」が発見されたそうですが・・・)

円筒形の結晶をする鉱物は少数派です。だからこそ、鉱物コレクターにとっては必携だと思います。
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格言

2017-05-12 12:27:42 | 日記・エッセイ・コラム
私は現在、お客さんの居ない店番中に、「ジオコスモスの変容 デカルトからライプニッツまでの地球論」(勁草書房 著者:山田俊弘 編集:ヒロ・ヒライ)を読んでいます。その本は近代科学が始まり、科学革命が進行した17世紀の地球観の変容に関する内容なのですが、鉱物の結晶面における面角一定の法則で有名なニコラウス・ステノを案内人にデカルトやスピノザやライプニッツといった哲学史上のビッグネームの人達の地球論を辿る内容になっており、大学で哲学を学び、現在、鉱物の店を営んでいる者にとっては大変興味深い思いをしながら読んでいます。

まだ、読み始めたばかりです。ジオコスモスとはマクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(人体)との中間的な「地球世界」を意味しているのですが、17世紀という古い時代の世界観にもかかわらず、そこには知的好奇心を満足させる内容が満載です。

その本では、まず、冒頭にステノの生涯が紹介されております。そして、その最後に今日のブログのタイトルにした格言が引用されておりました。

「見えるものは美しい、知られるものはより美しい、未知のものはさらにもっとも美しい」

何と意味深い言葉でしょうか!!それはステノが到達した境地を表現するとされていますが、ステノ本人の意味したものを超えて、様々な分野で様々な解釈が可能な名言だと思いました。

何と!私は還暦を過ぎてから、すばらしい格言に出会ってしまったようです。

思うに、私の若い頃の読書経験では、人生経験が浅かったという事もあって、フランソワ・ド・ラ・ロシュフコーやアンブローズ・ビアス等のアフォリズムに親しんだ経験があります。それらの格言には知的な面白みがあったと思います。ただ、今思うに、それらの人間界の格言には今はそれほど興味がありません。

現在の私の関心事は主に鉱物的なジオコスモス関連にあります。そういう意味で、そのステノの格言には唸ってしまいます。

そのステノの格言を私的に鉱物趣味的解釈をしてみます。

まず、「見えるものは美しい」とは、そのものズバリ、鉱物結晶は見た目に美しいのです。
次に、「知られるものはより美しい」とは、鉱物の形の結晶学的な理解や鉱物の色に関する色彩科学的な理解が鉱物をより美しくするのです。
そして、「未知のものはさらにもっとも美しい」とは、まだ知られざる鉱物の多くの諸側面の諸様相の神秘性がもっとも美しいのです。

如何だったでしょうか?

この格言は鉱物だけではなく、宇宙から素粒子の世界まで、あらゆるレイヤーで有効性があるような気がします。

そういえば、今朝の北陸中日新聞の一面には「未知の素粒子と遭遇か」という見出しで物理学の記事が載っておりました。未知の素粒子や宇宙を満たしているという暗黒物質やダークエネルギーといった存在は「未知のものはさらにもっとも美しい」のかもしれません。

そう、以前にも書いたような気がしております。「世界は未知で満ちている。」



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光彩

2017-05-05 12:46:56 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「光彩」です。「光彩」とは、きらきらと輝く美しい光の事で、石好きさんならずとも、その存在は気になる現象だと思います。

「光彩」はいわゆる構造色の一種です。それは、宇宙や地球、気象や地質、鉱物や動植物、等々、自然界のあらゆるところに見られる現象です。もちろん、人工物にも見られます。その美しい色彩現象には、その発生原理の理解を越えて、万人が魅せられてしまうと思います。

現在、「石の華」の上の3階にある「玄羅アート」で開催中の「曜変天目への道」(九代・長江惣吉展)会場では、非常に魅力的な「光彩」を見る事が出来ます。

今日の写真はその会場で撮らせてもらったものです。それらの中から2枚だけ紹介したいと思います。

最初はやはり、曜変天目です。



これは長江さんの現時点での再現作品(非売品)です。ご本人はこれでもまだまだだとおっしゃっていましたが、素人目には完成間近のように見えてしまいます。ただ、これからは数学の漸近線的な近付き方をしていくのかもしれません。大変な事だと思います。

もう一つは曜々盞です。



これは長江さんの直近のオリジナル作品です。今回の魅力的な作品群の中で、私的に最も気になった作品です。虹色の禾目(のぎめ)とでも言いましょうか?一目惚れしてしまいました。この作品は目の錯覚なのでしょうか?底の部分が立体的に少し浮いて見えました。長江さんはホログラム効果という言葉を使いましたが、それが神秘的で尚更気に入ってしまいました。ただし、この作品は初日に売約済みになっておりました。

陶芸の世界の「光彩」現象も石の世界の様々な「光彩」現象にも関係する気になる現象だと思いますので、今後も目が離せません。



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