「斑入り(ふいり)とは、植物においてもともと単色で構成される組織が、本来持っているべき色、つまり緑色の葉の一部が白や黄色あるいは赤の模様になることを指すことが多い。」(Wikipediaより)
私は、斑入り(ふいり)という言葉を知りませんでした。
先日、店に置いてある観葉植物(ポトス)の葉の色が見事に緑と白に分かれており、その現象が面白いと思い、その写真を撮りました。
上の写真がそれです。その写真を常連のTさんに見せると、「それは斑入り(ふいり)ですね。」と教えてくれました。
この現象は、どうも突然変異の一種らしいのですが、店の環境が、このような突然変異が生じるような環境なのでしょうか?
当店は、ポルテ金沢というビルの1階にあり、その館内の全館空調の中におり、開店中は、人間にとっては年中快適な気温管理がなされております。(夜間はシャッターが閉まっておりますので知りませんが・・・)
この環境は植物にとっても良い環境のはずですが・・・
いずれにせよ、斑入り(ふいり)という突然変異が生じたようです。
ただ、このような色の分離現象は、面白く、その価値を高めてくれたような気がしております。
石の世界で言えば、これはバイカラーに相当すると思います。
面白い事に、この斑入り(ふいり)現象に気付いた直後に、店にあったソーダライトのタンブルの中に、斑入り(ふいり)のようなものを発見しました。
上の写真がそれです。
見事に青色と白色に分かれております。これは石版の斑入り(ふいり)と言えそうです。
このタンブル、見ようによっては、麻雀牌のようにも見えてしまいます。石のマージャンパイ?そのようなものは存在しますでしょうか?
いずれにせよ、植物も石も斑入り(ふいり)は面白いと思いました。
鉱物趣味も長年やっていると、マンネリ化のような状態になる事があります。このところ、鉱物に対しても「ときめき」が薄れているような気がしておりました。長引いていたコロナ禍もあってか、以前はあんなに張り切っていたミネラルショーにも行かない事に慣れてしまっており、鉱物的なときめきが欲しいと思っておりました。
そんな中、Web上で、偶然にも、ある1枚の鉱物写真に出会ってしまいました。
今日の写真は、その写真です。(無断拝借してしまいました。)
美しい方解石の石の華と水晶の共生です。思わず「共生美」という言葉が湧いてきました。私の中の鉱物的なときめきは失われていた訳ではなかったようです。
で、店の中にある共生美を感じられるものを探しました。店内には多くの共生美がありましたが、例えば、アメシストと方解石のような共生美は当たり前すぎてあまり面白くありません。古くからあるものには、どうしてもときめき感が薄れてしまっております。
で、比較的新しいものを出す事にします。
上の写真は、ペルー産の四面銅鉱、水晶、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、などの共生標本です。小さいながらも共生美が詰まっていると思います。
もう一つ、これは長らく店の奥の方に仕舞い込んでいた標本です。
有名な稲倉石鉱山産の菱マンガン鉱ですが、菱マンガン鉱の結晶面に重晶石の結晶がちょこっと付いており、愛らしい共生美を醸し出しております。
これらのような共生美標本を見ると、私の中の鉱物的なときめきは、まだまだ、残っていたと思いました。
私はこれまで、オーストラリア・アジア テクタイトの色は黒だと思い込んでいました。
ところが、そんな思い込みを覆す現象に遭遇しました。
先日、久しぶりに常連のDさんが来店し、店にある大量のオーストラリア・アジア テクタイトの箱の中から、一つの小さな欠片を取り出して、店に置いてあるLEDライトで照らして見ました。すると、それは透けて赤色に見えました。我々は、その現象に驚き、他のテクタイトにも同じようにやってみました。
その結果、大きなものや厚みのあるものや球状のものは透けることなく黒のままでしたが、薄く平べったいものや小さな欠片の中には透けて見えるものが、それなりの確率で存在しておりました。それも赤色だけではなく、緑色や黄色のものもありました。全体的には、透けるものの中では、大雑把に言うと、赤色率が高く、緑色と黄色率は低いようでした。それと、青色のものも探しましたが、短時間の探索ではみつかりませんでした。
考えてみると、テクタイトの色は衝突した隕石(小天体)の色ではなく、地球の地表の岩石が衝突の巨大エネルギーに因って瞬間的に熔かされ大気中で固まったガラス質の物質なので、落下地点の様々な岩石が熔解して混じり合う訳ですから、その偏在した混じり方で、成分の揺らぎも生じただろうし、その透過性も変化したのだろうと想像できます。それらの違いが、形や色の違いになったのだろうと思われます。
オーストラリア・アジア テクタイトの面白さは、その広範囲の散らばり方だけではなく、形のバリエーションと黒だけではない透過光によるカラフルな色のバリエーションにもあったようです。
それはクレーターの謎だけではなく、テクタイトそのもののバリエーションの謎もあり、安価ながらも貴重な石だったという事を物語っていました。
今日は「面白い日本式双晶」(2023.02.10)に続き、「面白い日本式双晶2」とします。
先日、東京のKさんから届いた本の中に「Lapis」というドイツ語の鉱物雑誌が一冊入っておりました。私は、「Lapis」の存在は知っておりましたが、ドイツ語がわからないので、これまで一冊も持っておりませんでした。
今回送られてきた「Lapis」の特集は「水晶の日本式双晶」だったので、非常に興味深く思いました。
上の写真がそれです。さすがに鉱物先進国であるドイツの鉱物雑誌です。載っている標本は全て一級品ですし、これまでに見た事のない標本が数多く載っておりました。
上の写真は、その特集の一部です。
その中に、ちょっと気になる頁がありました。
上の写真がそれです。
それはシトリンの日本式双晶ですが、こんな形態も日本式双晶らしいのです。
それを見て、思ったのですが、現在、店にある水晶が気になりました。
これも日本式双晶でしょうか?
さらに、これもそうなのでしょうか?これと同じようなものは他にも複数あります。
これまでの日本式双晶のイメージが少し揺らいでしまいました。
もしかすると、日本式双晶の概念は、これまで思っていたよりも大きく拡張しなければならないのかもしれません。
先日、東京のKさんから、またもや、うれしい本が届きました。
上の写真がそれです。これは、昭和12年に発行された若林博士還暦記念「若林標本」という本で、東京帝国大学に寄贈された鉱物コレクションの目録です。
この本には日本三大鉱物標本コレクションのひとつである若林鉱物標本の全貌が載っており、非常に貴重な一冊だと思います。
実は、この本と一緒に何冊か非常に興味深い本や資料も同梱されておりました。
それらは現在進行形で読解中なのですが、その中で、私が非常に面白いと思った事をひとつ紹介したいと思います。
上の写真がその一つ、昭和17年に発行された「東京帝國大學工學部冶金鑛山同窓名簿」の表紙のコピーです。
上の写真は、明治30年度の一部と明治31年度の部分です。
何と!若林彌一郎の1年先輩に高壮吉が載っておりました。
高壮吉は日本三大鉱物標本コレクションのひとつである高標本(九州大学総合研究博物館蔵)の高壮吉です。
日本の三大コレクションの内の二つは、狭い間柄の中で成り立っていた!という事実です。
恐らく、彼ら二人は、知った仲であったろうし、もしかすると、深い仲だった可能性もあると思います。
私は、幸運なことに、日本三大鉱物標本全ての現物を見ておりますが、和田鉱物標本は別格として、若林標本と高標本は甲乙つけがたい素晴らしいものだと思っております。
日本の明治期及び大正、昭和初期頃は日本の鉱山開発の最盛期でもあり、現在から思うと信じられない程の名品が多産した奇跡の時代で、それに見合ったしっかりした人材もいたという事を、今更ながら、再認識しました。