今朝の金沢の最低気温は-1.7℃だったそうです。つららができそうな気温です。
今日は「つらら」です。
つららは氷柱と書きます。昨年の冬に「氷」のタイトルで何回か書きましたが「つらら」のタイトルでは初めてです。
今朝のNHK総合の「あさイチ」で奥飛騨温泉郷の「青だる」の紹介をやっていました。その青く輝く巨大つららには人工的なつららとは分かっていても感動してしまいます。それらのつららには鍾乳洞の鍾乳石にも似た造形美とつらら独特の透明感のある美しさがあります。
私は「青だる」は見た事がありませんが、秋神温泉の「氷点下の森」には行った事があります。「氷点下の森」も人工的なつららから成る幻想的な氷の世界です。太陽光を通し、透き通ったブルーの色に魅せられた記憶があります。ただ、私が行った数年前は暖冬だったせいか、観光の目玉となっている凍るシャボン玉が見れなかったのが残念でした。
これは数日前に自宅マンションの駐車場で見たつららです。
最近はつららを見る事が少なくなったと思います。小さい頃は冬になると、よくつららを見掛けました。屋根の軒下にできたつららを折って遊んだ記憶があります。その透明なつららには水晶に繋がる美しさがあり、子供ながらにその自然の造った結晶美を愛でていました。
実は、上の写真のつららは自然に出来たものでありません。それは駐車場のスロープに積もった雪を溶かすために人工的に撒かれた水が凍ってできたものなのです。駐車場のスロープの積雪問題は深刻な問題です。その問題の臨時的な救急対応としての散水だったのですが、その副産物としてつららが出来てしまったようです。
「青だる」や「氷点下の森」の人工的なつららも氷点下という過酷な冬の自然を逆手に取って人が創りだした観光スポットです。それは自然と人とのコラボレーションといえるかも知れません。
金沢市内で見れた束の間のつらら、それは密かに存在しました。ただし、すぐに消えて無くなってしまいました。
今日は「八面体」です。
八面体の話題は「正八面体」というタイトルも含めてこれまでにも何度も登場している話題です。
黄銅鉱、四面銅鉱と続いてきましたので、赤銅鉱を登場させたいと思い、そうしようと思いましたが、赤銅鉱の結晶を見ていると、その形である「八面体」というタイトルにしたくなりました。
North Djezkazgan mine Kazakhstan 赤銅鉱(Cuorite)
これは小さいながらも美しい正八面体の形をした赤銅鉱の結晶です。整った正三角形の面が特徴的で、その辺にはカットしたようなエッジがついていますが、これは自然にできたものです。四面銅鉱に見られる自然にできた四面体も美しいと思いましたが、このような赤銅鉱の天然八面体結晶にも結晶ならではの美しさがあると思います。
正八面体は対称性の高い美しい形です。鉱物の等軸晶系の結晶にはそのように見えるものが多く、立方体と共に鉱物界を代表する形だと思います。
Reynolds Co.,Missouri,U.S.A. 方鉛鉱(Galena)
これも外形が八面体結晶をとっている方鉛鉱です。方鉛鉱は普通、六面体結晶が多く、完全な劈開を持つため、割るとサイコロのような立方体の形に割れる事が特徴的です。しかし、方鉛鉱は等軸晶系の鉱物でもあり、まれに八面体結晶になります。この標本はそのまれなケースのものです。
そうそう、八面体結晶をするものではダイヤモンドを忘れてはいけません。ダイヤモンドも等軸晶系の鉱物です。
これは色が黒いながらも八面体結晶をしているダイヤモンドの結晶です。この標本は三角形の一辺が5mmです。小さいながらもダイヤモンドとしては大きい方です。
以前、「セブンシーズ」(No.128 APRIL1999年)という雑誌ですが、ダイヤモンド大陸南アフリカの特集号があり、デビアス社の社宝と言われている616(デビアス本社の郵便番号と同じ)カラットのダイヤモンドの原石の写真を見た事があります。そのダイヤモンドの原石も八面体結晶をしていていました。
Panda Hill mine,mbeya,Tanzania パイロクロア(Pyrochlore)
これはパイロクロアの八面体結晶です。パイロクロアはニオブを主成分とする稀産種鉱物ですが、実は約10種ほどのタイプがあるグループの総称です。この標本が厳密に何であるかはラベル情報からだけでは分かりません。等軸晶系の鉱物には元素鉱物や簡単な化学組成の鉱物が多い傾向があるようですが、このパイロクロアはやや複雑な化学組成を持ちながらも美しい八面体結晶になっています。
八面体の結晶をする鉱物は他にも沢山あります。私が八面体好きという事もあり、今後も度々登場すると思います。
昨日は面白いお客さんがいらっしゃいました。初めてのお客さんです。
そのお客さんは富山からいらっしゃった若い女性です。芸術系の大学生です。何が面白かったかと言うと彼女が背中に背負っていたリュックサックです。そのリュックサックはH・R・ギーガーのエイリアンを彷彿とする形をしておりました。その存在感は抜群でした。
彼女は所謂「石ガール」です。愛石歴は1年半ほどらしく、ちょうど「石の華」の営業歴と一致しています。話をお聞きすると、最初は魚眼石から入り、沸石類がお好みとの事。水晶から入る人が多い中、独自の美意識をお持ちなのだと思いました。
私は彼女のリュックサックが非常に気になりました。H・R・ギーガーは「エイリアン」で有名な芸術家です。「エイリアン」は衝撃的な映画だったと思います。その独特な気持ち悪さは悪夢のような不思議な不快感があり、また同時にある種の美が共存しています。彼女のリュックサックにも同じようなグロテスクとゴシック的な美がありました。
私は店にあるH・R・ギーガー的な石を彼女に出して見せました。
これは粘土質の母岩に埋もれている白鉄鉱です。それは金色の金属的な光沢があり、その形状は何かの骨格のようにも見えます。エイリアンの化石?というような印象があります。
これは三葉虫の化石です。彼女の背負っていたリュックサックの写真はありませんが、この三葉虫の化石のような印象がありました。
これらの石を見た彼女の反応はあまりピンと来ていなかったようです。彼女は小一時間ほどお店を見て、最終的に二つの石を購入されました。
ひとつはやはりインド産の魚眼石です。その写真はありませんが、透明度の高い魚眼石の結晶で、絶妙な角度でクラックが入っており、プリズムのような質感で美しいレインボーが見えるものでした。
もうひとつはスペインのナバフン鉱山産の黄鉄鉱です。その黄鉄鉱の写真もありませんが、シャープな立方体がふたつ絶妙な咬みあい方をしており、その形状を好まれたようです。チョッと違いますが、それに雰囲気の似たものは次の写真の黄鉄鉱です。
ひとつの黄鉄鉱をもうひとつの黄鉄鉱が後ろから咬んでいるように見えます。
違う鉱物ですが、こんなものもあります。
中国 湖北省 太治 産 水晶・魚眼石(Quartz/Apophylite)
これは水晶を魚眼石が後ろから取り巻いています。何とも言えないバランスです。
これらの石を見て、思わず、ある発売禁止になったAKBの写真集の事を想起しました。
私は言いにくいものの、その話をしてしまいました。すると彼女は「それはインターネットで見れます。」と教えてくれました。
彼女はふたつの石を買って帰られました。
昨日は面白い時間を過ごす事ができました。
今日は「四面銅鉱」です。
黄銅鉱も四面体の外形をとりますが、その面はきれいな正三角形ではありません。それに比べると四面銅鉱の結晶は美しい正三角形の正四面体構造になるものが多いです。その三角形には結晶世界の美しい秩序を見て取れると思います。
Casapalca,Peru 四面銅鉱(Tetrahedrite)
これは正四面体構造を取っている四面銅鉱です。天然鉱物なので結晶モデルのように、きれいではありませんが、この結晶からは正三角形の形が見えます。写真は2次元面なので分かり難いかも知れません。肉眼的には3次元的にしっかりした正四面体の形になっております。この四面銅鉱には方鉛鉱が共生しており、いくつかの立方体の方鉛鉱が貫入しています。そのせいかシャープな四面体ではなく、鉱物標本らしいゴツゴツとした印象も兼ね備えています。
Pachapaqui,Peru 安四面銅鉱・水晶(Tetrahedrite/Quartz)
これは四面体結晶が特徴的な安四面銅鉱と微細な水晶が共生したものです。写真に写っている正三角形の面には、さらに正三角形を三等分したカットしたような結晶面が見えます。偶然かも知れませんが、このような形が自然に出来あがる事に興奮してしまいます。
Cerro de Pasco mine,Peru 砒四面銅鉱(Tennantite)
これも四面体構造の特徴的な正三角形の面が美しい砒四面銅鉱です。方鉛鉱や閃亜鉛鉱や微細な黄銅鉱が共生しています。
この標本が砒四面銅鉱である事はラベル情報にたよっています。実は砒四面銅鉱や安四面銅鉱は正四面体を基本とした結晶形を示す一群の銅鉱石グループに属し、砒素とアンチモンは交代可能な固溶体として存在します。固溶体は2種類以上の元素が液体のように互いに溶け合って全体が均一の固相になっているものの事で、見た目では判断できません。
四面銅鉱の組成式には砒素やアンチモン以外の元素も任意の比率で交代可能なケースがあるので、四面銅鉱というグループは鉱物種数的にはかなりの数になると思われます。これからも新種の鉱物が発見される可能性もありますが、それはプロの専門家の仕事です。
私は四面体構造の鉱物が増える事を好ましく思います。
今日も「黄銅鉱4」です。
先日、何度か店にいらっしゃった事のある老人が「私は佐渡金山の金鉱石を持っている。」という話をされました。その金鉱石には幅2cm~3cm位の金の鉱脈が入っていて「昔の鉱山長からもらったものなので本物だ!」という話でした。
私はその話からすぐに「愚者の金」という別名の事が浮かびましたが、その場では話を聞き流しました。黄鉄鉱や黄銅鉱は金色をしているので、しばしば金と間違われます。条痕試験をすれば正誤がはっきりするはずですが、その老人は金であると信じ切っていました。いわく「鉱山長が金だと言った。」
人間の役職や権威は真実の前では何の役にも立ちません。その老人は以前にも普通の黄鉄鉱を「未知の鉱物」という事で見せてくれた事があります。人には自分の持っているものを過大評価してしまう傾向があるようです。
黄銅鉱の魅力はその金色にあるかも知れません。金色には人を惑わす力が宿っていそうです。
今日の黄銅鉱は敢えて金色ではない黄銅鉱を出します。
Dashkesan mine,iron deposite,Minor Caucasus,Azerbaijan 黄銅鉱(Chalcopyrite)
これは三つの黄銅鉱の四面体結晶が絶妙なバランスで繋がっています。母岩部分の白い所は微小の水晶です。母岩部分にも他の小さな四面体結晶が付いています。これらの黄銅鉱の表面は酸化して金色ではなくなっていますが、内部は恐らく金色のままです。表面は青く黒ずんでいますが、よく見ると虹色が見えます。
Dashkesan Rayonu,Azerbaijan 黄銅鉱(Chalcopyrite)
これは巨大な黄銅鉱の四面体結晶です。母岩部分には方解石と微細な水晶が張り付いて黄銅鉱を囲っています。この黄銅鉱の表面には緑青がコーティングされておりますが、内部は金色のはずです。
Dashkesan mine,Azerbaijan,Kavkaz 黄銅鉱(Chalcopyrite)
これはとんがり帽子のような雰囲気の形をした黄銅鉱です。黄銅鉱の結晶としては巨大な方で、表面は青黒く酸化しておりますが、欠けている部分から内部は金色のままである事が分かります。
Casapara mine,Huarochiri Pro,Peru 黄銅鉱(Chalcopyrite)
これは黄銅鉱の葉片状、板状結晶の群晶です。この標本の表面も酸化により汚れたようにも見えますが、その内側からは黄銅鉱独特の金色が見えます。
これらの黄銅鉱の見た目の色は地味な感じがしてしまいますが、実は内側に鮮やかで派手な金色を秘めているのです。そのように思うと、何と魅力的な石達ではありませんか!