ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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チワワ砂漠

2014-07-31 14:08:30 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「チワワ砂漠」です。以前から鉱物的に気になっていた砂漠です。

昨日、録画していたNHK-BSプレミアム「体感!グレートネイチャー 純白の砂漠 誕生の謎~北米大陸 チワワ砂漠~」を非常に興味深く見ました。番組ではホワイトサンズという純白の砂丘や奇妙にゆがんだ岩石地帯や硫酸でできた巨大洞窟などが紹介されていました。それらは奇跡の集積によって生まれた究極の奇観ともいうべき絶景の数々でした。

日本の自宅で、それもクーラーの効いた快適な環境で、灼熱の砂漠や危険な山の尾根や神秘的な巨大洞窟の内部の映像を見れる事に幸せを感じます。自宅のテレビは4Kテレビではありませんが、普通のハイビジョンTVでも十分満足できます。良い時代だと思います。

さて、その番組ではレイクルセロというセレナイトの結晶が地面に無数散らばっている映像が出て来ました。ホワイトサンズの純白の砂はそこから風で飛ばされてきたのです。壮大な地球の営みを垣間見たような気になりました。さらに後半に出てくるカールスバッド洞窟の映像も貴重なものだったと思います。その洞窟を象徴するモンスターという二つの巨大石筍はさることながら、洞窟の入り口付近で上から降り注ぐ光の筋の映像は圧巻でした。私も一度、北九州の平尾台の牡鹿洞で光の柱を見た事があります。それは非常に神秘的な光景でした。その時はカメラを持っていなかったので、その写真や動画を撮れなかったのですが、今回はTVで同じような光景を見る事ができたのでうれしかったです。

また、最後に登場したコットンウッド洞窟の石の華を想わせるジプサム・フラワーや波のようにウェーブする結晶、セレナイト・ニードルという細長い針状結晶とニードル・ネストという結晶集合体も興味津々でした。それと何と言っても長さ2m以上もあるジプサム・シャンデリアは圧巻でした。

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?Chihuahua Mexico 石膏(Gypsum)


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?メキシコ ナイカ鉱山 産 透石膏(Selenite)

石膏の巨大結晶と言えば、何と言ってもメキシコ(チワワ州)のナイカ鉱山産のセレナイトが有名ですが、結晶のタイプが違うものの同じような巨大さには何か共通するものを感じてしまいます。そう言えば、アメリカ・ニューメキシコ州のレチュギヤ洞窟の石膏の写真を見た事があるのですが、そのレチュギヤ洞窟の石膏の結晶にも形・サイズ共に似ていると思いました。それらの洞窟は比較的近い距離にあるようです。恐らく、同じような成因が影響しているのだろうと想像できます。

実は、それらの巨大洞窟や石膏の結晶は、およそ1500万年前に石灰岩地帯に地下から上ってきた火山活動と特殊な微生物が造り出した硫酸と言う副産物から生成されたようです。まさに鉱物と生物の共進化の産物なのです。そう言えば、メキシコのヴィラ・ルース洞窟のイエロー・ローズという硫黄の結晶集合体の映像も思い出します。そのヴィラ・ルース洞窟やイエロー・ローズも硫化水素を栄養源とするバクテリアが硫酸を生じ、その硫酸によって石灰岩が溶かされた結果できたものだったと思います。鍾乳洞を形成するのは水だけではないのです。面白いのはそこに微生物の生命活動が関与している事です。別の話ですが、黄鉄鉱化したアンモナイトの化石の生成にはある種のバクテリアが関与しているのではないか、というような話もあります。そのように考えると、この地球の大進化はやはり鉱物と生物の相互作用で成り立っている、という事が理解できます。

チワワ砂漠の映像を見ながら、鉱物と生物との営み、生きている地球の事を想いました。

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ミネラルショー

2014-07-28 15:43:09 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「ミネラルショー」です。過去に「ミネラルショー」という言葉が登場する記事はたくさんありましたが、「ミネラルショー」そのもののタイトルは初となります。

本題の前に、最近はブログ更新のペースが落ちています。それはFBなどのSNSの方にシフトしているからではありません。前にも書いたかもしれませんが、私はSNSにはそれほど興味はありませんし、SNSの仕組みやビジネスモデルが好きではありません。ブログはお店の営業中に書いておりますので、当然の事ながら来客がある時は接客が優先されますので、ブログを書けるのは誰もいない時だけです。そして、ブログはライブだと思っておりますので、タイミングや時期がずれた話題に関しては書く機会も逃してしまいます。また、このブログ人のサービスが終了してしまうという事実も書く意欲が減少気味になっている理由のひとつでもあります。

さて、「ミネラルショー」です。もしかすると私の鉱物趣味は「ミネラルショー」から始まったかもしれません。今思うに、サラリーマン時代に福岡支社勤務を終え、東京に引っ越した1995年の新宿ショーに行った時からだったような気がします。「ミネラルショー」ではそれまで見た事もない多くのすばらしい鉱物結晶を見て妙に興奮してしまった憶えがあります。それも当時は比較的安価に良品を購入できましたので、私の鉱物コレクションはその後次第に増えていきました。ただ、当時のミネラルショーは東京では新宿ショーと池袋ショーの2つだけでした。他には大阪と京都と名古屋だけだったと思います。東京以外のミネラルショーにも行くようになったのは2001年に名古屋に引っ越してからだったと思います。

その「ミネラルショー」、今では何と!全国で22あるようで、さらに来年は5つも増えるらしいのです。このような状況はどう見ても乱立としか思えません。マイナーな趣味だと思っていた鉱物趣味もメジャーになりつつあるのでしょうか?そういえば、鉱物本の新刊もまだ続いています。ただ、そのような新刊本の中には買って失敗したと思うような本もあります。鉱物趣味の浸透や拡大は望ましい現象だと思いますが、同時に平均的なレベルの低下もともなってしまうようです。もう既に終わってしまったと思われる一時のパワーストーンブームも相対的なレベル低下という弊害をもたらしたと思います。鉱物趣味はファッションではありません。そこには健全な科学的精神が求められます。はたして、「ミネラルショー」の乱立という現象は望ましい現象なのかは分かりません。

では、金沢での「ミネラルショー」は可能でしょうか?残念ながら、現状では難しいような気がします。ここ金沢では大半の石のお店はファッション化しております。ある店では原石の売り上げが全国一少ないらしい、という話を聞きますし、閉店する店の話も聞こえて来ました。どうも鉱物趣味に関しては全国的な平均レベルに達していないようです。「石の華」のような鉱物標本店はまだオンリーワンです。「石の華」はまもなく3周年を迎えますが、半分趣味でやっているような状態で続いています。要するに本格的な鉱物趣味の人口が少ないのです。

そのような現状を鑑みるに、金沢ミネラルショーなるものの実現性は少ないように感じています。今後はどうなるかは分かりませんが、当分は難しい、とみるのが妥当なところだと思っています。

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2014-07-23 14:06:31 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「光」です。このブログでは「光」という文字が出てくる記事は先日の「光速」なども含めて数多くあります。ただ、タイトルとして「光」は初登場となります。

先日、「光とは何か」(宝島社新書 江馬一弘 著)を読みました。「光」に関して非常に丁寧に分かり易く書いてありました。「光」は身近な存在でありながら謎に満ちた存在だと思います。そのような「光」の不思議と正体について物理的に分かり易く書いてあったと思います。この本を読んだ後、私も自分なりに興味を抱いていた「光」に関して、自分なりに理解を深める事が出来たと思います。

で、この本を読み終わった現在、「光」という存在の正体がよく分からなくなりました。「光」の性質に関しては既存の知識の再確認や新しい知見が増えた事は確かなのですが、「光とは何か」に関しては正直よく分からないままなのです。

まず、「光」とは電磁波の一種であり、身近な七色の可視光は波長の幅が決まっており、その両端にある赤外線と紫外線の一部を「光」として捉えてよさそうです。それは地球の大気には一部の電磁波だけを通す「窓」があいており、「大気の窓」という波長領域があり、人間の目が可視光を感知できることと深い関係があるのです。それはどうも「大気の窓」を通して地上に降り注いでくる可視光が見えるように、生物の目が進化して、それを人間も受け継いでいるからのようです。

また、「物質の中で電子が振動すると、光(を含めた電磁波)が生まれ」、「原子の中で電子を軌道ジャンプさせることで光を生み出す」ようです。また、「光」は「波でもあるが、粒でもある」という二面性をもっています。「量子」としての「光」には理解しにくい事が多々あります。例えば、光子の不変質量がゼロである事。素朴に質量のない粒とは理解に苦しみます。ニュートリノに質量があった事はスーパーカミオカンデの検出器で発見されました。素粒子論では粒子と反粒子が出会うとそれらは消滅します。どうもそれらは光のエネルギーになるようです。質量・エネルギー保存の法則です。ただ、素粒子論や宇宙論の世界ではそのような大原則は無視されつつあるようです。そもそも真空のゆらぎから物質や宇宙が生じてきたという話はそう簡単に理解できる事ではありません。「光」も飲み込むというブラックホールの存在も不思議な存在です。物理現象にはあらゆるところで「光」が出てきますが、正直、「光」はよく分かりません。

ひとつ認識を新たにした事があります。それはこのブログの「カラーチェンジ」の時に書いてしまったのですが、「カラーチェンジ」する石は石そのものは変化しない、というような事は間違いだった、という事です。それは「光」によって「カラーチェンジ」するこちら側の認識が変わるだけではなく、「光」が当たる事によって石そのものも変化する、という事です。確かにブラックライトで変色する蛍石やハックマナイトのような光る石は石そのものも変化しています。光が物質を変化させているのです。良く考えてみると植物の光合成や太陽光発電や光触媒なども「光」を当てる事によって物質・エネルギー変化を起こしている現象です。そういう意味で石の「カラーチェンジ」も人間の視覚の変化だけではなく、石そのものの変化と考えるべきだったと思います。紫外線によるアメシストやクンツアイトの退色も同じです。

石に限らず、森羅万象のものは常に変化しています。変わらないものはないのです。それは「光」も同じです。例えば、ミクロのレベルでは鏡に入射した光と、鏡に反射した光とは別のものだそうです。空気中の光と水面で屈折して水中を進む光とは、やはり別のものになっている、と言えます。

石には魅力的な「光」効果がたくさんあります。それらは「光」を当てる事によって現れます。そして、どうもその「光」によってその石も変化しているようです。

「光」の事を考えながら石を見ていると石の見かたが変化してしまいました。

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鉱物のすすめ

2014-07-16 15:15:28 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「鉱物のすすめ」です。「鉱物のすすめ」とは石川県鉱物同好会が北陸中日新聞・石川県版で毎月第二土曜日の朝刊で連載している記事のタイトルです。このブログでも過去8回登場しております。ただ、今更ながらこのブログのタイトルにするのは初めてです。

このところ、このブログの内容が難しく写真も少ないので読む気がしないという声が聞こえて来ました。では、何か石の写真を出そうと思っていたところ、ちょうど先週掲載した写真がある、と思いました。

Photo

上の写真が今月分の「鉱物のすすめ」に出した写真です。これは私の親戚筋にあたる方のお宅の庭に放置されていたものです。当初は薄汚れて黒ずんでいましたが、蓚酸で洗浄しました。この黄銅鉱と水晶は小松の尾小屋鉱山の支山でもある金平鉱山産です。金平鉱山の坑口はその周辺に複数ありますが、そのひとつ三笠山の坑道内から掘り出されたものです。このサイズのものはズリ場では中々見つかりません。水晶の欠けが多いのでそれほど魅力的に見えませんでしたが、良く見るとⅤ字状の双晶のように見える部分があります。他にも数か所、同じように見えるものがあります。日本式双晶?と思ってしまいましたが、詳しく調べておりませんので違うかも知れません。双晶には何種類かありますので、もしかするとそのどれかかもしれません。

Photo_2

上の写真は先月の「鉱物のすすめ」に出した写真です。左右は蓚酸で洗浄する前と洗浄後の姿です。洗浄後の黄鉄鉱は肉眼ではもっとキラキラして輝いております。

その昔、鉱山が稼働していた頃はこのようなサイズのものがゴロゴロしていたようです。今回は意外にも身近なところでこのようなものが見つかりました。恐らく、今でもどこかに、眠っているものがたくさんあるのだろうと思います。

今後もこのようなものを探し出したいと思っております。

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地球進化

2014-07-15 12:56:02 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「地球進化」です。このブログでは「地球進化」という言葉は意外にも過去3回しか登場しておりませんでした。タイトルとしても初となります。

先日、近くの本屋で気になる本を見つけました。私は毎日アマゾンで鉱物関連の本の検索をする習慣があり、それ以外にも週に何度かは本屋に行く習慣もあります。本屋で見るコーナーは大体決まっており、ブルーバックスの棚もお決まりのコーナーのひとつです。

そのブルーバックスの棚で「地球進化46億年の物語」(ロバート・ヘイゼン著)を見つけました。このようなタイトルの本はこれまでにも何冊もあり、最初はそれほど目新しく思いませんでしたが、著者のヘイゼンというお名前と本の帯にあった「共進化」という文字に反応してしまいました。何か記憶に残っていた名前、そう!以前、日経サイエンスで読んだことのある「鉱物進化論」のRobert M.Hazenの著作だったのです。

その本の原書は2012発行になっておりましたので、ようやく翻訳本が発行されたようです。私はその本を手にとってパラパラとページをめくりました。すると第8章「退屈な」10億年 鉱物の大変化 という章があり、鉱物進化仮説の事が書いてありました。それで、その本を買う事にしました。

実は先週末から昨日まで、お店でお客様のいない時間にその本をじっくり読みました。読後の感想は大満足でした。そして、もしかすると、この本はとんでもない名著かも知れない!とも思ってしまいました。

監訳者解説には新しいパラダイムの誕生とも書いてありチャールズ・ダーウィンの「種の起源」やアルフレッド・ウェゲナーの「大陸と海洋の起源」、ジェームズ・ラブロック「地球生命圏 ガイアの科学」などと肩を並べるエポックメーキングな著作である、とも書いてありました。

この本を読むとこの物語の主役はやはり地球そのものである事が分かります。主役は決して人間ではありません。地球は絶えず変化を続け、無生物と生物が織りなす共進化の歴史をもっています。その地球誕生以来の46億年の地球史の事が書いてありました。そこには海洋、岩石、生命、鉱物、大気、全てが複雑に絡み合い、「共進化」してきました。そして、それは今後も続きます。「地球進化 46億年の物語」というタイトルに相応しい壮大なストーリーを満喫できたと思います。名著に出会ったと思いました。

思うに、この10年ぐらいで、地球史の研究はずいぶん進化してきたように思います。私が鉱物に興味を持ち始めた20年くらい前は分かっていない事だらけだったと思います。月のジャイアント・インパクト説にしろ、6550万年前の隕石衝突による恐竜絶滅説にしろ、それらは定説ではありませんでした。その後の研究者達の努力と分析装置の精密化という武器がそれらの仮説を定説化してくれたのだろうと思います。

そのような仮説の定説化のストーリーも興味深いものがあると思います。今後は「鉱物進化」という仮説も定説化してゆくのだろうと思います。

余談ですが、著者は鉱物学者ですが、実は三葉虫のコレクターでもあるらしいのです。そして、どうも2000以上のコレクションはスミソニアン博物館に寄贈されることになっているそうです。いつか機会があったら見てみたいものだ、と思います。

思うに、鉱物はいつ頃?どのくらいの時間?をかけて出来たのか、というような情報はあまりありません。化石は別としても鉱物には時間軸で考えるという事が欠落しているようです。

鉱物も大きな地球史の中で捉えていきたいと思ってしまいました。

地球進化 46億年の物語 (ブルーバックス)
ロバート・ヘイゼン
講談社
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