今日の話題は隕石です。
?ギベオン隕石(隕鉄)
最初の写真は隕鉄です。
ウィトマンシュテッテン構造という幾何学的な模様が見られます。鉄隕石は地球の内核に相当すると思われます。
?イミラック石鉄隕石
次の写真はパラサイト隕石といわれるもので鉄ニッケル合金中に橄欖石の結晶を有する構造を持っています。
鉄と橄欖岩の融点が違うことから地球上ではありえないのですが、恐らくかつて太陽系の創生期に火星と木星の間にあったであろう惑星の壊れたなれの果てとしての小惑星帯からきたものだろうと思われます。地球でいうならば核とマントルの境目に相当する部分の岩石だろうと思われます。
?Northwest Africa 3095 炭素質コンドライト
最後の写真は炭素質コンドライトといわれる石質隕石です。コンドリュールという小さな粒から成り立っています。この隕石は特別な意味があります。それは太陽大気の元素存在度と共通性の高い組成を示し、太陽系のもともとの化学組成を保持しているといえます。さらに太陽系形成以前の超新星爆発の痕跡も検出されており、宇宙的なロマンがつまった隕石です。
隕石の中には月や火星起源のものもあり、地球にいながらそれらを手にとれるという付加価値があります。また時間軸を宇宙レベルに広げて考えることができる貴重な石です。
昨日は「石は地球からの手紙である」と書きましたが、さらに「隕石は宇宙からの手紙である」と言えると思います。
?ブラジル産の金緑石(クリソベリル)
?ブラジル産の太陽ルチル
今日の話題は「雪」です。最初の写真は雪の結晶のように見える金緑石(クリソベリル)の交差三連双晶です。次の写真はルチルの接合三連双晶です。太陽ルチルとも呼ばれますが、私には雪の結晶のようにも見えます。雪の結晶と同じような幾何学的な美しさがあります。
私の高校の大先輩に中谷宇吉郎氏がいらっしゃいます。中谷宇吉郎氏は雪の研究で有名ですが、その名も「雪」という著書があります。それは日本最初の新書となる岩波新書(赤版)で一挙20冊が同時発行された中の一冊です。私は名古屋の古書店でその本を見つけ入手しました。また「雪」は松岡正剛氏の千夜千冊の第一夜に登場する本でもあります。
その千夜千冊の中で「雪だけが結晶ではなかったのだ。」として中谷宇吉郎氏のクリスタルゼーションについて書いています。中谷宇吉郎氏も鉱物主義の人だったのです。
中谷宇吉郎氏は中谷ダイヤグラムで雪の結晶が温度と湿度で形状変化することを示しました。それは水という物質だけのダイヤグラムでした。その先には何があるでしょうか?
今求められているのはあらゆる鉱物結晶の中谷ダイヤグラムのような普遍的な方式です。
「雪」の最後の最後に「雪は天から送られた手紙である」が出てきます。ならば「鉱物は地下からの手紙である」もしくは「石は地球からの手紙である」と解釈すべきかも知れません。
?中西祐喜さんのアート作品
今日の話題は「石を造る」です。石を造るという事ですが、人工結晶を作る事や人工大理石のような建築材を作る事でもありません。人間の芸術行為として石を造る事です。
写真は昨年ギャラリー点さんで購入した中西祐喜さんが造った石です。私は当時はまだ石のコレクターでしたので、その石を見たとたんにその作品の持つコンセプチュアルな意味を複合的に深読みし、即買しました。
鉱物の結晶を芸術作品にしている作家に小林健二さんがいます。小林健二さんのアートな感性にも共感するところは多く、数年前の池袋や新宿のミネラルショーで同じ鉱物結晶をほぼ同時に手に取ったこともあります。小林健二さんは人工結晶をご自身の作品として展示する事もされております。
中西祐喜さんの作品の場合には直接的な作品そのものに対する芸術的な感動よりもメタ芸術ともいうべきものに感動します。なぜ石なのか?その作品には水が入っているのですが、それはなぜなのか?なぜありふれた石そっくりのものを造らなければならないのか?リアリズムとは何か?芸術とは何か?勝手にいろいろな解釈が生まれます。
種村季弘さんの「不思議な石の話」という本があります。その本のイラストは瀬戸照さんです。瀬戸さんも石をスーパーリアリズムで描く芸術家です。私は「瀬戸照の静物」という本を買って石の絵をながめています。
石を造るということ。何か深い意味がありそうです。
昨夜NHKのBSで「びっくり地底大冒険~不思議の国・スロベニア」を見ました。私は日頃からTVの洞窟番組は見るようにしています。特にスロベニアはカルスト台地の語源にもなったところで、さらにポストイナ洞窟は「石の花」という坂口尚の漫画にも出てくる鍾乳洞で、石の華としては無視できません。
番組は90分あり、充分洞窟世界を楽しめました。特に番組後半に紹介されたブルーの鍾乳石の美しさに目を奪われました。
美しい鍾乳洞として思い出すのは、やはりアメリカ、ニューメキシコ州のレチュギア洞窟です。その写真集とビデオも持っていますが、それらは私の宝物です。レチュギア洞窟は研究者以外は入れないそうですが、行けないところとしても、そこは我々人類の宝物だと思います。
もうひとつ、これもNHKスペシャルで2004年に放送されたメキシコのヴィラ・ルース洞窟です。こちらも硫化水素ガスが充満する洞窟で非常に危険なところです。その最奥にはイエローローズと呼ばれている硫黄の黄色い結晶が一面に広がる部屋があり、この風景にも目を奪われました。
どうも人がなかなか立ち入れないところに本当に美しいものが隠れているようです。
日本でも美しい鍾乳洞はあります。これもNHKのワンダーワンダーという番組で放送された氷渡洞新洞です。神秘的な純白の鍾乳洞で、その中ではキューブ状のケーブパールも見つかっています。
私が実際に行った事がある鍾乳洞で印象深いのは北九州の平尾台にある牡鹿洞です。そこは垂直洞窟で鉄の階段を降りると中には地下の川が流れていました。そのせいで恐らく湿度100%近い状態です。私が中に入った時には頭の上から光の柱が現れました。しかも息を吹きかけたり、声を出すと、それに反応して光の柱が波打つのです。霧のような細かい水滴がカオス的な模様を描きながら空の方へのぼっていきました。洞窟と自分とが呼応しているような幻想的で神秘的な体験でした。
それから忘れてはいけないのが我が石川県でも2,3年前に鍾乳洞が発見されたことです。以前は石川県には鍾乳洞はないとされておりました。そこは是非行ってみたい近場のスポットのひとつです。