ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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元素図鑑

2012-11-30 11:27:39 | 日記・エッセイ・コラム

今朝の産経新聞の一面に載っていた「首相の元素占い」は非常に面白かったと思います。。

私は鉱物マニアですが、元素マニアではありません。政治の世界にもあまり興味がありません。

そのような私にも今日の記事は面白く思いました。

私が現役のサラリーマンだった頃は数字がメインの新聞を読んでいました。私は現在、スマホで毎日、産経新聞を読んでいます。現役の頃は仕事の一環で新聞を読んでいたようなもので、他紙を読む事など考えてもいませんでした。ところが、他紙の記事には数字ばかりで味気ない新聞とは違って、読んで面白い記事が豊富にある事に気づきました。今朝の記事もそのようなひとつです。

今朝の記事は元素番号と歴代の総理大臣とを符合させており、非常に面白かったです。このような発想は飲み屋での会話的な面白さがあり、数字ばかりの新聞ではなかなか読む事ができなかったと思います。

今日は元素図鑑です。

私は鉱物図鑑はもちろんの事、鉱物結晶が出ている複数の元素図鑑も愛読しています。

ここに「よくわかる元素図鑑」(PHP研究所 左巻健男 田中陵二)という図鑑があります。鉱物や結晶の美しい写真が沢山載っており、お気に入りの図鑑のひとつです。

多くの元素は天然鉱物の中に存在しています。そして、今朝の記事にも書いてありましたが、天然に多く存在する最大原子番号の元素は92番のウランです。それより大きいものは「超ウラン元素」と呼ばれ、人工的に作られます。

「よくわかる元素図鑑」には93番のネプツニウムのページにリン灰ウラン石と人形石が出ており、天然にもわずかに存在する、と書いてあります。さらに94番のプルトニウムのページにはウラン鉱物(アンダーソン石)が出ており、きわめてわずかに天然にも存在すると書いてあります。95番以降のページには天然鉱物は出て来ません。それ以降は全て人工元素なのです。

人工元素の世界になると鉱物マニア的には興味が薄くなってしまいます。今朝のその記事の符合で言えば、元素の95番はアメリシウムで現在の95代野田首相に当たります。

政治の世界には元々関心が薄かったのですが、今日の記事を読んで、変な意味で納得してしまいました。

よくわかる元素図鑑
左巻 健男,田中 陵二
PHP研究所
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フラクタル

2012-11-29 11:31:59 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「フラクタル」です。

先日の「部分と全体」、「かたち」の話題に繋がります。

「フラクタル」は数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念で、図形の部分と全体が自己相似になっているものなどの事です。

「フラクタル」は数学的な無限を含んでおり、それそのものも非常に面白いのですが、それに近似した「かたち」を自然界でも見る事ができます。例えばフラクタル地形といわれる海岸線の「かたち」やデンドライトのような枝分かれの「かたち」があります。鉱物の世界でも「フラクタル」に似た「かたち」を見出す事があります。

Dscf2570

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南アフリカ カラハリ砂漠 N'ChwaningⅡ鉱山産 ハウスマン鉱(Hausmannite)

上の写真はハウスマン鉱です。マンガン鉱石です。

このハウスマン鉱の標本を見た時に思わず「フラクタル」を想起してしまいました。それは小さな正三角形の結晶が「フラクタル」に密集して「フラクタル」な大きな正三角形を作っていました。

その「かたち」はセル・オートマトンもしくはシェルピンスキーのギャスケットの「かたち」にそっくりなのです。セル・オートマトンはある種の貝殻の表面にある模様にも似ているのですが、このハウスマン鉱からはどうしてもシェルピンスキーのギャスケットに似ていると思ってしまいます。

他にも蛍石の結晶面や黄鉄鉱などの結晶面からも「フラクタル」な印象を受ける事があります。鉱物の微細な結晶成長には「フラクタル」が潜んでいます。その事は複雑な自然の「かたち」に関する重要な鍵を握っているようです。

Dscf2543

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アメリカ コネティカット州 ダイヤモンドレッジ産 水晶(Quartz)

これは水晶の結晶です。いつも思うのですが、水晶のヴァリエーションも非常に面白いものです。

この標本を見た時は、思わず植物のカリフラワーロマネスコを想起してしまいました。カリフラワーロマネスコの「フラクタル」な造形美も特出したものがあると思いますが、それに似た雰囲気の水晶があった事にも驚きました。

鉱物結晶の世界にもある「フラクタル」、この事は「かたち」に関する重要な鍵だと思います。それは「部分と全体」の自己相似という自然界の現象を説明し、さらに次元を超えた高次元にも繋がる重要なキーワードだと思います。

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無人島に持っていく一冊

2012-11-28 11:25:50 | 日記・エッセイ・コラム

今日は趣向を変えて「無人島に持っていく一冊」とします。

その一冊は私的には「The Book」(「聖書」)でも「The Book of Stone」でもありません。

先日のブログ「かたち」の時に「かたち創造の百科事典」を「無人島に持っていきたい本」というべき存在です、と書きました。その本は「かたち」に関する話題豊富な本ですので、今の私は、その本を「無人島に持っていく一冊」とします。

無人島ではサバイバルの為に本を読んでいるような余裕はないのかも知れませんが、時間が有り余るような状況では、知的好奇心を満たす為にその本は役に立つと思います。無人島という閉鎖空間で世界のあらゆる「かたち」をじっくり時間をかけて楽しむ事ができると思います。

実は数年前に同じ丸善から「かたちの事典」という「かたち創造の百科事典」と良く似た本も出ています。私は両方持っています。「無人島に持っていく2冊」になると面白くないので、以前の私は「かたちの事典」を選んだと思いますが、今は「かたち創造の百科事典」の一冊を選びます。

「無人島に持っていく一冊」という選択はよくある思考シミュレーションです。Webの世界でもよく話題になっています。それらの集計結果を見ると上位に辞書が入ってきます。事典はひとつのテーマに絞り込まれていますが、辞書はもっと広く、それは言葉の宝庫ですから、必然的にそうなるのだろうと思います。

学生時代に飲み屋で同じような議論をした事を思い出しました。そこでひとりの友人が言った言葉を思い出します。その友人は「それはやっぱり辞書だよ。辞書があれば、深遠な哲学書から官能小説まで、どんな書物でも自分で書けるんだから。」

私はその友人のイマジネーションと創造性に感心したものですが、その友人のその後は知りません。

それから、数年前に「宇宙の調和」(ヨハネス・ケプラー)の邦訳が出版されたのですが、その本の新聞書評で作家の三田誠広さんが「無人島にもっていくただ一冊の本に、わたしはこれを選びたい。」と書いておりました。昼間にその本を読み、夜の星空を見ながら宇宙の音楽を聴く、というような事が書いてありました。

「宇宙の調和」(1619年)は「宇宙の神秘」(1595年)から始まったヨハネス・ケプラーの宇宙観の集大成的な書物です。五つのプラトン立体による惑星モデルから調和音を奏でながら太陽の周りを運動しているという天体の音楽理論へと発展・統合した歴史的名著です。

確かに、その本は分厚く読み応えがあります。私もその本を買いましたが、未だに真剣にそれを読む気になっていません。もし無人島に行くような事になったら、私も「宇宙の調和」を選んでしまうかも知れません。

そういえば、買っても、まともに読んでいない本はたくさんあります。録画しても見ていない番組もたくさんあります。

時間をもっと有効に使わなければならない、と思ってしまいました。

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キノコのような鉱物

2012-11-27 11:19:20 | 日記・エッセイ・コラム

「ミネラ No.20」を見ました。その表紙の写真が印象的でした。

その写真はピンク色のキノコのような形をしたマッシュルーム トルマリンです。私は初めて見ました。そのキノコ雲のような形の存在感は抜群です。近年、ミャンマーから産出したもののようですが、鉱物の世界では、まだまだ未知のものが登場して来るでしょう。鉱物の世界は新しい刺激に満ちています。

今日は「キノコのような鉱物」です。

「キノコのような鉱物」はそれほど珍しくはありません。卑近な水晶にも松茸水晶(Scepter Quartz)があります。

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ミャンマー モゴック 産 松茸水晶(Scepter Quartz)

松茸水晶はキノコの松茸に似ているからその名前になったのですが、英語名はセプタークォーツです。セプターは王笏の事で、それにも似ているからです。

松茸水晶は既に一度「東京スカイツリー」の話題の時に書いております。それも平行連晶の一種です。

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ブラジル リオグランデ・ド・スル 産 水晶(Quartz)

これも水晶です。六角柱の群晶だったものが何かで表面を溶かされて、このように丸みを帯びた形に変容したものだと思われます。これも一見キノコのように見えてしまいます。これも水晶の変種のひとつです。水晶もヴァリエーションに富んでいると思います。

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中国産 蛍石(Fluorite)

これは蛍石の結晶です。キノコではありません。蛍石の結晶形には丸まった半球状のものがあります。この蛍石もそれらの変種の一種なのかも知れませんが、この蛍石は完全にキノコになりきっています。どのような産状で産出したのでしょうか?これを初めて見つけた人は恐らくキノコだと思ったに違いないと思います。

キノコは菌類です。鉱物は無機質結晶質物質です。菌類という生物と無機質物質の鉱物が似ているという事はどういう事なのでしょうか?生物の世界では擬態という不思議な現象があり、それは環境適応や生存の為の特殊な現象なのですが、無機質である鉱物が何かに似ているという事には何か特別の意味があるのでしょうか?

それは分かりません。それはただ単に形の多様性の中の特殊なケースが起きているだけで、それを見る人の側の勝手な思い込みに過ぎないのかも知れません。

ただ、誰もがそれを見て、そのように思ってしまう事が実際にある事自体が、非常に面白い現象だと思います。


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コレクション

2012-11-26 12:11:45 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「コレクション」です。

昨日「CURIO MAGAZINE」という雑誌が届きました。何かの検索で初めてその存在を知りました。その最新号の特集は「石を愛でる 美しき天然鉱物を探して」となっており、無視する訳にはいきません。

その雑誌は古銭や切手等のコレクター向けの月刊誌でした。私のコレクションはもっぱら石でしたので、そのような雑誌の存在すら知りませんでした。その「キュリオマガジン2012年12月号」の特集が「石を愛でる」となっており、ページが少なかったものの、確かに鉱物標本や勾玉の記事が載っておりました。

思えば、鉱物標本だろうと貨幣であろうと、コレクションする対象が違うだけで、コレクションという行為は同じかも知れません。コレクションには不思議な魅力があると思います。

コレクションの心理も面白いものです。「コレクション」や「蒐集」に関する文献も豊富にあります。何かに偏愛するという心理は人間らしくて興味深い心理だと思います。

「奇妙な情熱にかられてーミニチュア・境界線・贋物・蒐集」(集英社新書 春日武彦著)という本があります。著者は精神科医で、教養あふれる文章で人間の心理に迫っています。特に蒐集癖の章はコレクターの心理をうまくつかんでいると思いました。その章の「透明な鉱物」の部分では、まるで自分の事を書かれているような気がしました。(ミニチュアとしての文章という章では堀秀道さんの「楽しい鉱物図鑑」が登場します。)

その本には「蒐集癖は神経症な営みである。病気といえなくとも、神経症に近い。」と書いてあります。コレクターは精神疾患者なのかも知れません。「蒐集などに熱を上げないで済む者のほうが明らかに健全である。」とも書いてあります。ただし、「健全であることと人間的な奥行きがあることとは別だけれど。」と文章は続いています。

どうもコレクションの深層には病理的な心理が潜んでいるようです。ただし、それは非常に人間的な心理です。コレクションと好奇心(curiosity)は近い関係にあります。それらは人間の根源的な欲求であると思われます。

地球の生物進化の結果、現在の人間が存在しています。地球の物質進化の結果、現在の鉱物があります。鉱物コレクションは地球進化の結果、登場した現象なのかも知れません。

奇妙な情熱にかられて―ミニチュア・境界線・贋物・蒐集 (集英社新書)
春日 武彦
集英社
楽しい鉱物図鑑
堀 秀道
草思社
楽しい鉱物図鑑〈2〉
堀 秀道
草思社
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