ウクライナ東部の親ロ派は撃墜されたマレーシア航空機の飛行データを記録したブラックボックスをマレーシア側に引き渡したとインターファックス通信は報じた。撃墜された犠牲者の遺体引き渡しや事故調査に消極的な姿勢を続けるロシアに対してEU内で強硬論が高まり、ロシアが親ロ派に対して圧力をかけた結果と思われる。
これまでロシアとの経済関係を重視して強硬な経済制裁に慎重だったEUに強硬論が出たところで、事態は動き始めた。つまり、EUもロシアもやれば出来ることを証明したといえる。換言するとEUの消極的な姿勢が、ロシアと親ロ派のウクライナ騒乱を許しマレーシア機撃墜を誘発させた。自国民に大きな犠牲が出てて国民の不満が沸き上がりオランダ等がやっと腰を上げた。申し訳ないけどいかにも欧州的だ。
ウクライナ騒乱は基本ヨーロッパの問題なのに、米国一人がヤキモキすす姿は以前から私には不思議な光景だった。米国の影響力の低下を実感すると同時に、EUは自分の裏庭が荒らされても何故平気なのか理解できなかった。ここで黙っていたら次にもっとヤバイことが起こると、メルケルもオランドも思わなかった。彼等は目先の金(経済関係)に目が眩んでいたとしか思えない。
オバマ大統領は「今回の撃墜事件は欧州と世界に対する警鐘」と述べ、米国と同調して対ロ制裁強化に取り組めと促した(日本経済新聞7/21)。当初欧州の動きは鈍かったが、世論の高まりに押されて制裁強化に動き始めた瞬間ロシアは反応した。やれば出来るじゃないか!勿論、第一の責任はロシアにあるが、撃墜の犠牲者はある意味EUが蒔いた種でもあったと私は思う。
ロシアがクリミア半島を奪い取った時からUEが断固たる姿勢をとっていればマレーシア機撃墜は起こらなかった。目先の利益の為に何事も穏便に済ませようとし原則を忘れると、痛烈な仕返しを受け総てがうまく行かなくなることもあるとオバマのメッセージは解釈される。相変わらず彼の事態の認識は鋭い。そう受け取るEUの首脳はいないのだろうか。或いは世論はどう考えているのだろうか。私は中国との関係にもそのような恐れがあることを指摘しておきたい。■