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かぶれの世界(新)

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もう一つの「日本化」ー米軍のいない世界 

2014-07-18 15:28:00 | 国際・政治

 

中ロの挑戦

 

最近の世界情勢を見ると米国が主導的な役割をしていない世界の不安定さを痛感する。米国が軍事的行動をとれないと足元を見透かした中ロが、国内では反人権・反民主主義の抑圧政策をとりながら、国外に向かっては力を背景に領土拡張を強行している。中東ではイスラム原理主を背景にしたテロリスト集団が伸長している。それに対して従来なら一致して対応した欧米チームが効果的に対応できなくなっている。底流を考えると今後も事態は良くなりそうもないことだ。

 

最大の原因は既に多くの識者が議論している通り米国の影響力の相対的な低下であり、私もこの場で何度も触れて来た。その裏返しは新興国の経済成長と並行して、力をつけた中国が従来の圧倒的な米軍と経済力を背景にした世界秩序に挑戦し揺がせているということだ。日欧や多くの民主主義国は米国と価値観が一致している限り、多少の意見の不一致があっても米国と共同行動をとるか少なくとも足を引っ張ることは無かった。

 

欧米の温度差

 

昨年は米軍の存在が最も求められた1年だった(ロイター7/5)。ウクライナ、シリア、イラン、アフガニスタン、ナイジェリア、南シナ海等々。’平和的’メディアは米国の戦争というが、米軍を除いて一体誰が自ら血を流して他国の紛争に介入してくれるだろうか。ところがその米国が9.11以来10年以上戦争状態にあり、国民の戦争疲れと戦争を支える国の蓄えが無くなった。結果として紛争地での米国の存在が薄まり、事態は悪化するばかりだった。

 

私には下手をすると欧米は自壊すると憂慮する。オバマ米大統領の指導力不足は何度も取り上げたが、私はここに来て最も価値観が一致しているはずの欧州と米国の温度差が拡がっていると懸念する。背景にユーロ危機を経験した欧州諸国が苦境を乗り越えるために、中ロとの経済関係を抜き差しならない程に深入りしたことがある。ウクライナ情勢が一向に好転しない現状になって、欧米の温度差を尚更浮き彫りしたように感じる。

 

もう一つの「欧米の日本化」

 

欧米が自国の都合(経済)しか考えない「一国平和主義」、つまり日本化している。欧州の脱ロシア・エネルギー依存は口先だけで全くといって良い程進展していない。フランスは口先では制裁といいながらロシアに武器を売りたくてしょうがない。ドイツはエネルギーの4割をロシアに頼っている。米国と並んで表立って中国の人権問題を議論してきたドイツだが、メルケル首相は今月初めに経済界ミッションを引き連れて訪中した。ドイツ経済は中国と最早抜き差しならない関係にある。 

 

欧州経済の主要国の独仏がそんな具合だから他の国は推して知るべしだ。エネルギー源はロシアに頼り、中国は欧州経済の救世主なのだ。先に英国が李克強首相率いる経済ミッションを迎え巨額の貿易関係を結んだ。保守党政権は従来のチベット問題等を批判し中国と対立したことなど忘れて中国に擦り寄った。中国が南アジアで展開している強圧的な領土紛争は遠い国の出来事だと思っている。確かにウクライナより遥かに遠いが、それはクリミア半島と表裏一体なのだ。

 

米国のいらだち

 

オバマ大統領は以前投稿したように状況の判断は出来る男だ。欧州の煮え切らない態度に業を煮やしてメルケル独首相を始め欧州首脳を電話で後押し、その翌16日米国はロシアへの追加制裁を決めた。国営石油会社ロスチネフや銀行が対象になるという。だが、経済への悪影響を心配する欧州に配慮し制裁範囲は限定的で効果は疑わしいと報じられた。

 

なぜそうなったか端的に言うと、米国は盗聴問題などで欧州の信用を失ったといわれる。オバマのリーダーシップの問題があるという。だが、欧州諸国と根深い経済関係を考えると、欧州が対ロ制裁で自国経済が悪影響を受けるのを避けたかったと推測する。米国はそこまで分かっているのに効果的な手が打てずにマスコミに馬鹿にされている。そこにオバマ政権のいら立ちを感じる。

 

「Gゼロの世界」はどこに向かう

 

私の人生の第4ストレッチにかかる今の段階で、息子や孫が迎える世界がそれほど明るく感じないのがとても気がかりだ。ベトナム戦争やイラク戦争があった一方で戦後植民地が相次いで独立し多くの民主主義国が誕生した。グローバリゼーションを通じて先進国に集中していた富は新興国にも分散され、中流階級が育った。世界は良い方向に向かっていると感じていた。

 

これ等の成果の多くは米国の力が圧倒的だった時代の産物だったと私は考える。米国が圧倒的でなくなり生じた「Gゼロの世界」を、ブレマー氏は次の時代への過渡的な状況だという。だが、どこに向かうのか示していない。先進国が総て小粒になって中進国化して、自国の平和しか考えられない一国平和主義に陥った世界は吉か凶か。一国平和主義は一国だけなら成り立つが、多くの国がそうなったら混乱だけが残る。私は楽観的になれない。■

 

 

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