内向きの大統領選
2012年の米大統領選は従来に比べ世界の注目が少ないように私には感じる。私なりにその理由を考え、先行きを占ってみたい。最大の理由は明らかに争点が極めて内向きで、大統領選の結果がどちらに転んでも世界に与える影響が従来ほど大きくないと見られているからだと思う。
2008年は9.11後から続いたアフガン・イラク戦争をどう収束させるか、リーマンショック後の経済をどう立て直すか、という世界を揺るがせた二つの政治課題をかけた戦いが世界の注目を受けた。又、初めて黒人大統領か或いは女性大統領が米国で誕生するかも興味を引いた。
今回、繰り返し議論されたのはリーマンショック後中々回復が進まない雇用情勢、12月に期限切れになるブッシュ減税を巡る経済の建て直しといった国内問題だった。オバマはリーマンショックで傷ついた中流階級層の復活を唱えるが、実現すべき具体的政策は説得力に欠ける。
前回のマケインと違いロムニーはファンド経営で巨額の富を築いたイメージから抜け出せてない。レーガン時代の強いアメリカを目指すというが、それよりオバマが同性婚を認めるという政治的にリスクのある意思表示のほうが注目を浴びた。まあ、勝手にやってくれという感じだ。
端的に言うとどっちが経済を立て直せるかだ。対立軸は伝統的な「大きい政府vs小さい政府」の戦いであり、社会保障とブッシュ減税後の税制のあり方であろう。オバマの国民皆保険に対する賛否と、中流階級重視の富裕税か全階層の減税で経済活性化に重点を置くかだ。ニュース等で報じられるアメリカ国民は内向きになっていることの反映だろう。
若者からラティノママが大統領を決める?
前回オバマ大統領を生んだ原動力は無党派の若者達だった。支持を変えたのではない、彼らは初めて投票所に行きオバマと書いたのだ。投票の出口調査ではその傾向が鮮明だった。投票率の増加分がそのままオバマと書いた彼等の票だった。風が吹いた。
ニューズウィーク日本語版(8/28)に面白い記事を見つけた。過去の大統領選で44の州は投票前から民主党もしくは共和党が勝ちと決まりの、いわば鉄板の州だという。つまりスウィングステートと呼ばれる残りの6州(バージニア・フロリダ・オハイオ・アイオワ・ニューメキシコ・コロラド)によって大統領選の帰趨が決まった。
更に絞っていくとこの6州の浮動票のごく一部(選挙民の4%で約90万人)が大統領を決めた。前回オバマを大統領にした若者の投票率は今回低下する可能性が高い。彼らはオバマブームの前回と比べるとそれ程熱くないと、風は吹かないと私は感じる。
そこでニューズウィークは浮動票の典型として「自分で生計を立て、子供を育てている為に大学に進む余裕がない中南米系の若い女性」だと予測した。クリントン時代のサッカーママみたいだ。だが、どういう政策が彼女達に効果的に訴えるだろうか、依然として手探り状態にあるように感じる。
民主・共和党ともに党大会で正式に大統領候補を決定した。予備選は終わり、いよいよ本選だ。共和党大会直後に上向いたロムニーの支持率は、直ぐ後の民主党大会の結果あっさりひっくり返りオバマが優勢となった。どうせ、その程度の支持率だ。
私には、どうやら今回の大統領選は個人の魅力が決め手になりそうな気がする。積極的にオバマを支持する気にはならないが、ロムニーは信用できないみたいなノリだ。論理的じゃないがニュースの流れを見て底流でそういう雰囲気を感じる。共和党が有利になる可能性は浮動票が割れる場合で、保守化が進む共和党「鉄板」の大きさが決め手になるだろう。■