日本経済と米国消費
今年の日本経済は「輸出の伸びと国内消費の回復」にかかっていると誰もが予測している。輸出はつまるところ米国の景気に左右され、米国の景気はGDPの7割を占める消費の行方で決まる。消費動向の重要な指標が年末商戦である。
全米小売協会(National Retail Federationの仮約)によると2006年末商戦は昨年より1%下回るものの5%前後に落ち着く見込みだそうである。住宅バブル崩壊が心配された程影響しなかったと見られている。その理由として株価上昇の資産効果と石油価格の下落が指摘されている。
米国消費と住宅市場
石油価格の下落は理解できるとして、何故住宅価格が消費に影響するか。それは住宅価格が上昇する前提で将来の値上がり部分とローンの差分を前借し消費に回して米国消費の活況が続き、最終的に世界経済を牽引してきたからだ。
この国の人達は我我には信じられないお金の使い方をする。終いには貯蓄と借金の差額が逆転してしまった。一方、日本の家計は将来に不安を持ち一人当たり世界一の金融資産を定期預金やタンス預金として仕舞い込んできた。勿論、これは善悪の問題ではない。感謝することはあっても文句を言う筋合いはない。
日本と米国のバブルの違い
ここまで能書きを述べたのは、米国の住宅市場のいささかエキセントリックな方法で世界経済に与える影響と、それが故にその動向に目が離せない非常に重要な指標であることを説明する為である。
住宅バブル崩壊といえば日本の資産バブル崩壊とその後の失われた10年を思い起こすが、米国の状況を見ると実に上手くマネージしている。日本の場合、金融機関は節操なくゼネコンや不動産業界に投資し、桁違いの不動産を買い集め不良資産と不良債権が残った。全ては強欲の論理に基づいた損失で、巨額の税金を使って救済するしか手がなかった。
米国の場合、住宅価格上昇により需要が減退した時決定的に日本と異なったのは不動産及び建設業界の棚卸が適正レベルに管理されていたからである。供給側は売れ行きが減ったのは問題だが、それで業界全体が過剰債務に悩み不良債権化しなかった。更に住宅バブルで一国経済が失速するような馬鹿なことになってないということだ。
住宅バブルが波及しない訳
住宅市場の減速が他の業界に波及してない理由は二つある。一つは住宅市場の主力は中古住宅であり、日本と異なりきちんとした手入れをした中古住宅は新築よりよほど値打ちがあるからだ。中古住宅は買い替え市場であり価格が回復するまで待てる市場だ。
二つ目は新築住宅市場でITが仕事のやり方を変えたからだ。住宅建築会社はコンピューターで完成住宅の画像を確認し受注して初めて建築に取り掛かる。従って売れるものしか作らないトヨタ生産システムと同じコンセプトで、棚卸といっても紐付きで必ず売れる仕掛品というべきものなのだ。
主要住宅建築会社7社の在庫は7ヶ月になったが必ずしも危機的な水準ではないという。というのは需要減で分子が小さいため月数が多いように見えるが、需要が増えると急速に縮小する適切な範囲と見られている(モルガン・スタンレー社)。 建築会社の株価は下がったが経営危機に陥った訳ではないのだ。
住宅不況は続くが軽傷
このところ住宅ローン申請件数は再び増加し始め、販売減少ペースが減速しつつあり、供給の調整も進んでいるらしい。しかし、モルガン・スタンレー社は足元の需要とキャンセル情報、過去のデータを突合せ、実需は公式統計値よりも軟化しており前期比3割減と見ている。
市場のコンセンサスは住宅市場の減速は今しばらく続く可能性が高い、しかし米国経済へのインパクトはそれ程酷くない。年末商戦でも確認された。従って話は飛躍するが2007年の日本経済も悪くはなさそうだということで取りあえず終りたい。■