かぶれの世界(新)

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誰にでも訳がある

2007-01-20 22:47:23 | 社会・経済

本電機業界の地盤沈下を長期戦略の誤りだと「甦るか日の丸電機業界」で決め付け、「私的・先見性欠如症」で私の言い訳をしたままで後味が悪く気になっていた。当時お付き合いさせていただいた第一線の事業責任者の方々は何も言われず次々と引退されている。

今回はこのシリーズの最後として、老兵に代わり私が見た「兵を語ろう」と思う。彼らには世界戦略が無かったわけではない。それを許さない環境があった。当時、電機業界はバブル崩壊後の構造不況に追い詰められついに血を流す思い切った構造改革を断行中だった。

幾ら化粧してもバランスシートの実体はひどく傷ついていた。オフバランスの部分でもスキャンダルなど各社固有の理由で傷ついており、その世界戦略を実行できる資金は何処からも出てこなかった。更に肝心の金融システム自体が存続を問われる状況で機能していなかった。

当時我々は皆、日本製部品の方が性能も信頼性も好いことは分かっていた。コストは高いが、問題はそれより日本で立ち上げ急速に世界に広がった総需要に供給が追いつかなかったことだ。生産効率改善程度の増産しか返事が貰えず需要を満たすことなど及びもつかなかった。

といった事情で、ITバブルが破裂する直前の99年から2000年にかけてハイテック部品やユニットの調達交渉の為韓国に何度か渡り、韓国メーカーが明確な世界戦略をもちそれに基づいて投資している事を知った。

国メーカーはアジア危機から時間をおかず過激とも言える構造改革を断行し、短期間に業績を改善、自信を回復する途上にあった。その時点で日本の需要の何倍にもなる生産キャパシティを実現する巨額の投資をよく思い切ったものだと思った。

日本の電機業界は概して多角化されており、選択と集中はより川下に向かっていた。しかも、バランスシートは見かけ以上に悪かった。限られた資金が投入された事業も、辛抱強く世界戦略を遂行するには資金が続かなかった。

お付合い頂いた川上商品の事業責任者の方々は皆それを知っておられ、打ち合わせの後の酒の席でバブル時代の無駄に終わった巨額投資を例に挙げ、あれさえなければ世界の需要を満たす工場を作れたのにと悔しそうに呟かれたのを聞いた。

理由は何であれ世界の需要家にとって選択肢は韓国メーカーしかなかった。急増する需要にこたえる供給計画を提示できるのは韓国メーカーだけだった。韓国メーカーは先ず数量でナンバー1になり、次第に品質も日本メーカーに追いつき、次には製品開発も追いついた。

経過はどうあれ結果が全てだ。原因も明確だ。その後も携帯電話は日本に引きこもり、薄型テレビも韓国勢が世界シェアトップに立った。何故同じようなことが続くのか。一億層懺悔みたいな感じでは何もよくならないが、老兵に代わり一言。■

コメント
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