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ウクライナ紛争の損得計算、やり得・温泉、いや時間です

2014-03-20 18:16:34 | 国際・政治

 ウクライナ情勢はヤヌコビッチ大統領が方針転換してEUからロシアに向かい始めて以来、誰も予想しなかった速度で最悪の事態に進んでいる。欧米は再三にわたり経済制裁をちらつかせたがプーチン大統領は揺るがなかった。欧米の警告を無視してついにクリミア共和国をロシアに編入してしまった。事態は誰も予想しなかった速度で進んでいる。

 ウクライナ情勢が悪化しヤヌコビッチ体制が転覆した時、私は反政府運動が過激化して性急すぎるのではと不安を感じた。イスラム原理主義のモルシ大統領が反対派を適切に遇せず、結局民衆の反発を受けクーデターで追い落とされたエジプトが頭の端に浮かんだ。多分、この頃にプーチンはウクライナが一気にEUに傾いてしまう事態を避ける為に手を打つ決断をしたと思う。

 冷戦時代と異なり米欧露は政治経済ともに複雑に絡まっており、一方的な制裁など存在せず両者ともに傷つく関係だ。欧米とロシアの対立が切迫した時以来、ウクライナ情勢はどちらが痛みに耐えられるか我慢比べだと私は思った。どうも欧米の方が痛みに弱く対応を誤まる、今回もプーチンの「やり得」になりそうだと私は悲観的に予想した。

 プーチンの強みは何といっても70%以上という国民の支持だ、クリミア半島奪還の為なら欧米が加える痛み(制裁)には耐えてくれるとの読みがあると思う。一方、米国民は30%しかウクライナ紛争介入を支持せず、オバマに軍事介入の答えは初めからない。強硬政策をとっても支持率が低下する。欧州もロシアとの深い経済関係を傷つけたくないと当初から及び腰だった。

 今迄に報じられたプーチンの言葉を辿ると、必ずしもクリミア半島を編入するクリアな戦略を立てそれに従って実行していったようには感じない。事態の推移と欧米の出方を見ながら手を打って行ったらここまで来たというように私は感じる。その背景にはシリア情勢などを経験して、オバマ大統領の「一線を越えた」とか「代償を払う」とかいう大袈裟な警告を脅威と思わなかったからだ。

 私は「オバマ温泉」(言うだけ)と失礼なことを言ったが、ウクライナ情勢についてもこれまでのところ「オバマ温泉」全開だ。国際政治学者のイアン・ブレマー氏はこうした法的強制力のない脅しは、米国の国際的な信用を落とす」と言葉は上品だがもっと厳しいことを言っている。ドイツのメルケル首相は何とか穏便に済ませたいという気持ちが見え見えでかえって事態の悪化に手を貸した。

 ここまではプーチンのやりたい放題、今回も「やり得」作戦大成功になるかもしれない。現在の欧米の懸案はロシアがロシア人の多いウクライナ南部と東部に進出してくる事態だ。プーチンは否定したが、欧米は信用していない。

 だが、欧米側にも強力な武器がある。それは「時時間」だ。

 時間が経過すると経済制裁の効果が出てくる。既にロシアから資本流出が始まっており、プーチンのお友達の富裕層は1-3割金融資産を失ったという。ルーブルの下落が更に続くだろう。今日英国が欧州大陸のエネルギーのロシア依存を止めるよう提案したと報じられた。以前ロシアが天然ガスの供給を止めた時から、ドイツ等は最悪ケースの対策を取ってこなかった。

 天然ガスが完全に止まると1100億円以上ロシアは失うことになるという。半年の在庫はあっても一気にやるのは現実的ではないが、今後欧州はエネルギーのロシア依存を低めていくのは間違いない。これらの経済制裁は資源に頼る脆弱なロシア経済にきついボディブローとなる。今は第1ラウンド、じっと我慢すれば事態は変わる。国家主義と民主主義の我慢比べだ。■

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