かぶれの世界(新)

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ISIS オバマの大罪

2014-06-22 14:01:43 | 国際・政治

中東に魔物が誕生

イラクで大変なことが起こっている。イラク北部の都市モスルを今月初め制圧した武装集団が南下し、バイジやティクリートなどの都市を攻略し首都バグダットに迫っている、と1週間前に報じられるまで私はイラク情勢の悪化を認識してなかった。それ以前に欧米メディアの記事にISISという言葉を頻繁に見かけるようになったが、私は最初その意味すら知らなかった。ISISが国家レベルににまで成長した化け物といってよいテロリスト集団だと知って驚いた。

シリアの反政府武装集団が力をつけ国境を越えてイラクに侵入し勢力を拡大、イラク・シリアにまたがるイスラム国(ISIS)と呼ばれるようになったという。もはやアルカイーダ系のテロリストとかのレベルではない。テロの巣窟がスンニ派の住民を巻き込み規模も力も強い集団になった。この集団の起源をイラク戦争における米国統治の問題に辿ったり、マリキ政権に虐げられたスンニ派とシーア派の宗教戦争とする見方もある。

シリアを放置したオバマの責任

だが、私はもっと最近の出来事がこの魔物の誕生を防ぐことが出来たターニング・ポイントだったと思う。アラブの春が齎したシリア内乱へのオバマ大統領の初期の介入失敗が分岐点になった。越えてはならないレッドラインを越えたとアサド大統領を非難しながら、その後ロシアの妨害を受け戦争疲れの国民の支持が少ないのを恐れ、責任を放棄し議会に決断を預け軍事不介入とした。多くの米国民はこの決定を支持したが、今頃になり議会やメディアに弱腰外交と非難されている。

この大統領は国民に人気がある無しに拘らず決断しなければならない意思決定を逡巡し、立派な演説はするが問題を先送りし時機を失してきた。この傾向が歴代大統領の中でも極めて強い。私は以前からオバマ温泉(ゆうだけ)と揶揄してオバマ大統領の優柔不断な姿勢を非難してきたが、この中東情勢は抜き差しならない危機的情勢にある。オバマ大統領は情勢判断はできるが、それに基づく踏み込んだ決断をタイムリーに出来ない。

複雑に重層する情勢

時機を失すると情勢が複雑化し別の要素が生じて適切な決断は極めて難しくなる。先ずは何といっても「大義」がなくなる。アサド大統領の圧政に抗してシリア国民が立ち上がった頃は、欧米の自由と民主主義の価値観があった。だが、今は反政府運動の過激派がテロリスト集団になりイラク侵入すると、対テロの戦いが転じてアサド大統領を支援することになる。ISISを育てたのはシリア情勢を放置した欧米と、欧米と良好な関係のカタール・サウディというのは皮肉な結果だ。

今となってはこの複雑な多次元連立方程式をどう解くか正解が見つからない。「シリア・イラク一体」で解くべきと言うのは正しいが、現実にはイラク国内にはシーア60%、スンニ20%、クルド20%に分かれ、アラブ諸国も宗派の異なる政府が存在してスンニはISIS、シーア派イラク政府を直接・間接に支援している。果たして従来多国間で働いていた中東の安定メカニズムを復元できるのか、今更元には戻せないのか。有力な「近似解」があるだろうか。

迷いの現れが米軍顧問300人の派遣だ、次にどちらの方向に進むか手探りの一手だと想像する。このままで済むはずがないと誰もが思っている。米国政府は宗派を超えイラク挙国一致体制を作って対処せよと言うが、それは今迄のオバマ温泉スタイルと変わらない非現実的な絵に描いた餅だと思う。しかし、シーア国家イランとの連携には部分解として脈があると私は推測する。

日本の関わり方は?

この問題は地球規模で対処すべきだ。欧米ですら国民は戦争疲れし上記のように積極的な介入を躊躇している。だからと言って世界経済の恩恵の中で生きる日本が知らんふりをするのは無責任だ。エネルギー源確保という現実的な利益以上の価値観の問題がある。自分に拘らなければよしとする一国平和主義はテロと同列で非難されるべきだ。先ずは既に貢献をしている難民支援を受け入れ拡大を含めて強化すべきだ。いつもの総論賛成各論反対では困る。

私の知識不足の言訳になるが、日本メディアのISISに対する感性不足は困ったもんだ。今朝のニュース報道番組「サンデーモーニング」等を注目したが、最初に出て来たニュースが都議会のセクハラヤジとは失望した。さすがにNHKの日曜討論は「緊迫イラク情報」と題して質の高い議論を見せてくれた。番組は何を問題にすべきか見識を示した。出演した専門家の発言は広範な知識と洞察力で、民放のニュースバラエティの浅薄で一方的な議論とは一線を画すレベルにあった。■

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