かぶれの世界(新)

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安倍首相の90日

2006-12-25 14:40:17 | 国際・政治

閣支持率の低下が止まらない。今日の日本経済新聞の世論調査によると安倍内閣の「仕事ぶりを評価しない」が10月末の28%から57%に上昇したと報じている。郵政造反組の復党でけちをつけ、来年度予算や税制改革で妥協が目立ち、本間教授のスキャンダルが逆風になった。

私は「安倍首相の30日」で安倍丸は順調に滑り出したと評価した。しかし中韓外交の正常化は予め周到に準備されたプランであり、政権の真の性格は不測の事態への対応の仕方で明らかになるだろうと説いた。「復党問題を考える」で安倍政権の性格を決める最初のテストになるだろうと予測した。

実際、復党問題の対応から迷走が始まったように見える。60日後には「苛立つ市場」で安倍政権の曖昧なメッセージが政権の改革姿勢に疑義を抱かせ、日本市場への投資意欲を減退させていると説いた。そして市場の評価は信頼できると。今月初めには「霧の中の安倍政権」でこのままでは支持率低下に歯止めがかからなくなると予測した。

倍政権の場合、米国大統領選のような長期間熾烈な選挙戦を戦わなかったのもだから、政権がどういう性格なのか分りにくかった。有力な対抗馬がなく実質出来レースで、突然降って湧いた支持者たちは政策よりも発言力確保の為で見苦しい限りで後に問題の種を残した。

その意味で予測したように福田氏の総裁レース撤退の罪は実に大きかったといえる。ともあれ結果としては、安倍首相の最初の期待値は前任の小泉首相を引き継いだ形となる一方、面従腹背の恐れがある俄か支援者を政権内に登用せざるを得なかったのは不幸だった。

政治は結果論だ。安倍首相の一連の発言を整理するとその改革を継続する意思は明確である。しかし、結果は小泉改革での決定事項とみなされるもの以外は殆ど例外なく既得権益層との妥協に追い込まれ、その成果が族議員の声も含めメディアで繰り返し流されることになった。

来年度予算においても赤字国債を大幅に減少させたのは評価するにしても、それは運良く企業業績好調の恩恵を受けた増収のお陰であって、摩擦の大きい歳出減で達成されたものでないことも国民の目には明らかである。

表面的には「チーム安倍」は党内及び官僚の積極的な協力を得る事に成功していない。むしろ若くて経験がない実力不足のサークルという印象を植え付けられた。

政府税調リーダーに任命された本間教授のスキャンダルは、民主党の若手のスタッフで固めた前原党首の苦悩を思い出させる。永田議員のスキャンダル対応にベテラン議員が足を引っ張り、首脳陣を見殺しにしたと同じメンタリティを感じる。

これら一連のやり取りを見て安倍政権は対立を回避し問題を先送りする性格があると見られるようになった。ファイナンシャルタイムズは「たよりないイメージが形成されつつある」と書き、大前研一氏はもっと過激に「妥協的でズルズル主義」を酷評した。

国では新たに政権に就いてから100日間は大統領の批判を控えるという。日本の議会制民主主義は多数政党内の力関係で短期間に選ばれ、首相候補がどういう政治家か詳細にわたってオープンに検証されることはない。そういう意味では最初の3ヶ月は新首相がどういう人なのか見方によってはとてもスリリングな期間だった。

私は安倍首相の「人の意見を聞く」という通常なら美徳とされる姿勢が、政治の世界では妥協的な政権のイメージを作っていると思う。特に青木氏・森氏や有力な族議員等ベテラン議員の発言を聞き入れたかのような報道が結果的に実態以上に印象を悪くしている。

彼らは自分の選挙区では評価されても、もはや国家の為になっていないという印象が無党派などの人達に刷り込まれている。そういう象徴的な存在なのだ。そうすると改革断行という正統的な切り口だけでなく、これら有力議員が不満たらたらになる決定や政策の実行が党内支持とは逆に世論支持率回復の手段としては効果がありそうだ。

めたらいかんぜよ」という声が何処からか私には聞こえてくる。安倍首相は妖怪といわれた岸首相の血筋を引く。只者ではないものを感じるのは私だけか。このまま支持率低下が続き血筋のいい坊ちゃんの短期政権に終る前に妖怪2代目になる恐れ(!?)がある。

安倍氏は地域とか利益団体への誘導を超越した政治環境で育った血筋の誇りがある。彼のキーワードは明確に「国家」であることを折に触れて感じる。それがわが国に幸か不幸か分からない。しかし、あるとすれば化ける時は深刻な危機に瀕した時だろう。■

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