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MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

インフルエンザに対する新しい治療戦略

2012-01-07 12:44:38 | 健康・病気

この冬
皆さんはちゃんとインフルエンザワクチンを
接種されただろうか?
あるいは、既にA型インフルエンザに罹った方も
おられるだろう。
それでも2、3日の発熱と関節痛に苦しんだだけで
もと通り元気になられた方は
たまたま運が良かっただけかもしれない。
たとえ若くて元気なあなたでも、
インフルエンザで死亡するリスクは決して
ゼロではないのだから。
しかしどうすればその可能性をゼロに近づけることが
できるのだろうか?
着実に研究は進んでいるようである。

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1月3日付 Washington Post 電子版

Flu’s lethality is attributed to immune systems overreacting to the virus インフルエンザの致死性はウイルスに対する免疫系の過剰反応に起因する

By David Schultz
 National Institutes of Health の研究者らは1918年のインフルエンザのパンデミック(世界的大流行)を “すべてのパンデミックの母” と呼んでいるがこれにはちゃんとした理由がある。このインフルエンザウイルスは全世界の人口の3分の1に感染し、少なくとも5,000万人が死亡したという事実である。
 あれから1世紀近くが経ち、科学者らは当時の人たちの多くがどのようにして死亡したのか理解を深めてきた。その死因はインフルエンザそのものではなく、このウイルスによって引き起こされた免疫系の過剰反応だったと彼らは考えている。
 そして、それは1918年に限ったことではなかった。World Health Organization によると、2009年の豚インフルエンザでは世界中で18,000人以上が死亡している。やはり免疫系の過剰反応がそれら死亡者の大多数の原因になっていたと科学者たちは指摘する。
 細胞レベルでこのウイルスがどのように働くかについての新しい研究は、インフルエンザをそれほど致死的にさせるものが何であるかを明らかにした。それは、ウイルス自体に対する宿主自身の防御機能を用いて、宿主である皆さんを破壊するのである。
 このような亢進した免疫反応に対する研究はさらに有効な抗インフルエンザ薬の開発につながり、あらゆる種類の感染症の治療法を根本的に変える可能性もあると、第一線のウイルス学者は言う。
 「ここが(伝染病学についての)科学の現在の立ち位置なのです」Johns Hopkins Hospital の上級疫学者 Trish Perl 氏は言う。「それは多くの重篤な感染症で起こっていることです。免疫系が過熱状態になっているような状況です」
 免疫系はインフルエンザが感染した細胞を破壊しようとする一方で、身体全体の全く健康な細胞の多くをも壊そうとする。カリフォルニア州 La Jolla にある Scripps Research Institute のウイルス学者 Michael Oldstone 氏によると、このためウイルス自身は肺以外へ広がることは稀であるにもかかわらず、インフルエンザの症状はきわめて広範囲に及ぶのだという。
response.”
「もし皆さんがカゼやインフルエンザに罹ったら、熱が出て、痛みや胃のむかつきがあるでしょう。それはすべて免疫反応によるものなのです」と、Oldstone 氏は言う。

Fatal attraction 致死的な誘発

 ほとんどの場合、この免疫反応はそれほど重篤ではない。ウイルス感染の経過につれてその反応は弱まってゆく。しかし、中には、感染によって高度に破壊的な反応を引き起こし、それが致死的となる例がある。ウイルスに対する免疫細胞の反応の仕方が過激なことから科学者たちはこれをサイトカイン・ストームと呼んでいる。(サイトカインとは免疫細胞がお互いの間で信号を送るのに用いる物質である)通常サイトカインは、免疫系が攻撃すべき細胞がどれであるかを伝えることで感染を抑え込むのに有用である。しかし、時に過剰なサイトカインが身体の一部に流れ込むと、そこに嵐が起こってしまうのである。
 サイトカイン・ストームは稀だが、若い人たちで、より起こりやすい可能性があると Perl 氏は言う。それは、彼らの免疫系が強力であり、それらが過剰反応しやすいためである。彼女によれば、このことで2009年の豚インフルエンザの驚くべき結果の一部を説明できるかもしれないという。すなわち、高齢者に見られるより、若年者において致死的であったという事実である。
 インフルエンザ感染時、サイトカイン・ストームは身体中、特に肺において深刻なダメージを引き起こす可能性がある。これによって、インフルエンザウイルス自体によって引き起こされる肺の障害とあいまって致死的な肺炎が引き起こされてしまうと彼は言う。
 Oldstone 氏と2人の研究者が5年以上にわたってサイトカイン・ストームを研究してきた。彼らはサイトカインに反応する S1P1 と呼ばれる受容体を持つ細胞を発見し、その細胞のシグナルを根本的に止める方法を見つけ出した。科学雑誌 Cell の最新号に発表されたこのウイルス学者たちの知見は抗ウイルス薬より有効となる可能性を有する新しいタイプの免疫反応阻害薬への道を開くものである。
 「サイトカイン・ストームを防御するような化合物の短回経口投与薬が開発できそうです」やはりサイトカイン研究に携わっていて Oldstone 氏の共同研究者である Scripps Institute の Hugh Rosen 氏はそう述べている。
 今回の知見は「インフルエンザの治療法を変える可能性があります」と、Oldstone 氏は言う。さらに、肺感染症、HIV、および他のウイルス疾患についても意味を持つことになるかもしれない。ただし、サイトカイン・ストームが他のこれらの疾患でどのように関与しているかについての研究においてはまだかなり不明確なことが多いと Perl 氏は言う。

‘Getting under the hood’ 『ボンネットの中を調べる』

 National Institutes of Health からの資金提供を受けて、Rosen 氏、Oldstone 氏、ならびに彼らのチームはマウスを用いてこの亢進した免疫反応を調べた。
 この研究者らは30匹のマウスからなるグループに2009年のH1N1 豚インフルエンザ・ウイルス株を注入した。それらのマウスに治療を行わなかったところその80%が死亡した。研究者らは別の30匹のマウスにウイルスを注入したが、このグループにはタミフルに類似した抗ウイルス薬を投与した。約半数が死亡した。
 インフルエンザ感染マウスの3番目のグループに対しては、研究者らはタミフルの代わりに実験的なサイトカイン阻害物質を用いた。これらのグループでは20%が死亡しただけだった。
 そして、マウスの4番目のグループにはタミフルとこの物質の両者を投与したところ、死亡率は5%まで低下していた。
 Oldstone 氏によると、サイトカイン阻害薬は、身体に及ぼす障害の大部分の原因となっているインフルエンザによる影響をターゲットにしていることから抗ウイルス薬より有効性が高い可能性があるのだという。また、多くの抗ウイルス薬の問題は、それらがウイルスに対して薬剤耐性株への変異を招きうることである。サイトカイン阻害薬はウイルス自体に影響を及ぼさないため、恐らくこの薬はその点においては問題にならないだろうと Oldstone 氏は言う。
 米国疾病予防対策センター(CDC)のスポークスマン Jeff Dimond 氏は、サイトカイン・ストームがどのように作用しているかを解明するため Oldstone 氏らは細胞レベルまで奥深い研究を行ったと言う。「これはまさに『中ボンネットの中を調べ、配線をいじくり回す』研究です」
 Dimond によると、CDC の科学者たちもまた免疫系とインフルエンザの致死性との間の関連性を調べているという。
 サイトカイン・ストームについて科学者らが理解できていないことはまだまだ多いと Oldstone 氏は言う。たとえば、なぜインフルエンザウイルスが、多くの人たちでは自宅で2、3日しんどい日々を過ごさなければならないこと以上を起こさないのに対して、一方で生命を脅かすような嵐を引き起こしてしまうのかわかっていない。
 Oldstone の知見がすぐれたインフルエンザ治療薬につながる可能性がある一方で、それらの薬が地方の薬局に届くのは何年も先のことになると思われる。彼の研究チームの次のステップは、まずはフェレットで、さらには霊長類で、そして最後は人間で、今回のマウスの実験の再現をめざすことであると彼は言う。
 その一方で、免疫系がどのように機能しているか、そしてさらに重要なこととして、免疫系がどのように誤った反応を起こしているかについては、かなり多くのことが研究者に解明されてきている。「それは私たちが医学部で教えられたことに比べてさらに複雑なものなのです」と彼女は言う。

大いに期待される研究である。
抗インフルエンザ薬はここ2、3年で品数も
増えてきたが、
記事中にあるような機序による致死的反応を
完全に抑え込むことは不可能である。
これまでサイトカイン・ストームに対しては
ステロイドパルス療法、血漿交換療法、
γグロブリン大量療法などが行われてきたが、
いずれも効果に乏しいのが現状である。
とりあえず
サイトカイン・ストームの特効薬が
一般に使用される時が来るまでは、
インフルエンザの予防接種を
きちんと受けておいた方が良さそうである。

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多発性硬化症患者に希望の光

2012-01-03 00:00:43 | 健康・病気

2012 年明けましておめでとうございます。

本年も細々としょーもない記事を
書き連ねてゆきたいと思います。
どうかよろしくお願い申し上げます。

さて2012年の第1弾は
多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)の
新薬についてのお話です。

12月26日付 New York Times 電子版

New Drugs Raise Hope for Patients With M.S. 多発性硬化症患者の期待が高まる新しい薬
By LAURIE TARKAN

Multiplesclerosis

 3年前、シンガー・ソングライターの Kristie Salerno Kent さんは演奏の仕事から自宅に向かう空港のセキュリティーの列に並んで立っていたとき、両足の感覚がなくなった。「腰から下がおかしく、まるでオートミールのボウルの中を歩こうとしているかのようでした」多発性硬化症(MS)を患っているこの38才のミュージシャンは言う。
 彼女が警備員のところまでなんとかたどり着くと、その警備員は車椅子を取りに行きセキュリティーを通過させようと靴を脱がしベルトをはずした。当惑し、怯えながら、彼女は車椅子に乗ってゲートに連れて行かれた。
 3ヶ月後、新たな症状の再発を経験した。MS を抱えて生きることについて彼女が作成したショート・フィルムについて生のテレビインタビューを行っていたとき、突然話すことができなくなった。「口の中にビー玉が詰められたかのようでした。レポーターに『ごめんなさい』を言おうとし続けたのですが、意味のある言葉が出てきませんでした」と彼女は言う。
 このような発作を予防するために内服していた薬剤は効果を失いつつあったので、彼女の主治医はTysabri(タイサブリ)への変更を勧めた。この薬は、重症度や再発の頻度を軽減するこれまでの薬より強力で新しい『予防維持薬(疾患修飾薬)』の一つである。彼女はさらに Ampyra(アムピラ)の内服も開始したが、この薬は2010年の初めに MS のすべての症状に対する治療薬として承認された初めての薬である。以後彼女は症状の再燃を見ていない。
 MS に対する基礎研究が行われるようになって数十年経つが、この5年間、この疾患の管理法を変え、患者に新たな希望を与えてくれる最先端の新薬の急速な発売がもたらされている。
 「20年前の治療法のなかった疾患が、今や複数の治療の選択肢を持つ疾患となっています」と、National Multiple Sclerosis Society の主席研究員の Timothy Coetzee 博士は言う。「MS が治療可能な疾患となりつつあるという認識が高まってきています」
 MS では、神経線維を絶縁する髄鞘を自身の免疫系が攻撃し脳や脊髄のニューロンを障害する。患者の約85%が、再発-寛解型 MS と呼ばれる形で発症する。脳に病変を生じ、他の神経症状もあるが、歩行機能、視覚機能、あるいは膀胱をコントロールしたりする機能に障害をきたす発作あるいは再発作が特徴的である。
 これらの発作の持続は短期間であり、通常患者は回復する。しかし、患者の半数以上はいずれ MS の進行型に至り、これらの機能の永続的喪失を来たす。
 一度そうなってしまうと治療の多くは無効である。しかし、新しい薬は、多くの患者で不可避と考えられていた進行を遅らせ、おそらく阻止する可能性もあるとみられている。
 「現在のこれらの薬は、この疾患の経過を変えようとしています」と、Coetzee 博士は言う。
 現在医師は8つの疾患修飾薬から選択できる。これらの薬は再発を減らし、それによって疾患の進行を遅らせる。これらの薬剤のうちいくつかはさらに現在永続的障害の主たる原因になっていると考えられている脳のニューロンの死滅を阻止する。
 また、MS に特異的な症状の治療にも進歩が見られている。過去2年間の間に、MS のそれぞれの症状に特異的に3つの薬剤が承認されている。歩行の改善に対して Ampyra、強制泣き・笑いに対して Nuedexta、尿失禁と上肢の痙性に対して Botox である。
 「私たちは無病状態を目指しています。それは MS の患者が薬を内服して MS の症状が見られない状況のことです」Cleveland Clinic の Mellen Center for Multiple Sclerosis Treatment and Research の所長である Richard rudick 博士は言う。
 MS治療薬の第一世代は、注射や点滴で投与される免疫抑制作用のあるインターフェロンがほとんどを占めていた。これは現在でも最も広く用いられており、再発を約3分の1ほど再発を減らすことができる。新しい薬はより進んでいるものであり、単に脳内の炎症を減じるために免疫系を抑えるのではなく、本疾患に関連する特異的な分子を標的としている。
 2010年、MS に対する初の経口薬 Gilenya(ジレニア)が、再発率を55%減らすことが示されたデータによって承認を得た(2010年9月22日)。Gilenya は炎症細胞のリンパ球をリンパ節内に閉じ込めておく作用があり、これによってリンパ球はニューロンを障害する場となっている脳に遊走できなくなる。
 除脈、肝障害、視力障害などいくつかの重大な副作用が生ずる可能性があるため患者はそれに対する観察が必要である。最近 Gilenya を開始後24時間で患者が一人死亡した。食品医薬品局は死亡の原因を調査中である。
 最も効果のある薬 Tysabri は再発率を約70%減少させるが、ありふれたウイルスによって引き起こされる致死的な脳の感染のリスクが稀ながらある。患者はそのウイルスに対する抗体の有無が調べられる。感染のリスクは抗体が証明されない人たちでは(潜在感染の可能性がないため)かなり低いと考えられており、そういった人たちには本薬剤が用いられる。
 これら以外の異なる作用機序を有する少なくとも4つの薬は第3相臨床試験に入っており、2012年中には承認される見込みであると専門家は言う。その中には神経が障害されるのを防ぐ効果を有するものがある。
 「患者に車椅子が必要となってしまう歩行障害の根本的原因であると考えられる神経の変性に対して、これを阻止したり停止したりする薬剤の開発に多くの関心が寄せられています」と Rudick 博士は言う。
 新しい神経保護薬の一つである BG-12 は昨年10月にアムステルダムで行われた MS の年次国際会議で広く注目を集めた。同薬を内服している患者において53%再発が減少し、2年間で永続的障害への進行を30%以上減少させたことが科学者らによって報告された。しかも Gilenya などの同程度に効果がある薬剤に比べてリスクが低いようである。
 「これは完全にインターフェロンに取って代わる薬剤となるかもしれません」University of Colorado の神経学臨床研究部の部長 Timothy L. Vollmer 博士は言う。
 患者に対するリスクが低いことからまずはインターフェロンを始める医師が多いが、新しい薬剤で早期に積極的に患者を治療することで脳内のニューロンを保護し、本疾患の進行を阻止できる可能性があるという認識が高まりつつある。
 しかし MS の治療は依然として困難である。多くの治療法には重大な副作用やその他のリスクが伴い、あるいはそれら治療に対して単純に反応しない患者が存在する。行速度は様々であり、症状も患者ごとに異なっている。特定の薬剤に耐えることができない患者もいる。
 「最大のフラストレーションはその大きな不確定性にあります」と、Bronx にある Montefiore Medical Center の神経学 Jerome J. Graber 准教授は言う。「いまだに、進行する患者は誰なのか、また、ある患者に対する最善の治療法は何なのかを予測することができないのです」
 しかし、これまでより有望な予後が期待できるようになった患者もいる。Salemo Kent さんが Tysabri と Ampyra を投与され始めてから、歩行は改善し、夫や息子とハイキングに行けるようになり、言語の症状も消失、そしてなにより、ステージで歌う際の自信がはるかに高まった。
 「今、従来と比べて多くの治療の選択肢があり、MS だからといってもはや生活の質をあきらめる必要はないと感じています」と彼女は言う。「私たちは時が経つとともに症状が悪化するとずっと思っていましたが、それはもはや受け入れられないことだと思っています」

多発性硬化症は中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患で、
時間的・空間的な病変の多発性が特徴である。
すなわち、神経症状の再発・寛解を繰り返し、
中枢神経系における複数の病変によって
多彩な神経症状が認められる。
高緯度地域に住む白人に有病率が高く、
北欧では人口10万人あたり50~100人である。
日本では人口10万人あたり8~9人と推定され
白人に比べかなり低い。
平均発病年齢は30才前後である。
女性に多く、男性の2~3倍の頻度である。
本疾患は自己免疫機序を介して脱髄が起こると考えられているが
その原因はいまだ明らかにされていない。
人種差があることから遺伝子の関与が考えられているが、
原因遺伝子は不明であり、環境や感染などの要因も
複雑に関わっているとされている。
視神経と脊髄の病変を主体とするタイプは
従来、視神経脊髄型 MS と呼ばれていたが、
MS とは異なる病態の視神経脊髄炎(NMO)である
可能性が示唆されている。
なお NMO 患者では神経組織の水透過に関与する
細胞膜内たんぱくである Aquaporin-4(AQP4)に特異的な抗体、
抗 AQP4 抗体が発見されている。
両疾患の関連性についてはいまだ議論の多いところである。
MS の神経症状は様々な形で発現するが、
視力障害を伴う例が比較的多い。
神経症状で発病しそのまま進行性に経過する例が
数%に認められる(一次性進行型)が、
再発・寛解を繰り返す例(再発・寛解型)の方が多い。
しかし後者の中でも再発ごとに増悪し
進行の経過に至る例も多い(二次性進行型)。
脊髄障害の回復期には四肢の有痛性強直性痙攣を見ることが
ある。
また神経因性膀胱もしばしば認められ、排尿障害や失禁が
見られる。
診断は MRI が最も有用である。
脳室近傍に好発する脱髄斑は T2 強調画像や FLAIR 画像で
円形ないし楕円形の病変として捉えられるが、
特に急性期病変は造影剤により増強される。
血液検査では特異的な変化はないが、
髄液中の免疫グロブリン IgG の上昇が認められる。
また髄液中のミエリン塩基性たんぱくが増加する。
MS の発症急性期・再発時の治療としては現在も
ステロイドが用いられているが
長期間の投与は有効性が認められていない。
症状の高度な例では血液浄化療法も考慮される。
再発予防薬としては、本邦ではまだインターフェロンβ と
昨年(2011年)9月に承認されたジレニア(記事中にも登場)
以外は認められていない。
進行傾向の強い症例に対してはシクロフォスファミドや
アザチオプリンなどの免疫抑制薬が用いられるが副作用も多い。
欧米では難治性 MS に対してはミトキサントロンやタイサブリが
一般に用いられている。
なお、症状の再発・進行には
ストレス、過労や感染の影響も考えられており、
生活面でのケアも重要である。
いずれにしても MS に対する本邦における治療は
欧米に比べ大きく後れをとっているのは間違いない。
日本国内に12,000人いるとされている MS 患者だが、
その人たちの QOL 改善に向けた治療の早急な確立が
望まれる。

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