日本でも報道されていた
『火星に水の可能性』のニュース。
日本のメディアからは
詳細を知ることができなかったので
Washington Post 紙からの記事を紹介する。
Water on Mars? Scientists find strongest evidence yet in reappearing streaks 火星に水?科学者らは出没する筋(すじ)に最強の証拠を発見
火星表面に認められる暗色で指状の筋が季節の寒暖とともに出たり消えたりする。それは恐らく塩水の存在する証拠と考えられている。
By Marc Kaufman,
数十年間、宇宙科学者らは、生命体に必須と一般に考えられている液体、すなわち水が存在する形跡を火星で探してきた。
火星の南半球のあちこちに、これまで発見されていなかった暗色の筋が季節ごとに出たり消えたりするいくつもの傾斜地が発見されたことを木曜日に科学者たちは発表した。そこではこの惑星の温度が上がるとき、この筋が現れ低い方に広がってゆく。気温が下がるとこの筋は消失する。季節性に認められる火星上の暗色の小さな筋は、火星の夏の間、傾斜地を流れ落ちる解けた塩水かもしれないと科学者らは言う。Newton クレーターからの5枚の連続した画像と Horowitz クレーターからの1枚の画像には、黒い線が斜面の頂点付近に現れ、それから多数の筋状の影に伸びてゆく状況が示され、それらは寒い気候が戻ってきて消滅するまで数ヶ月間持続する。これらの画像は火星を撮影するために周回している NASA の Mars Reconnaissance Orbiter(マース・リコネサンス・オービター)に搭載された HiRISE カメラによって5年以上にわたって撮影されたものだ。
それらについて行われてきた最適な説明は、それらの暗色の指状の筋は火星表面上、あるいはそのすぐ下を流れる一種の塩水であるというものだ。特定の地域、すなわち Newton クレーターでは、斜面を流れ盆地に流れ込んでいる流水と考えられる箇所は1,000を数える。
もしこの事実が確かめられたなら、火星の理解を根本的に変え、この惑星がかつて、今よりはるかに湿潤で、温暖だったという広く信じられている学説を強く支持することになる発見である。そして、水の発見によって地球以外の生命体の発見の可能性にも格好のターゲットが与えられることになると科学者らは言う。
「私たちには、今見ているものを水の存在なしに説明するよい手立てはないのです」と、University of Arizona の Lunar and Planetary Laboratory の Alfred Mc-Ewan 氏は言う。McEwan 氏はこの発見について Science 誌に発表した論文の筆頭著者である。
「そしてもしそれが塩水であることが確認されれば、火星上に現存する生命体を見つけようとするために向かうべき方向について最善策を手にしたことになります。
問題の暗色の筋は最初、Mars Reconnaissance Orbiter(MRO)から送り返された画像の中で学生によって発見された。ピクセルで構成された画像は2007年まで遡って撮られたものだが、宇宙ミッションから入ってくるデータが大変多いことからそれらは調査されずにいた。McEwan 氏は、地球物理学3年生の Lujendra Ojha さんに筋の位置について入念に調べるよう指導したところ Ojha さんはこの筋が季節によって劇的に変化することを発見したのである。
「これらの画像それ自体は特別際だったものではありません」と、McEwan 氏は言う。「しかしそれらをまとめ合わせ、時間ごとに起こっていることを見ると、何か重要なことが起こっていることを明確に確認できるのです」
そうこうするうちに、研究者チームはこれらの変化が温度の上昇や減少と関連して生じていることを発見した。彼らはその他にも類似した反復箇所を見つけるために MRO の画像を調べ、これまでのところ確認できた7ヶ所と、さらに可能性のある32ヶ所を見つけ出した。それらすべての場所で流れは岩などの障害物を乗り越えるのではなく迂回しているように見え、しばしばそれらは平地にたどりつくまでに消滅していた。一般にそれらは2フィート(61cm)から15フィート(4.6m)の幅で、火星の夏に生じている。ちなみに火星の夏の温度は華氏-10℃から80℃である(摂氏で-23℃~27℃)。
木曜日の NASA の記者会見で、McEwan 氏や MRO、火星科学および宇宙生物学の関係者らは今回の発見を大きな転機となる可能性があるとして称賛した。Arizona State University の地球物理学者 Philip R Christensen 氏は、火星表面に水が存在する可能性の最高の証拠になるものであると述べた。Indiana University の生物地球科学者・宇宙生物学者 Lisa Pratt 氏もまた、現在火星の生命体があるとすれば最も有望な生息環境を示すものであるとし、その状況は生命体の存在するシベリアの永久凍土層に類似している可能性があると考えている。しかし、これらの発言者はすべて、今回の発見は現時点では状況的なものであって証明されたものではないとしている。
火星上に水が存在する可能性のある形跡はこれまでに報告されているが、後になってその信用性は失われている。例えば2006年、いくつかのクレーターの峡谷に見られる重大な変化と見られるものが科学者らによって報告され、起こっていることの説明として、おそらく『鉄砲水』の形で地下から噴き出てくる水ではないかと考えられた。
その後の研究でその説明に重大な疑問が投げかけられたのだが、その理由は、特に、温度があまりにも低く水が液体で存在できない火星の冬の間にそれが起こっていたと考えられたためである。現在の見解は、凍った二酸化炭素があふれているものだったのではないかということになっている。
それにもかかわらず、火星上には様々な形で水が存在している、あるいは存在していたという考えが広く受け入れられている。2008年、NASA の Phoenix 着陸機は火星表面の直下に凍った水を発見しているし、着陸後に同機の脚上に液体の水滴が撮影されていたと主張するものもいる。その他にも、火星上の多くの乾いた峡谷や三角州は、かつて水が火星表面を流れていたことを多くの宇宙科学者に確信させてきた。
件の筋の性状がいまだ確認されていないことから、この研究者らはそれらを水流と呼ばず、むしろ『繰り返し発生する傾斜線』などと呼んでいる。彼らはそれらの筋が落石であるとか、強風やその他の火星大気の力による結果であるなど他の説明も挙げているが、なんらかの形で水が関与している可能性が最も高いと結論づけた。
この軌道船にあるスペクトロメータが収集した分子データには水の存在が示されなかったという事実を反映した警告も存在する。McEwan 氏は、この流れが非常に小さいのでスペクトロメータが捕捉できなかった可能性があると指摘し、将来の機器ならそれが水であるかどうかを決定できることを確信していると述べた。
もしこの筋が水を含有しているとしたら、それらは塩分で強く飽和しているに違いない。塩分は水が凍る温度を下げるからである。Phoenix のミッションでは火星上に強い過塩素酸塩複合体が発見されている。この塩は特別に水の凝固点を下げる強い効果を有している。火星の氷を時々融解させるのに必要な塩分濃度は地球の海洋における塩分とほぼ同じであると、この論文は報告している。
火星における次のミッションが Curiosity と呼ばれる探査車を配し一年後に着陸が予定されている Gale クレーターへの到達であることを先月 NASA が発表した。McEwan 氏によると、彼のチームはその地点には水流の可能性がある場所を発見していないと言う。
火星にかつて水があったというのは
これまでも容認されていた事実のようだが、
液体の形で水が火星上に
現存している可能性があるとすれば
それは画期的な発見ということらしい。
しかしたとえ水が存在したとしても
大気圧は地球の1%以下、
二酸化炭素が大気の95%、
酸素は0.13%。
平均気温も摂氏マイナス43℃という世界。
とてもまともな生物は存在していそうにない。
それでも水があるということは
将来的に環境を変えることが
可能となるのだろうか?
移住先(旅行先)としては
強くご遠慮申し上げたい場所のように
思うのである。