MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

“老いる”を知る

2010-09-17 00:03:00 | 科学

9月20日は敬老の日、
日頃から高齢者への親切を心がけているMrKには
この日に限って何か特別なことをする必要性は
感じられないのだが…(こらこらっ!)。
人は誰でも歳をとり、老いてゆく。
老いることは人間の宿命であり、
それは単に細胞が老朽化するから
仕方のないことと思ってきた。
今年、100歳以上で元気なはずが
実はとっくの昔に亡くなっていたという事例が次々に発覚し、
やはり人間の寿命は100歳が一応の限度なのかと
再認識させられた。
一方、原因不明の難病とされてきた
早老症に対する研究がここ数年で急速に進み、
徐々に正常老化のメカニズムも解明されつつあるという。

9月10日付 CNN.com より

Clues found in mysterious childhood aging disease 謎めいた小児早老症から見つかったヒント
By Madison Park, CNN

Progeria

Megan Nighbor ちゃん(10才)は、抗がん薬がこの急速に進行する早老性疾患の治療薬となり得るかどうかを調べるための臨床試験に参加している。

 発見の最初の手がかりは Megan ちゃんの髪の毛だった。
 Megan Nighbor ちゃんは濃い暗褐色の頭髪に覆われた状態で生まれた。生まれた時ほとんど髪の毛のなかった他の子供たちに比べてこの一番下の子では髪の毛がなぜきれいに生え揃ってるのか母親の Sandy Nighbor さんは不思議に思ったのだ。
 生後18ヶ月にはそれらの褐色の髪の毛は薄くなり始めていた。Nighbor さんがポニーテイルにくくろうとした時、束ねる髪の毛が少ないことに気づいた。
 なぜ Megan は毛が薄くなり始めているのだろう?なぜ Megan はこんなに痩ていて、他の子供たちと違って見えるのだろうか?
 Megan ちゃんの老化は速度を増していった。
 娘がプロジェリア(progeria:早老症)として知られる稀な遺伝子疾患であることを Nighbor は知ることになる。この病気によって、子供は皺だらけになり、静脈が浮き出し、生後一年以内に髪の毛が失われるのである。
 年老いた幼児の姿は人を驚かせ好奇心をくすぐってきた。F. Scott Fitzgerald の短編小説 “The Curious Case of Benjamin Button” のヒントにもなっていた可能性がある。
 世界中でもプロジェリアは稀である(約65例)が、この疾患は全米国民の死因の3分の1以上を占める心筋梗塞や脳卒中など一般的な老化のリスクについての手がかりを与えてくれるかもしれない。
 「地球上で最も稀な疾患の一つを研究することで、まさに今、我々自身についてもっと多くのことを発見しようとしているのです」と、The Progeria Research Foundation(早老症研究財団)の医療部長 Leslie Gordon 医師は言う。「実に衝撃的なことであると考えています」
 「老化も心疾患も様々な要因によるものであるため、それぞれの要因を理解するためには一つ一つを分離して考える必要があります」と、心疾患や老化と関係している食事や運動、その他諸々の要因について彼女は語る。「この疾患の子供たちはそれを解く鍵なのです」
 プロジェリアの子供たちは多くの成人同様、心疾患や脳卒中や心筋梗塞で死亡する。彼らの平均寿命は13年である。
 今週、journal of Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology  に掲載された研究によると、我々が歳をとるにつれ全身に増加してゆく progerin(プロジェリン)と呼ばれるたんぱくが発見されたという。
 科学者たちは、プロジェリアで死亡した2人の子供と、この疾患でない生後 1ヶ月から97才までの29例の遺体で progerin の量を比較した。
 その結果 Progerin はプロジェリアの子供の動脈内ではるかに多い量が検出された。
 プロジェリアでない検体においては、1才歳をとる毎に体内でのprogerin 量が3.3%増加すると考えられた。
 「この分子が存在すること、またこの分子が加齢とともに増加することを我々は確実に掴んでいます」と、この研究の筆頭研究者である Gordon 氏は言う。「このたんぱくを調べ、これが心疾患とどのように関係しているかを探る必要があります」
  Buck Institute for Age Research(Buck 加齢研究所)の所長で最高責任者である Brian Kennedy 氏は、プロジェリアや Werner syndrome(ウェルナー症候群:10代~成人初期に発症する早期老化性疾患)などの疾患を探究することで正常老化のメカニズムを知る貴重な機会が得られると言う。
 「この種の研究に対する動機付けはこれらプロジェリアの子供たちによってもたらされています。というのも、彼らの多くは、早まる老化のすべての表現型を持っているわけではないからです。彼らは外見上全く老人に見えなくても、実に早いスピードで心血管疾患が進んでいるのです」と彼らは言う。「これらの子供たちは、他の誰にでも起こっていることの進行速度の大きな異形とでも言えるような何かを持っているかどうかということが興味深い問題となっています」
 プロジェリア研究はこの十年間で急速に進歩しているが、これは難病ではめずらしいことである。
 1998年、ある医師夫婦が自分たちの息子 Sam がこの病気であることを知り、Progeria Research Foundation が創設された。Leslie Gordon 医師こそ、この Sam の母親である。
 「実際、世の中に何もないことを知りました」と、彼女は思い起こす。「これは極めて稀な疾患として特別に起こることであるとされており、この疾患に対する National Institutes of Health(NIH:国立衛生研究所)からの金銭的援助はありません。プロジェリアの子供に対する治療法は医師たちにはわかっていませんでした。我々はプロジェリアの原因と治療法を見つけるために基金を設立したのです」
 現在 NIH の部長である Francis Collins 医師が主導した National Human Genome Research Institute(国立ヒトゲノム研究所)の研究チームは2003年にプロジェリアに関与する遺伝子変異を発見した。
 この遺伝子 LMNA は Lamin A と呼ばれるたんぱくの欠損型を産生するが、このたんぱくは細胞の核の構造保持に関与していると考えられている。Nature 誌に発表された彼らの発見によって、このたんぱくの欠損型によって核の構造が不安定となり早期の老化が招来されることが示唆された。
 その後まもなく、プロジェリアの診断学的検査法が開発された。
 ウィスコンシン州 Dalton のNighbor さんは2003年にこのプロジェリアの検査で娘の確定診断を得た。
 それから7年たった現在、Megan ちゃんは同級生よりもかなり痩せており、体重は31ポンド(約14kg)しかない。この疾患は学習能力や精神機能に影響を及ぼさない。プロジェリアの子供はアルツハイマー病や認知症になることはないのである。
 プロジェリアの子供が歳をとるにつれ、関節のこわばり、股関節脱臼、動脈硬化などが起こる。幸いMeagan ちゃんにはそのような症状は見られていない。
 「彼女にできないことはありません」と、Nighbor さんは言う。「彼女がじっとしていることはありません。いつも走り回っているし、自転車を乗り回しています。彼女は病気ではありません。はたからこの早老疾患であるということを見分けることはむずかしいのです。病気であれば咳をすると考えるでしょう、そういうものとは違うのです」
 身長が4フィート(約122cm)に満たないので、学校では彼女が物を取ろうとしたり机を調節したりするのを助けてくれる生徒がいる。
 多くの小さな子供たちと同じように、Megan ちゃんは食べ物の好き嫌いが激しいが、ピザやスパゲティやりんごが大好きだ。しかし、10才のMegan ちゃんが違っているのは、心疾患を予防するためにスタチンとアスピリンを内服していることだ。
 「彼女にとってのプロジェリアは『髪の毛がないこと、痩せていること、ちょっと背が低いこと』を意味するにすぎないのです」と、Nighbor さんは言う。「言ってみれば彼女にわかっていることのすべてです」
 治療法がほどなく開発され、Meagan ちゃんがプロジェリアの子供たちの運命を知らされる必要がなくなることを Nighbor さんは望んでいる。彼女の願いはマサチューセッツ州の Boston Children’s Hospital で進められている臨床試験にかかっている。
 Megan の他27人の子供たちは、famesyltransferase inhibitors(FTIs:ファメシルトランスフェラーゼ阻害薬)と呼ばれる抗がん薬がプロジェリアの治療に有効かどうかを明らかにするため、その薬を毎日投与されている。データはまだ科学者によって解析中であり、その結果はまだ発表されていない。

プロジェリアは
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群
とも呼ばれるきわめてまれな疾患で、
400万人に一人の確率で発症すると言われる。
一方、早老症の一つ、ウェルナー症候群は
成人型プロジェリアとも称され、
プロジェリアより発症は遅く、
平均寿命は40~50才である。
これもまた稀な疾患で、
世界で約1,200例が報告されているが
その約8割が日本人であると言われ
日本人に多いのが特徴である。
患者や家族にとって残酷なこれらの疾病の治療法が
一刻も早く確立されることが望まれる。
またこれら異常老化性疾患の治療法の発見が
将来、老化の特効薬につながる可能性がある
(本当の不老長寿の薬)。
古来から追い求められてきた万人の願い、不老不死が、
まんざら永遠の見果てぬ夢とは言えなくなるのかもしれない。

コメント
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