昨年日本でも公開された映画『いつか眠りにつく前に』に出ていた
イギリス出身のアメリカの女優、ナターシャ・リチャードソンさんが
3月18日、45才で死去、と伝えられた。
スキー場での頭部外傷が死因だったようだ。
3月19日付 バラエティ・ジャパン(ウェブ魚拓)
スポーツやリクレーション中の頭部外傷は意外と多い。
それに関わる記事を紹介する。
Head Injuries: Looking for Signs and Acting Quickly(頭部外傷:兆候を見つけること、そして迅速に対処すること)
写真は3月18日に死去した女優のナターシャ・リチャードソン
18才の走者はホームを目指して三塁を回ったが、その勢いで彼のヘルメットが吹っ飛んだ。内野手はキャッチャーへ送球したが、ボールは走者の方へ向かい、ヘルメットのない彼の頭を直撃した。彼はホームインしダッグアウトへと歩いて帰ったが、5分後、激しい頭痛が起こり始めた。
硬膜外血腫だった。
先週、45才の女優 Natasha Richardson が Quebec にある初心者用のスキー斜面で軽い転倒の後に不運にも襲われた脳の出血がこれと同じものだった。そういった状況はめったに起こることではない。しかし、その若い野球選手はそのけがを乗り切ることができた。というのも、その球場の近くに病院があり、彼はただちにそこに運び込まれ、Robert Cantu 医師によって迅速に手術が行われたからである。
「当院で我々が経験するこの種の血腫は、ヘルメットを着用するスポーツではそれが脱げない限りまず発生することはありません」と、ボストン、Brigham and Women's Hospital の Neurological Sports Injury Center の所長である Cantu 医師は言う。
Ms. Richardsoln は転倒したときヘルメットを着用しておらず、先週、ニューヨークの検視官が“頭部の鈍的外傷”と表現した状態だった。スキー場の関係者によれば、最初、彼女の意識ははっきりしており治療を断ったという。しかし、事故後4時間も経たないうちに彼女の状態は急速に悪化し、最初はモントリオールから数時間ほどの地方病院に急送されていた。結局、3月18日、彼女はマンハッタンにある Lenox Hill Hospital で死去した。
Ms. Richardson の突然の死をめぐる世間のショックがおさまると、親だけでなく医学界、リクレーション・スポーツ、ユースや大学のスポーツの指導者たちは、スポーツ固有の危険性について、より綿密に検討を加え、事故の教訓を模索しようとしている。
外傷性脳損傷―脳の正常機能に障害をおよぼすほどの脳への衝撃―は、米国疾病対策予防センター(CDC)の2007年の研究によれば、米国におけるレクレーション・スポーツおよび組織的なスポーツで年間およそ 207,830 人に認められている。CDCによれば死者の正確な数は不明ということだが、死者は全受傷者の1%以下であろうと Cantu 医師は言う。小児は成人よりスポーツ中に頭部外傷を受けやすいと同センターは指摘する。
「ヘルメットが脳振盪を防ぐことはできませんが、頭蓋骨骨折に関しては実質的に100%の予防効果があります」と、Cantu 医師は言う。Ms. Richardson については、「もしヘルメットをかぶっていたなら助かっていたでしょう」と彼は言う。
Ms.Rechardson が受けたタイプの致死的損傷は、たいていの場合、頭蓋骨の他の部位と違って紙のように厚さの薄い側頭骨の骨折によって生ずるが、この骨折は、動脈を損傷し、急速な出血の可能性をもたらす、と Cantu 医師は言う。検視官が骨折を確認できなかったとはいえ、結果はその種の出血に一致している。
National Ski Areas Assosication(全米スキー・エリア協会)によれば、昨シーズン、スキーヤーやスノー・ボーダーの43%はヘルメットを着用しており、2002年の25%より増加しているという。また、9才以下の小児の70%はヘルメットを着用していた。ヘルメット着用のほかに、Richardson の悲劇からはそれに劣らぬ重要な教訓が示された。「頭部外傷後に、もし症状の悪化を見た場合には決して放置しておいてはいけません」と Cantu 医師は言う。
CDCは高校のコーチ向けに、めまい、混乱状態、あるいは反応低下など、脳損傷の症状を発見する“注意喚起”となるプログラム一式を準備している。で、スローガンは、「シーズンを棒に振るより一つの試合を欠場するほうがまし」である。
ニューヨーク州 Roslyn の Michael Cott は2003年夏のキャンプ中、一週間に2度打撲した後、クラブ・サッカーを6ヶ月間欠場することになった。相手方の選手がヘッドでボールをとろうとして、代わりに Michael の前頭部を強打し、彼を気絶させたのである。
彼の父親の Noel Cott 氏は、彼に Full 90 製のパッド入りヘッド・ギアをつけるように命じ、競技に戻った。Michael はからかわれたが、彼も父親もそれをつける理由に納得していた。
フットボールとバスケットボールが脳損傷に関わる救急室受診者数でリードしており、その他、スキー、自転車、オール・テライン・ビークル(ATV)、遊び場での活動などのリクレーション・スポーツでも見られる、とCDCは報告している。
大学スポーツでは、女性のアイス・ホッケーを筆頭に、男性より女性の脳震盪の頻度が高いことが最近の研究で示されている、と Princeton University の athletic medicine 部長の Margot Putukian 医師は言う。いずれにしても、脳損傷を見極めること、しかも迅速に、が重要なのである。
軽微な外傷を受けて、後でおかしくなるようなことは考えにくいかもしれない。また、常に体と体の接触があるとは限らないし、しばしば打撲がきわめてわずかなこともある。
Darcy Strain 氏は、1月にシカゴで行われたアイス・ホッケーのトーナメントで、彼の息子 Ethan 11才が、はるかに体格の良い12才の子に後ろから激しくチェックされたとき、その兆候に気づいてやっていたらと悔やんでいる。
その試合の後、Ethan はめまいがして頭痛があると父親に言ったが、翌日には気分も良くプレイできていた。ヒューストンに住んでいるが、マニトバの凍った池の上でヘルメットなしでプレイしながら大きくなった Strain 氏は Ethan は問題ないと考えていた。
しかし数日後、神経学的な検査で Ethan が脳損傷を起こしていたことがわかった。彼は衰弱してしまうほどの頭痛と短期記憶の障害に苦しみ、8週間学校に行くことができなかった。
再び競技を許可されることになり、Strain 氏は Ethan に最高級のヘルメットを買い与えた。そして、彼は、友人たちにも自分たちの子供の外傷を監視するよう求めた。
「女優がスキーの斜面で転倒し、頭部にちょっとした打撲を負っただけで死亡したことは、自分たちに身近な問題として考え直させられます」と、電話インタビューで声を震わせながら Strain 氏は言った。
「ちょっとした打撲が彼女の命を奪ったこと、事態悪化の可能性があったすべてのことが実際に悪い方向へ向ってしまったことにはそれなりの理由があります。実際に自分に起こってしまうまで、そんな可能性があるということを、皆さんは気付かないのです」
受傷の時に直接脳に傷がつくことはなかったものの、
脳の表面や脳の膜の血管が損傷していて
後になって血腫で脳が圧迫されるようになると、
受傷直後は意識が普通でも、
その後急速に意識状態が悪化するということが起こり得る。
この意識のしっかりしている時間帯のことを
lucid interval (意識清明期)という。
この時期に診察して問題なしと判断で患者を家に帰してしまうと、
翌朝には昏睡状態で発見、ということもあり得る。
このようなケースでは訴訟問題に発展することもあるだろう。
頭蓋骨に骨折を認めたり、
脳のCTでわずかでも頭蓋内出血を認めた場合には
その後急変する可能性を考えておかなくてはならない。
交通事故のような高エネルギー外傷では、
こうした頭蓋内出血の危険性を常に考慮しておく必要がある。
一方、スポーツ中の外傷はどうであろうか?
自転車、スキー、スノーボード、アイスホッケーなど、
相当スピードが出るスポーツは
やはり危険度が高いと考えるべきだろう。
サッカーやラグビーなど人間の走力による激突のエネルギーも
決してあなどることはできない。
高校のラグビーを除いてヘッドギアをつけてプレイする選手は
ほとんどいないようだが、やはりちゃんと着用すべきであると思う。
記事中にあったが、
米国のスキー場でのヘルメット着用率はずいぶん高いようだ。
一方、日本のスキー場ではヘルメットを着用して滑ってる人など
ほとんど見ないのではないか?
特にスノーボードの危険性は相当に高いと予測される。
日本においても迅速な対応が望まれる。
ところで、頭部を痛めつけることを生業?とするスポーツがある。
ボクシングだ。
最近また死者が出てしまった。
3月21日にボクシングの試合でKO負けした辻昌建選手が
急性硬膜下血腫で開頭手術を受けたものの
3月24日に死去したという。
3月25日付日刊スポーツ、ウェブ魚拓
この記事によればボクシングの試合による死亡者は
1952年以来、辻選手で35人目だそうである。
頭蓋内損傷を起こしながら死亡までには至っていないケースも
相当数あると推察すると、脳損傷が起こるリスクは半端でない。
片方が立っていられなくなるまで頭部を殴り続ける競技は
確かに見ていてスリリングでエキサイティングである。
しかし、あまりにも危険が高す大きすぎる。
この競技が今も平然と行われ続けていることは納得できない。
早急に禁止すべき競技だと MrK は思っているのだが、
みなさんはいかがお考えだろうか?
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